データプレパレーションとは?意味と方法、おすすめツール

データ分析を実行するうえで、アウトプットからの意思決定スピードを上げることは必要不可欠です。非定型データを、データ分析に適した形式へ変換・加工する準備作業に、多くの時間を投じてきたデータサイエンティストは少なくないはずです。

分析のスピード向上には、データプレパレーションを行う必要があります。データプレパレーションとは、分析に必要な様々な形式のデータを収集・クレンジングなどを行って分析できる状態にする分析前の準備作業のことです。

本記事では、データプレパレーションの概要、有用なツールを紹介します。プロセスやメリットを理解し、ツールの選定など組織のデータ活用前進に向けた取り組みを始めましょう。

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データプレパレーション(データプレップ)とは

データプレパレーションとは、データ分析のプロセスの中でデータを収集、必要に応じた形式に変換・加工し、データ分析に使える状態にする準備段階のことを指します。

スピードある意思決定を実現するにはデータの素早い準備・分析・可視化が必要ですが、データ活用のワークフローにかかる時間配分は、データ準備80%、データ分析20%と言われており、データサイエンティストに大きな負荷がかかっていることが分かります。

データの準備を高速化することが意思決定のスピードを上げるカギと言えるので、準備を簡単かつ素早く行うことができるツールが必要です。

参照元:「SaaS・クラウド時代におけるバラバラデータへの取り組み方 Dynamics 365 Ver」|Speaker Deck

データプレパレーション(ツール)のメリット

データプレパレーションのメリットは、以下3つです。

  • データ分析の質を高める
  • 直感的なGUIインターフェースによる加工が可能
  • データ分析担当の負担削減

データプレパレーションによりデータが整理・加工された状態で準備された状態は、企業の利益向上につながるビジネス戦略策定に大きく貢献し、生産性の向上を実現させます。

データ分析の質を高める

膨大なデータの中から使える情報を選別して整理しておくと、データ分析の精度が向上し、企業はより質の高い意思決定が下せます。

具体的には「データクレンジング」という方法で「表記揺れ」「重複」「粒度の相違」などの利用しづらいデータを統合・削除することでデータの質を高めます。クレンジングされたデータを使うことで分析の精度が上がります。

直感的なGUIインターフェースによる加工が可能

データプレパレーションツールを活用すれば、直感的な操作でデータ分析の前処理から分析までをスムーズに進められるようになります。

特に、データサイエンティストやアナリストが在籍しておらず、これまでデータ活用にハードルの高さを感じていた企業にとって、データプレパレーションツールの活用は大きな即戦力となるはずです。

また、専門家が在籍している企業であっても、組織全体でデータを活用する機会が増えれば、より多くの知見が集まり、あらゆるインサイトを発見しやすくなります。

データ分析担当の負担削減

データの活用時に必要な準備作業を効率化すると、データ分析担当者の負担が軽減します。適正なデータ分析を行うには、専門家が複雑な記述を用いてデータを適切に加工する必要があり、これまで多くの工数を要してきました。

現場のビジネスユーザーが問題なくデータを取り扱えるようになれば、データ分析担当者の負担は減り、データ準備コストの削減につながり、より利益に直結する業務へとリソースを集中できます。

データプレパレーションの方法

データプレパレーションのプロセスは、業界や各企業によっても違いがありますが、基本的な流れは以下の通りです。

  1. データの収集
  2. データの評価
  3. クレンジング
  4. データ結合
  5. データ格納

データ活用の最終的な目的により、必要になるデータは異なります。そのため、データ収集に取り掛かる前には、必ずデータの分析から何を知りたいのかを定義するようにしてください。

1.データの収集

データ活用の目的に合わせ、適切なデータを収集・集約する作業です。データの収集には、既存のハウスデータベースから取得するケースと、新たにデータを収集する2つの方法があります。

SQLデータベースやExcelファイルなどから目的に即したデータを抽出し、不要なデータを削除したら、データベースのカラム名や値の記入方法を統一し、分割されたカラムの統合、一意になっていないデータをまとめます。

2.データの評価

収集したデータのフォーマットを揃えたあとに行うのは、各データセットの評価です。データの評価は、クレンジングするデータを見極めるためのステップです。例えば重複しているデータがあれば、重複の度合いがどれくらいかを評価し、クレンジングの必要があるのかどうかを見極めます。

ほかにもデータの完全性(欠損データが含まれていないか)や一貫性(表記ゆれがないか)、適時性(最新の情報か)などを評価してデータを取捨選択することで、データの品質を高めていきます。

3.クレンジング

データの評価後、データを整理、加工、整形する作業がクレンジングです。クレンジングは、データ活用の事前準備において、もっとも時間のかかる工程です。

具体的な作業の内容は「必要のないデータとエラーの除去」「欠損データの入力」「標準パターンへのデータ適合」「個人情報・機密データエントリーのマスキング」のほか、全角半角といった「表記ルールの統一」なども行います。

なお、クレンジング完了後はデータをテストし、システムエラーが起きないかを検証します。エラーが発生した場合、この段階で解決しないと先には進めません。

4.データ結合

データのクレンジングと検証の後に、結合を行います。データ結合とは、複数のテーブルをひとつにまとめる作業です。複数ソースのデータを一つに組み合わせることで、データのより深い理解を促進します。

ただ、粒度が異なるデータ同士を結合させようとすると、データが失われたり重複が生じたりする場合があるため、この工程では、データが揃っているかの確認や重複を防ぐための修正も必要です。

結合を行わない場合は、データブレンディングをします。ブレンディングの作業では、最初に集計を実行するため、大量のデータを高速で処理したいときに効果を発揮します。ブレンディングは結合と異なり、データテーブルを接続しないまま別々のデータソースを混ぜ合わせ、ひとつのデータを導き出す方法です。

5.データ格納

データ結合またはブレンディングをした後、サードパーティーアプリケーションで処理と分析が実行できるよう、データレイクやデータウェアハウス(DWH)にデータを格納します。

煩雑な状態で保管されたデータを信頼できるデータに変換し、精度の高い分析がいつでもスムーズに実行できる状態に整えておけば、迅速な意思決定が可能になるだけでなく、ビジネスの発展と拡大にも期待が持てるはずです。

ETLとデータプレパレーションの違い

ETLとはExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(格納)という作業工程の頭文字を取ったものです。ELTツールでは、複数のシステムデータを対象として、データの抽出から出力までの作業が行える仕組みを提供しています。ETLとデータプレパレーションは混同されがちですが、想定するユーザーに違いがあります。

ELTツールでは、SQLなど最低限のプログラミング知識が必要なのに対して、データプレパレーションツールは、ITスキルの有無を気にせずに利用できるのが特徴です。データをマウスの操作やデータの入力のみで可視化する機能が備わっているため、ビジネス部門のユーザーでも思い通りにグラフやチャートを作成・編集できます。

なお、最近ではノンプログラミングで活用できるETLツールもリリースされるようになりました。より細やかなデータの抽出を求めるのなら、ETLツールの導入も視野に入れてみてください。

おすすめデータプレパレーションツール

データプレパレーションツールは、データ活用のあらゆる障壁を取り除くのに効果的です。利益向上につながるインサイトを得るには、自社のニーズに適したツールを選定しなければなりません。導入を迷っているのであれば、無料で提供されているツールを活用しながら必要性を確かめてみるのもひとつの手段です。

Talend Open Studio

「Talend Open Studio」はTalend社が提供するオープンソースのETLツールです。無償版の提供もあり、ドラッグアンドドロップ方式のGUIと、構築済みのコネクター、構成要素により、スピーディーな開発を可能にします。また、データの正確な改善と高速処理、スムーズなデータ連携が可能です。有償版では、複数人で開発リソースの管理・同期が実行できます。

Tableau

「Tableau」はTableau社が提供するセルフBIツールです。専門知識を必要とせず、誰でも使えるソフトウェアとして世界で70,000社以上の導入実績があります。マウス操作だけでほとんどのデータ分析作業が完結する操作性のよさが特徴です。分散しているデータを抽出し、ノンコーディングで変換・加工して、大量のデータをスピーディーに分析します。

Informatica PowerCenter

「Informatica PowerCenter」はInformatica社が提供するETLツールです。セキュアなオンプレミス環境で、データとアプリケーションを統合します。顧客満足度が11年連続No.1(2021年11月現在)と高い人気を獲得しており、あらゆるタイプのデータソースとシームレスにアクセスでき、汎用性の高いデータ統合を実現できるのが特徴です。データ検証テストの自動化、生産監視機能の搭載により開発の効率化にも寄与するツールです。

Alteryx Designer

「Alteryx Designer」はアルテリックス・ジャパンが提供するBIツールです。操作性の高いGUIを採用しており、あらゆるデータソースとも簡単に接続が可能です。データ収集からクレンジング、ブレンディング、分析・共有までの一連の作業がワンストップで実行でき、コーディングの知識を必要としません。データの可視化によりユーザーのインサイトを深め、組織全体のITリテラシー向上を支援してくれます。

まとめ

これまで専門家が多くのリソースを割いてきたデータプレパレーションは、ツールの導入により効率化が実現するようになりました。ノンコーディングでデータ収集から加工、分析が行えるようになれば、ビジネスユーザーのITリテラシーは大きく前進します。

導入するツールを比較検討する際は、機能以外の操作性や連携性も含め、条件に適したツールを選定する必要があります。精度の高い分析であらゆるインサイトを見出すために、より意味のあるデータ活用で企業の成果向上を実現させてください。