限度額の引き上げラインは3,000万円|広告運用を行う企業の最適な法人カード設計とは

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企業にも経営者にも必須のビジネスアイテムである法人クレジットカード。活用次第では、業務効率化や経費削減に大きな効果が期待できるとも言われる。

しかしながら、「自社の経営に最適なカードを選べている」と、自信を持って言える経営者の方は多くない。ネット情報や自社の知識を集結させても、数百種類も存在する法人カードの中から最適解を導き出すのは、至難の業である。

それならば、自社だけで悩まずプロに相談してみてはいかがだろうか。今回、ミナオシトークでは、【特集|経営者 x クレジットカードコンサルティング】を企画した。

元アメックスのトップ営業で、現在クレジットカード・コンサルタントとして活躍されている長谷川奏氏のご協力のもと、経営者の方々にカードコンサルティングを受けて頂き、最適なカードの選定や法人カードの有効活用法などを伺っていく。

第1回は、インターネット広告事業やメディアプロモーション全般を手がける 株式会社 free web hope 代表取締役 相原 祐樹氏にコンサルティングを受けて頂いた。

「Web広告の立替え費が上昇し続ける一方で、限度額の増額は頭打ちになってきている」と悩む相原氏。多額の決済が発生する広告運用事業が持つべき法人カードの最適解を、クレジットカードの専門家が導き出す。

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課題は、事前入金に伴うキャッシュフローの悪化。限度額の枠を引き上げやすい法人カードを探している

長谷川:まずは、現在の法人カードの利用状況をお聞かせください。法人カードとして「アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード」、通称「AMEXグリーンカード」をご利用中とのことですが、どういった用途で使われていますか?

相原:Web広告費の立替払いのために利用しています。弊社では月間数億円規模のWeb広告運用支援を行っているのですが、そのうち毎月最低でも3,000万円ほどは立替払いが必要で、法人カードでの決済で運用を行っています。

また、名義を分散させた広告運用をするために、現在は2枚追加カードを発行して運用をしております。

長谷川:法人カードとして「AMEXグリーンカード」を選ばれた理由はなにかありますか?

相原:実はこれでないといけない、という明確な理由は特になくて。昔は個人カードとして保有していた「デルタ スカイマイル AMEX ゴールド・カード」(以下、デルタAMEXカード)でWeb広告費の立替を行っていたのですが、決済額が大きくなっていったため、法人カードへ切り替えたという流れでした。

株式会社free web hope 代表取締役 相原氏

長谷川:現状の法人カード利用に伴う課題は、どういったことがありますか?

相原:おかげさまで毎月の広告取扱高は増えているのですが、それに伴って法人カードの決済額が3,000万円を超えたタイミングで、急に決済限度額の上昇ペースが鈍くなってきて、都度事前入金による支払いをしなければならない状況なんですね。毎月1,000万〜1,500万円ほどは事前入金をしています。

そのため、キャッシュフローが悪化していること、また事前入金に毎回手間がかかってしまうことが課題です。

限度額の枠をすぐに引き上げられればいいのですが、決済額の上がり方に対し、限度額は少しずつしか増えていかないんですね。

そこで、限度額の枠を引き上げやすい法人カードが他にあればと思い、調べていたのですが、ネットで調べてもアフィリエイトサイトばかりで、なかなか自分が知りたい情報にたどり着けずにいました。

法人カードの限度額引き上げラインは3,000万円。それ以上の決済額を求めるなら、複数カードの併用がおすすめ

長谷川:広告運用で利用しているAMEXグリーンカード以外に、保有しているクレジットカードは他になにかお持ちですか?

相原:法人カードは一応「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」(以下、セゾンプラチナ法人カード)も持っていますが、予備として保有しているだけでほとんど使っていないです。個人カードは「デルタAMEXカード」を使っています。

長谷川:現在貯められているポイントは、どのようにお使いですか?

相原:どう使えばいいかわからず、貯めっぱなしの状況です。個人カードはデルタのスカイマイルを貯めていましたが、こちらも特に使わずに貯まっている状況ですね。

具体的なカードの利用状況
  1. アメリカン・エキスプレス・ビジネス・カード(メイン)
  2. セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード(サブ)
  3. デルタ スカイマイル AMEX ゴールド・カード(個人用)

①都度の事前入金で限度額3,000万円の超過分を決済し、②はほとんど利用せず。どのカードもポイントやマイルの活用方法がわからず、貯めたままになっている。

長谷川:どのカードも3,000万円がひとつ限度額のラインとなり、それ以上まで引き上げようとすると、どうしても時間がかかってしまいます。

現在の御社の決済額規模ですと、2枚以上のカードを併用するほうが良いかもしれません。予備で保有されているセゾンプラチナ法人カードは非常に優秀なカードなので、ぜひ活用されるべきかなと。

法人カードとして、「AMEXグリーンカード」と「セゾンプラチナ法人カード」を併用すること自体は、問題ないですか?

相原:2枚を併用することは問題ないですね。セゾンプラチナ法人カードは、限度額の引き上げがしやすかったりしますか?

長谷川:はい、セゾンプラチナ法人カードは限度額の融通が利きやすいカードです。ただ、セゾンプラチナ法人カードは “AMEX” とついているものの、発行元はAMEXではないため、与信が別なんですね。

セゾンプラチナ法人カードのコンシェルジュデスクに電話していたければ、限度額の引き上げについてご相談できます。決算書の提出等が求められますが、おそらく2,000万円までは限度額の引き上げられるのではないかと思われます。

相原:AMEXって名前に入っているので、どちらもAMEXだと思っていました。セゾンプラチナ法人カードが優秀な点は他にどういったところにあるのでしょうか?

長谷川:貯まったポイントを使われていないということですが、セゾンプラチナ法人カードはJALマイルを貯めることに特化していて、最大1.125%と高い還元率でJALマイルに移行できます

そして、ご旅行をされないという場合でも、200ポイントで1,000円分という高いレートでAmazonギフト券との交換が可能なため、会社の備品購入に充当するといった使い方ができます。さらにポイントは永久不滅ポイントなので、有効期限を気にする必要がないというのも良い点です。

コンサルティングのポイント

Point1. 決済額が3,000万円を超える場合は、複数カードの併用で限度額を広げる

・決済額3,000万円以下の場合:1枚の限度額を上限まで増額可能
・決算額3,000万円を超える場合:複数枚のカードを併用し、限度額を合算

Point2. 「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」は限度額の引き上げがしやすく、ポイント・マイルの還元率も良い

・限度額を引き上げやすい(一律の制限なく、審査で決定)
・ポイントに有効期限がない
・JALマイル還元率は最大1.125%
・Amazonギフト券へのポイント交換が高レート

「AMEXグリーンカード」と「セゾンプラチナ法人カード」を併用し、海外航空会社のマイルを貯めて社員旅行を実現

長谷川:事前入金によるキャッシュフローの悪化、そして事前入金の手間を解決したいということでしたので、相原さんにオススメのクレジットカードの利用法としては、すでにご契約されている「AMEXグリーンカード」と「セゾンプラチナ法人カード」を併用していく方法です。

コンシェルジュに相談して、セゾンプラチナ法人カードを限度額2,000万円へと引き上げられれば、AMEXグリーンカードの限度額3,000万円と合わせて、最大5,000万円までを決済可能になります。

また、AMEXグリーンカードは20日締め、10日払いなのに対して、セゾンプラチナ法人カードは10日締め、翌月4日払いなので、キャッシュフローもよいのが特徴です。

長谷川:これで事前入金に伴う課題は解決できるわけですが、さらに個人利用されているデルタAMEXカードと組み合わせることで、お得な使い方ができます。

デルタAMEXカードの利点は、海外の航空会社のカードであるということ。国内の航空会社のマイルでは二親等以内と定められているのですが、デルタAMEXカードであれば貯まったマイルを二親等以外の方の航空券に充当することが可能です。

そこで毎月利用されているAMEXグリーンカードで貯まったポイントを、個人利用されているデルタAMEXカードのデルタ航空スカイマイルへ移行(還元率0.8%)することで、たとえばマイルを使って社員旅行でハワイへ行く、といったことが実現できます。

また海外ではなく、国内で社員旅行をしたいということであれば、英国の航空会社であるブリティッシュ・エアウェイズのマイル会員(無料)になっていただき、AMEXグリーンカードのポイントをブリティッシュ・エアウェイズのマイルへ移行(還元率0.8%)することもオススメです。

なぜなら、ブリティッシュ・エアウェイズのマイルでJAL便を予約できるんですよね。そして海外の航空会社ですから二親等以外の方の利用も可能で、社員旅行が実現できます。

長谷川:なお、AMEXグリーンカードのポイントをJALマイルへ移行することも可能ですが、還元率が0.6%と低いため、ブリティッシュ・エアウェイズのマイルへ移行するほうがお得にJAL便をご利用いただけます。

一方で、セゾンプラチナ法人カードではJALマイルへのレートが最大1.125%と高いものの、二親等以内しか利用ができないんですね。相原さんご自身が国内出張をあまりされないのであれば、永久不滅ポイントとして保有しておき、Amazonギフト券と交換するという方法でもよいかもしれません。

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コスパ最強のセゾンプラチナ・ビジネス・アメックス!知らないと損をするポイント制度とマイル活用術

使わないともったいない! クレジットカードの様々な特典や貯まったポイントを有効活用しよう

相原:ちなみに、個人で旅行をするならこのカードがオススメといったものはありますか? いま個人で利用しているデルタAMEXカードでは、ゴールドメダリオンの資格(※)があるのですが、その他にも良いサービスがあればなと思いまして。

(※)年間150万円以上の利用で取得できるデルタ航空スカイマイル上級会員資格。優先チェックイン等の優待サービスが利用可能

長谷川:個人カードで最強と言われているのは、SPGアメックスカード(スターウッド プリファード ゲスト アメリカン・エキスプレス・カード)です。年会費が34,100円となっているのですが、ウェスティンホテルやシェラトンホテル、マリオットホテルといった一流ホテルに年に1度、無料宿泊ができる特典がついています。

さらに、SPGアメックスカードを保有しているだけで、ゴールドエリートという会員資格を取得できるため、空きがあれば部屋がアップデートされたり、レイトチェックアウトができたりといった特典もあるので、優雅なご旅行を楽しみたいというのであれば、オススメのカードです。

相原:めちゃくちゃいいですね(笑)。あれ、ちなみにクレジットカードのポイントは無税でしたっけ?

長谷川:はい、ポイントは無税です。また、たとえば出張で新幹線を利用されたりしたときに、法人カードのAMEXグリーンカードで普通に決済いただいても、あとからアプリ等でポイント払いに変更することもできます

毎月大きな金額を決済されていれば、すぐにポイントは貯まっていきますから、ポイントをうまく有効活用するのとしないのとでは、経費削減といった観点からも大きな違いがありますね。

相原:ポイントで、そういった使い方もできるんですね。今までポイントを使ってきませんでしたが、マイルへ移行して社員旅行をしたりと、いろいろな使い道があるのは驚きでした。

そして今回、長谷川さんにいろいろ教えてもらえて、本当に助かりました。自分で調べていても、情報がありすぎてわかりづらく、またカード会社の営業担当者はやはり自社ブランドに寄った話になってしまうため、ブランドを横断した有効な使い方を聞けたのは、本当によかったです。ありがとうございました!

長谷川奏
株式会社M’SJ 代表取締役 / クレジットカード・コンサルタント

クレジットカード会社アメリカンエキスプレスインターナショナルにて、6年間連続で最優秀年間受賞を獲得する営業成績をおさめたのち、クレジットカード・コンサルタントとして独立。2018年には、コスト削減・業務効率化の支援、ビジネス向けツールのリースを事業とする株式会社M’SJを立ち上げ、代表取締役に就任。

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