売上分析を始める7手法(フレームワーク)|データ分析の基礎

売上分析は、販売実績や収益など各種売上データを分析して、マーケティング活動や経営戦略立案に役立てるために行います。本記事では売上分析を行う目的と意義、売上分析で使う代表的なフレームワーク7種類を紹介し、分析に使えるおすすめツールも紹介しています。売上分析を実践して経営改善に役立ててください。

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売上分析の目的|事業成長や収益向上にどう役立つのか?

売上分析とは、部署別・個人別・顧客別の売上高や利益率などの分析を行うことです。各種売上データの分析を通して「収益増に貢献している商品と顧客層」を把握し、企業活動の最終的なゴールである「売上の向上」や「事業の成長」に向け、達成可能な目標値を設定します。この売上分析をベースとすれば、適切な戦略プロセスを立てていく環境が整います。

売上分析で得られる効果

1. 市場や顧客のニーズを俯瞰できる

売上分析を通して収益性の高い商品・サービスや、売上増に貢献している顧客を把握できます。

売上データを細かく分析し、「商品の特徴・顧客の属性・売上成立までの経緯」などまでさらに詳しく調べていきます。「顧客の視点からは、特定の商品がどう見えているか」を確認したり、トレンドやニーズなど市場の大きな潮流を俯瞰したりできます。

2. 施策の優先度が明確になる

現状を把握することで、課題の発見と解決策の立案が可能になります。データの分析結果に基づいて、収益のボトルネックになっている部分や、収益性の高い「稼ぎ頭」などについて仮説を立て、施策に優先順位をつけることができます。

数値を根拠にしてピンポイントで施策を立案・実施できるため、手当たり次第にあらゆる施策を試してみるよりもはるかに効率的です。

3. 売上予測の精度を高められる

データに基づく確かな売上分析があれば、売上予測の精度を上げられます。売上予測の精度が高ければ、供給不足による販売機会の損失や余剰在庫のリスクを減らし、予算計画を最適化できます。

4. 販促活動の効果検証によって予算投資の最適化を図れる

特定の施策を行う前後で販売データを比較すれば、実際の貢献度、つまり「その施策が売上に貢献している度合い」がわかります。この貢献度が分かれば、効果の薄い施策に過剰投資することなく、費用対効果が高い施策に絞ってリソースをつぎ込むことが可能になります。

5. 各自が目標意識を持って営業活動に取り組めるようになる

売上分析を行い全体の目標を具体的な数値ではじき出せば、誰にとってもわかりやすい形で目標を共有できるようになり、各自が目標意識を持ちモチベーションを上げて営業活動に取り組みやすくなります。

意欲的に取り組んでもらう際に重要なことは、「今、このタスクを、何のために行なっているのか、なぜ必要なのか」を作業者自身が理解していることです。目標値を期間ごとに分割してマイルストーンを作成し、小さな達成を繰り返すスタイルを設定すれば、個々の作業者はさらに安定して高いモチベーションを維持してくれるでしょう。

売上分析7つの手法・フレームワーク

売上分析で使われる定番の手法に「フレームワーク」があります。ここではフレームワーク7種類について分析の手法と目的を解説します。

1. 因数分解(要素分解)

売上を要素ごとに分解して、収益の成り立ちを把握する方法です。たとえば、小売業の売上は一般的に「客数×客単価」です。この場合、「客数」「客単価」が因数(要素)に相当します。

この要素をさらに分解すると以下のようになります。

  • 客数=(新規顧客+既存顧客)×来店頻度
  • 客単価=購入点数×平均商品単価

このように要素を細分化することで、改善すべき指標の影響因子と打つべき施策が明確になります。

2. ABC分析

商品を「売上高」などの重要度で分類する手法です。もっとも売上に貢献している主力商品をAグループ、標準的な商品をBグループ、売上にさほど貢献していない商品をCグループに分類し、グループごとに販売戦略を立てます。このように重要度別にランク付けし、力を入れるジャンルを明確にするのがABC分析の目的です。

3. デシル分析

デシル分析は顧客を10等分して分析する手法です。仮に1000人の顧客がいたとすれば、一定期間における購入金額の多い順番に並べ、上位から100人ずつ10のグループに分けます。

次に、「各グループの合計購入金額」が全体の購入金額の何%に相当するか算出します。「購入総額に対しもっとも多くの割合を占めるグループ」を売上貢献度が高い優良顧客層とみなし、このグループに対して重点的にアプローチを行うことが、デシル分析の目的です。

4. RFM分析

最終購入日(Recency)・購入頻度(Frequency)・購入金額ボリューム(Monetary)の3つの指標から顧客をランク分けして、優先的にアプローチすべき顧客を絞り込む手法です。目的は、LTV(生涯顧客単価)を上げることです。

顧客をグループ分けする点ではデシル分析と似ていますが、デシル分析では「高額商品を一度だけ購入しただけで、直近の購入実績がない顧客」も上位グループに含まれてしまう場合があります。そのため、最終購入日や購入頻度を加味した分析ができません。つまり収益増の重要なカギである「リピーターの存在」を重視して分析したいなら、RFM分析が向いています。

5. アソシエーション分析

膨大な事例を分析して、パターンや関連性を見いだす手法です。「ある事柄が起きると、関連して別の事柄も発生する」というルールが分かれば、そのルールにしたがって購買行動を予測し、商品の仕入れや配置、開発などに役立てることができます。

アップセルやクロスセルを積極的に仕掛けていくなら、アソシエーション分析で「特定の商品を買った顧客は、別の特定の商品を購入する可能性が高い」などのルールを見いだしておくことが成功の近道です。

6. 重回帰分析

ある成果に影響を与えている複数の要素を割り出し、「それぞれの要素がどの程度の成果に影響を及ぼしているか」を算出する手法です。

たとえば、「駅前のコンビニエンスストア」を対象に、売上高を年間推移として分析する場合を考えてみましょう。売上に影響する要素として「駅の乗降客数」「天候」「取扱品目数」など複数の要素が考えられます。

ここで、「どの要素がどの程度売上に影響しているか」を特定するのが重回帰分析です。この重回帰分析の結果を基に、要素の変化を加味して将来予測を行うことで、強い根拠のあるマーケティングや事業戦略を立てていけるでしょう。

7. クロス集計

2つ以上の質問項目の回答内容を組み合わせ集計する手法です。「年代別」など、回答者の属性ごとの傾向や反応の違いを確かめたい時に、しばしば用いられます。

売上分析に活用するツール

各種ツールを活用すれば、売上分析を効率的に行えるようになります。ここからは、売上分析用に活用されるツールの代表例を紹介します。

​​1. Excel

表計算アプリのExcelを使って売上分析を行うことができます。たいていの事業所に導入されている定番アプリなので、追加費用もかからず便利です。まず、売上分析を新しく始めて定着させたいなら、Excelで使えるフレームワークを利用するのが導入もしやすいです。

Excelにデータを入力し、細かく要素に分けたり、これはと思った要素を比較したりするだけでも、多くのことが分析可能です。そのため、熟練の担当者なら、Excelで十分な分析を全うできるでしょう。

ただし、Excelは手動入力での運用になるため、「リアルタイム性に欠ける」「膨大なデータの入力は難しい」「複数の変数がある場合は扱い切れない」などの点はデメリットです。まずExcelで運用を始め、さらに高度な分析が必要になったら専用ツールに切り替える、というのも有効な手段です。

2. BIツール

ビジネスで使う各種データを分析し、結果レポートをわかりやすくビジュアル化して提示するための専用ツールです。「データのリアルタイム分析・可視化・共有」が可能で、データ分析の切り口やフレームワークの切り替えも容易です。

「データ分析を行いたいが、データ処理に時間を割けない」「分析スタッフの業務負担を軽減したい」といった場合にはBIツールの導入が有効です。

3. CRM/SFAツール

顧客情報や営業活動に関する情報を一元管理できるツールです。「顧客情報や営業活動の視点」から分析を行うのが特徴です。BIツールと同様、分析方法の切り替えや、リアルタイムでの可視化・共有なども簡単に実行できます。高度なツールですが、大量のデータを処理して有効活用したいなら導入を検討する価値があります。

【初心者向け】売上データ分析の基礎と始め方

「売上分析の概要や意義は理解したが、実際に何から取り組んでよいのかわからない」「データ分析はまったく初めてで、何を比較したらよいのかわからない」という方に向け、ここでは売上分析の基礎知識をまとめて紹介します。

1. 売上分析の進め方

(1) 目的の明確化

「何のために行うのか」という、分析目的をはっきりさせることが大切です。たとえば「商品ごとの売上を伸ばしたい」「部署の売上を改善したい」などの目的がはっきりしていれば、知りたい情報を絞り込んで精度の高い分析結果を得やすくなります。

(2) 対象データの収集・入力

目的が定まったら対象となるデータを収集しツールに入力します。売上に関係するデータは「顧客数・顧客単価・商品単価・購入頻度・売れ筋商品」といった売上を構成する要素はもちろん、「販促費・消耗品代などの流動費・人件費や家賃などの固定費」などまで存在します。

国や自治体、研究機関などが公表している調査データや、各種ビッグデータもまとめて参照しつつ、分析を進められれば、より精度は高まるでしょう。

(3)  データの可視化

収集したデータをExcelやBIツール、CRM/SFAといったツールを使って分析し、その結果をグラフなども使って誰が見てもわかりやすいレポートを作成します。ほしい情報がすぐに使えるようにしておきましょう。多くの専用ツールには、自動レポート作成機能など、便利な機能が搭載されています。

2. 売上分析の基本の切り口

(1) 時間軸

時間ごとに分けて分析します。時間経過で変化する売上の推移や、ある事象の前後で売上の変化を分析すれば、「売上は今、増加傾向・減少傾向のどちらにあるか」「プロモーションの成果は出ているのか」などについて明確になります。また、曜日や時間帯ごとの客数予測も可能です。

(2) 商品・サービス

商品やサービスごとに分けて分析します。「売れ筋商品」「よく一緒に購入されている商品の組み合わせ」などが判明します。分析結果を基に、商品の配置やポップの内容に改善したり、仕入れ量を調節して余剰在庫を減らしたりなど、状況に即した具体的な対策を講じていけるでしょう。

(3) 顧客属性</h4>

どういった顧客が商品を購入しているのかに着目し、「年齢や性別・家族構成・購入回数・購入頻度・購入単価」などの属性に分けて分析します。これにより「売上への貢献度の高い顧客」や「今後の育成次第で優良顧客になる可能性のある顧客」などが明確にリストアップされるでしょう。

(4) 顧客接点(場所・地域・店舗・担当者)</h4>

「売上が発生している場所」など、顧客との接点を軸にして分析します。店舗や地域ごとに分析して、「明らかに他店舗よりも売上を伸ばしている店舗」などを見つけ、売上の高い理由を抽出します。この分析結果を他店舗の運用方法へフィードバックすることで、より具体的な売上改善策を講じることができるため、全店舗の売上平均を底上げしやすくなるでしょう。

3. 売上データを比較する際の4つの着眼点

あるデータには「差」「変化」「傾向」「法則性」の4つの着眼点があります。当然、着眼点によって分析結果は変わりますが、ここで得た分析結果にはビジネスに使えるものとそうでないものがあります。

たとえば、季節性がある商品の売上分析を行って施策に生かしたいなら、シーズンとオフシーズンの「売上額の差」よりは、「売上額の月別傾向」のほうが有効な分析になるかもしれません。

つまり、すべての着眼点について分析すると、知りたい情報とはあまり関連がない結果が出て惑わされることもあり得るのです。目的に合った着眼点に絞り、適切な分析結果を使うことが大切です。

まとめ

売上データの分析を行う売上分析は、マーケティングを効果的に行ったり経営戦略を立てたりするために非常に有用です。売上分析の定番フレームワークには因数分解・ABC分析・デシル分析・RFM分析・アソシエーション分析・重回帰分析・クロス集計などがあります。これらのフレームワークはBIツールやCRM/SFAなど専用ツールを活用すれば、比較的簡単に実施可能です。自社に合った方法を取り入れて、業績向上に役立ててください。

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