カスタマーサクセスのKPI設定|LTVを最大化させる3つの指標

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カスタマーサクセスの最終ゴールはLTV(ライフタイムバリュー)の最大化

LTV(ライフタイムバリュー)とは、顧客が企業に与える利益を総計した価値を表す指標です。サブスクリプション型のビジネスが普及したり、価格競争が激化したりする中で、新規顧客開拓がさらに難しくなっている昨今、LTVの重要性はいっそう高まっています。

購入前から購入後まで一貫したカスタマーエクスペリエンス(CX)向上策を施すことで、LTVを最大化するのがカスタマーサクセスの役割です。LTV上昇を目的に、たとえば購買単価や購買の頻度を上げたり、顧客継続率を改善し離脱率(解約率)を下げたりすることが目指されます。

具体的施策の実施を通して、基本的には「自社の商品・サービスを選んでよかった」と顧客に感じてもらうことが重要です。顧客と良好な関係を維持し続け、顧客ロイヤルティを高めていくことを目指し、現状をLTVで評価します。

カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスの役割は、自社の商品やサービスの利用を通して、顧客が事業の成長などの成功体験を得られるように働きかけることです。業務の具体的な内容は、「サービスの導入支援(オンボーディング)や活動支援を行い、契約の継続やアップセル/クロスセルを促すこと」などが挙げられます。

カスタマーサポートとカスタマーサクセスのKPIの違い

カスタマーサポートとカスタマーサクセスには明確な役割の違いがあり、評価基準として採用すべきKPIも異なります。

まず、カスタマーサポートは、顧客から問い合わせや要望などを受けてから対応に当たる、受動的な取り組みです。したがってKPIとしては、解決件数/人(日)、対応時間/件、対応の満足度指数など、課題が発生した後の対応を評価する内容を設定することが基本です。

一方カスタマーサクセスは、企業側から自発的に顧客に対し課題の提起や成功支援を行うものです。そのためKPIには、サービス継続率・解約率、アップセル/クロスセル率など、企業の利益を測る内容が多く含まれます。

カスタマーサクセスの最重要KPI

カスタマーサクセスで使われるKPIの中で、LTVの最大化に大きく影響する指標は以下3つです。

  1. 解約率(チャーンレート)
  2. オンボーディング完了率
  3. アップセル/クロスセル率

1. 解約率(チャーンレート)

解約率が高ければ、顧客が自社のサービスに満足していないことになります。特に、継続利用で利益を積み重ねる「サブスク型タイプのビジネス」では、解約率が高ければ事業の存続自体が危ぶまれることになります。

逆に、解約率を低く抑え、大多数の顧客に利用を継続してもらうことができれば、LTVの最大化も目指せることになります。このように、「解約率を抑えること」はカスタマーサクセス戦略における最重要課題の1つです。

解約率を測る主な指標には「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」の2種類があります。

カスタマーチャーンレートは「顧客の継続率」を基準にした指標です。一定期間内に獲得した新規顧客のうち、その後「契約を解約した顧客の割合」を示す値です。

レベニューチャーンレートは、「収益金額」をベースにした指標です。「解約や、契約プランのダウングレードなどによって発生した経済的損失」について、金額や割合を示す値です。

商品やサービスが1種類であったり、価格が一律であったりする場合は、カスタマーチャーンレートで十分です。しかし「契約プランのダウングレードなどによる損失」も考慮して算出したいなら、レベニューチャーンレートを併用するのがおすすめです。

レベニューチャーンレートにはさらに、「損失額だけに焦点を当てる」グロスレベニューチャーンレートと、「アップグレードや、アップセル/クロスセル成約などによる増収額も考慮する」ネットレベニューチャーンレートがあります。

2. オンボーディング完了率

オンボーディング完了とは、顧客が製品・サービスの使い方を理解し、活用が軌道に乗って、最大限のメリットを得られるようになった状態を指す言葉です。

長期間に渡りオンボーディングが完了していない顧客は、該当サービスの解約率が高くなります。したがってカスタマーサクセスでは、顧客に商品の導入サポートを提供したり、成功事例の紹介したりしながら積極的に働きかけ、なるべく早くオンボーディングを完了してもらうことを目指します。もし自社商品・サービスに「無料トライアル期間」などを設けているなら、その期間中にオンボーディングまで完了させるのが理想です。

3. アップセル/クロスセル率

アップセルとは「よりグレードが高い商品や高単価のサービスを販売すること」、クロスセルとは「目的の商品と関連した商品やサービスを販売すること」で、どちらもLTVを上げる重要な要素です。

アップセルやクロスセルを伸ばすための基本的方針は、顧客自身に上位サービスや関連サービスの価値・必要性を認識してもらい、自発的な購入を促すことです。具体的には、「既存サービスの成功体験を通して、さらに上位のサービスに対しての期待感を抱いてもらうこと」が重要です。

こうした成功体験が顧客側に蓄積されていない状態で、アップセル/クロスセルを強く提案してしまうと心証を損ね、逆に顧客の離脱を招くことにもなります。「信頼関係を構築し、顧客ロイヤルティを高めながら、アップセル/クロスセルを実行可能な状態を整えること」も、カスタマーサクセスの重要な役割です。

その他よく使用されるカスタマーサクセスのKPI・KGI

上記3つ以外にも、カスタマーサクセスでKPIやKGIにしばしば利用される指標があります。これらは、主要なKPIに連動しているもの、カスタマーサクセス以外の要因を示すものなどです。

4. LTV(ライフタイムバリュー)

LTVは先述のように、「1人の顧客からトータルで得られる利益の総計」を表す指標です。カスタマーサクセスの最終的な目標は「LTV向上」です。そのため、LTVをKGIとして使うこともあります。

5. 売上継続率

売上継続率(Net Retention Rate、NRR)は、「前年比や前月比から見てどれだけ売上を維持・拡大できているか」を確認する指標です。もしこの売上継続率が下がっていることが確認されたなら、「サービスの訴求力や有効性に陰りが出ている」という恐れが懸念されます。

6. NPS(顧客推奨度)

NPS(Net Promoter Score、顧客推奨度)は、顧客ロイヤルティを数値化する指標です。次のように導出します。

まず自社の商品について、「この商品を知人に勧めたいか」と顧客にアンケートを採ります。0〜10点の11段階で採点してもらい、0〜6点の回答者を「批判者」、7〜8点を「中立者」、そして9〜10点を「推奨者」に分類して算出します。そして、「推奨者の割合 - 批判者の割合」をNPSとして扱います。このNPS値が低いほど、顧客ロイヤルティに課題があることになります。

7. アクティブユーザー率

特定のサービスを契約中の顧客の中で、実際に利用している顧客の割合を示す指標です。特にサブスクリプション型のインターネットサービスでは頻繁に使われます。

契約を続けていても実際には利用していないユーザーは、解約につながりやすい状態と判断できます。逆に、アクティブユーザーが多ければ、サービスの利用に価値を感じている顧客が多いことになり、売上継続率の維持など利益向上が期待できます。

8. セッション期間

セッション機関とは、「ユーザーが該当サービスを利用し続けた期間」のことです。LTVを向上させるなら、当然、「顧客をできるだけ長期間該当サービスにつなぎとめておくこと」が重要です。上記のアクティブユーザー率と同じく、解約率や売上継続率に直結する数値です。

カスタマーサクセスのKPIを設定する際の注意点

1. 決定したKPIは部門間で合意形成を取る

KPIによっては「カスタマーサクセス部門だけでは達成できないもの」もあります。マーケティング部門や営業部門など、ほかの関連部門とKPIを共有し、達成へ向けて協力し合える体制をつくります。

2. PDCAサイクルを想定したKPIを設定する

PDCAサイクルを意識した設定も重要です。実現が難しい数値をKPIに設定してしまうと、成果が測定・検証できず、PDCAサイクルが成立しないこともあります。PDCAを効果的に実行するためには、KPIの目標値を現実的な範囲に定めることが大切です。併せて、客観的・定量的に測定できる指標を採用すれば、検証もスムーズです。

3. 定期的にKPIの再検討を行う

KPIを定期的に再検討することも重要です。ビジネスの成長や変化に応じてKPIも変わります。既存のKPIが無理なく達成されているなら、より高い目標を設定したり、異なった視点で新たなKPIを設定したりすることも検討します。

逆に既存KPIが達成できないまま長期間停滞しているなら、目標値が高すぎないか、施策の方向性とKPIとの間に矛盾がないか」などをチェックし直します。KGIの進捗とKPIの達成状況とが連動しているかを慎重に見極め、修正の方向性を固めます。

まとめ

カスタマーサクセスでもっとも重要なKPIは「解約率・オンボーディング完了率・アップセル/クロスセル率」です。これらはすべてカスタマーサクセスの最終目的であるLTVの向上に直結する数値で、カスタマーサクセス達成度を測るための客観的な判断材料になります。

KPIの数値設定ではPDCAサイクルを素早く回すことを意識して、目標を高くしすぎないことも重要です。また、最初に設定したKPIにとらわれすぎず、状況に応じて再設定することも視野に入れましょう。