BIツールのダッシュボードとは?役割と機能を活かした作成方法を解説

BIツールの分析結果を効果的に理解・共有するには、ダッシュボード機能の活用が重要です。BIダッシュボードとは、データをグラフやチャートなどを用いたわかりやすいデザインで可視化する機能です。

本記事では、このBIダッシュボードの機能や役割を解説します。ダッシュボード機能を使いこなし、分析データをより深く理解・共有できるようになりましょう。

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BIツールにおけるダッシュボードとは

BIツールは、データ分析を通して企業の意思決定を強力に支援します。このBIツールの主軸となっている機能の1つが「ダッシュボード」です。

そもそもダッシュボードとは?レポートとの違い

もともとダッシュボードとは、自動車や飛行機などにおける「計器盤」を指します。速度・エンジンの回転数・燃料の残量など、乗り物の状態を視覚的にひと目で把握できるようにすることがダッシュボードの役割です。

ここから転じてITの領域では、「収集・分析したデータを一覧表示する機能、もしくはその画面」をダッシュボードと呼ぶようになりました。この領域でのダッシュボードとレポートの第一の違いは、データの表示形式です。

レポートは、データの分析結果を「文書や表」にして出力します。対してダッシュボードは、データを「グラフやチャートなどを用いた視覚的にわかりやすいデザイン」に変換して表示します。

また、レポートがその時点での状態を抜き出した静的なデータ(加工済みのデータ)だけを対象とするのに対して、ダッシュボードは変動するデータをリアルタイムに表示できます。これはちょうど、自動車の速度計が自動車の動きと連動しているのと同じことです。

レポートは、ある時点までの情報を切り取って、詳細に分析するのに適しています。ダッシュボードは「加工されていない実データ」を一覧表示する機能であり、また、分析の範囲などを柔軟にカスタマイズ可能です。そのため、さまざまな観点から即応的にデータの状態を把握・分析するのに適しています。

BIツールではダッシュボードとレポート両方の形式でデータを出力可能なため、上記の特性をよく理解した上で使い分けることが大切です。

BIダッシュボードの役割

ダッシュボードの根幹的な機能は、ひと目で直感的に情報を把握できるようにすることです。これを基本に、閲覧者のニーズや状況に応じて「情報の構成・表現方法・レイアウト」などを細かに設定できます。必要な情報を追加したり、切り口を変えて表現したり、特定の情報を深堀りしたりすることまで、自由に実行可能です。

BIツールで活用するダッシュボードのタイプ

BIダッシュボードは、活用目的に応じて主に3タイプに分類されます。それぞれの特徴を押さえ、どれを用いるか決定します。

(1) 経営ダッシュボード

経営ダッシュボードは、「経営状況の把握・データに基づく意思決定」を支援することが目的です。リアルタイムにさまざまなビジネスパフォーマンスの値や変動を監視・可視化し、経営上の課題や好機に対するインサイトの提供を通して、ユーザーの適切な経営判断をサポートします。

(2) 分析ダッシュボード

データ活用に向けた前段階である「データ分析」の実行を目的とするのが、分析ダッシュボードです。分析ダッシュボードには一般に、高度な分析機能が搭載されています。

大きな特徴として、データ(数値)や統計学に不慣れなユーザー、つまり「データ分析を専門としない各部門のビジネス担当者」などでも、容易にデータ分析を行える点があります。データの可視化・特定指標の深掘りなどの機能によって、誰にでもわかりやすい形で分析を進められます。

(3) KPIダッシュボード

KPIダッシュボードの目的は、主要業績評価指標(KPI)の達成状況をフィードバックすることです。KPIダッシュボードを用いることで、マーケティング施策の効果検証、課題の発見と原因解明、目標達成のためのKPIの再設定などを効率的に実施できるようになります。

BIツールのダッシュボード機能

どんなタイプのBIダッシュボードにも、いくつかの基本的機能が備わっています。それらを実際の活用事例と併せて理解しておくことで、ダッシュボードをスムーズに導入できます。

1. データの絞り込み

フィルター機能を用いることで、対象データの日付や期間、地理的条件など、さまざまなパラメータをカスタマイズして、表示される情報を絞り込むことができ、たとえば、一定以上の売上高の店舗を抽出するといったことも容易に行えます。

このように目的に沿ったフィルタリングを実行することで、必要な情報に素早くアクセスし、抽出することが可能です。

2. 指標ごとの詳細表示

BIダッシュボードには「ドリルダウン」という、データを指標ごとに詳細表示する機能も備わっています。これは、各指標をクリックするだけで、データを一般的な表示からより具体的な表示へと切り替えることができる機能です。

たとえば、都道府県別の売上高を示すデータから、「東京都→文京区→文京区内の各支店」というように、分析対象のデータをより個別的な層へと深く掘り下げていくことができます。

加えて、「ドリルスルー」という機能も搭載されています。これを利用すると、あるデータについて、ほかの関連データやレポートなどと結びつけ、多角的な視点からの把握することが可能になります。

3. 異常値のアラート表示

異常値のアラート表示は、データが規定値の上限・下限を超えると、ユーザーに知らせてくれる機能です。これによって、ビジネス上の課題を素早く発見・特定し、迅速にその解決に取り組むことができます。

4. シミュレーション

BIダッシュボードでは、過去のデータを基にしたシミュレーションも実施できます。たとえば「予算計画の策定」や「マーケティング戦略の効果予測」などがその活用例です。

これらの活用方法によって、勘や経験などの主観に頼らない、データに基づいた意思決定が可能になります。

5. 業種・目的別テンプレート

BIダッシュボードは自由にカスタマイズすることもできますが、「自社にとって最適な形」を0から考える必要はありません。多くのBIツールには、「業種・目的別のテンプレート」が搭載されており、これを選択することで、ダッシュボード機能も効率的に整理できます。

テンプレートは製品によってさまざまですが、「経営・財務分析」をはじめ、最近では「働き方改革」に対応したテンプレートなども備わっています。

BIダッシュボードの作成・カスタマイズのポイント

BIツール側が用意しているテンプレートを、そのまま使用してもあまり効果的ではありません。目的に沿って、テンプレートをカスタマイズしつつ使用します。

以下のポイントを押さえて、テンプレート適用・カスタマイズと併せて、実際にBIダッシュボードの作成を始めましょう。

  1. 利用目的とユーザーを明確にする
  2. 必要な情報・データ指標を過不足なくそろえる
  3. 適切なデータの表現形式とレイアウトを設計する
  4. 各ユーザー層に主導権を持たせられるようにする

1. 利用目的とユーザーを明確にする

BIダッシュボードは多様な種類・多様な仕方でデータを表示可能です。しかし目的意識が曖昧だと、とりとめのない情報しか得られません。そこでまずは、「3タイプ(経営ダッシュボード・分析ダッシュボード・KPIダッシュボード)のどれが、現在の使用目的にふさわしいか」をしっかりと検討します。

それから、「誰がデータの閲覧・分析を実行するか」を明確にします。たとえば、各部門の担当者など複数のユーザーが想定されるなら、ダッシュボードを複数パターン作成すべき場合もあります。

目的・ユーザーが定まったら、その2つを基軸として「対象が知りたい情報とは何か・どのような表示方法が適しているか」などを考えつつ、実際にダッシュボードをデザインしていきます。

たとえば「売上高の推移を見る」という目的の下でも、実数値で知りたいのか、割合で知りたいのかはユーザーによって変わる可能性があります。したがって、「どのようなデータを、どのような形式で表示するか」は、現場の利用者に確認しながら定めていくことが大切です。

2. 必要な情報・データ指標を過不足なくそろえる

利用目的・ユーザーに合わせて、必要なデータ指標を設定していきます。前提として、それら指標を充足できるだけのデータ量を蓄積させておくことが重要です。

同時にデータ量が十分でも、「質」が悪ければ分析結果の精度は悪くなってしまいます。したがって「ノイズとなる不要な情報を確認・排除し、データをクリーンにする」というプロセスを全うしておくことも大切です。このようにデータの量と質をそろえ、分析の準備を整えます。

3. 適切なデータの表現形式とレイアウトを設計する

データの適切な表現形式・レイアウトの設計は、ダッシュボードの情報をユーザーにとってより理解しやすくするための作業です。グラフやチャートの種類によって、強調されるポイントやメッセージ性は変わってきます。

また、数値をグラフやチャートに変えて機械的に列挙しただけでは、提示される側は「どの情報を重点的に見るべきか」がわかりません。見るべきポイントを、ひと目で直感的にわかるようにすることを意識し、表現形式・レイアウトを決定します。

たとえば、重要なグラフは目立つ位置に置いたり、大きくして表示したりするといった工夫が考えられます。各データの配置や表示サイズ、視点移動を意識した表示順序、ハイライトなどの視覚的効果を意識して、ダッシュボードのデザインを調整していきます。ただし、あまりに多くの色や特殊効果を使いすぎると視認性が悪くなることにも留意しましょう。

4. 各ユーザー層に主導権を持たせられるようにする

昨今では、データの民主化や現場主導型のDXが注目を集めており、それと同期して、特殊なスキルを持った人材でなくとも活用できる「セルフサービス型BI」が主流になっています。

BIダッシュボードに関してもこうした点に留意し、IT部門だけでなく、さまざまなユーザー層が主体的に操作できるようにあらかじめ設定を整備しておくことが重要です。

たとえば、「各担当者(ユーザー)に、カスタマイズをなるべく手短に済ませてもらうこと」を目指して、デフォルト設定を組んでおくことが推奨されます。これにより「各ビュー・各データの表示非表示、フィルタリング設定、詳細な分析手法の選択」などについて細かく考えることなく、各担当作業をスムーズに開始してもらえます。

社内でより多くのユーザーがBIダッシュボードを使いこなせるようになれば、それだけデータ活用の効果が広く深く浸透していきます。これによって、変動の激しい現代の市場でも、利益を向上させていく体制をしっかりと築いていくことができます。

まとめ

BIダッシュボードとは、グラフやチャートなどを用いてデータを視覚的にわかりやすく一覧表示する機能です。BIダッシュボードを活用することで、ユーザーは各データの示す内容をひと目で理解できるようになります。BIダッシュボードにはいくつものタイプや機能があるため、自身の目的や必要な情報をよく考えた上で活用することが大切です。本記事を参考にぜひダッシュボード機能を使いこなし、データ活用を促進してください。