旅行系・ギフト券でポイントを使い分け|社員還元を最大化する法人カードの組合せとは

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企業にも経営者にも必須のビジネスアイテムである法人クレジットカード。しかしながら、「自社の経営に最適なカードを選べている」と、自信を持って言える経営者の方は多くない。

本連載【経営者 × クレジットカードコンサルティング】では、クレジットカード・コンサルタント 長谷川奏氏のご協力のもと、経営者の方々にカードコンサルティングを受けて頂き、最適なカードの選定や法人カードの有効活用法などを紐解いていく。

第2回は、デジタルマーケティングカンパニー 株式会社MOLTS 代表取締役 兼 CSO 寺倉そめひこ氏。現状、特に大きな課題は見当たらないものの、最初に法人カードを発行した2016年のMOLTS設立時とは体制や決済状況も変化し、他により良いカードの選択肢や活用方法がないか一度見直したいという。

「貯まったポイントを何らかの形で社員に還元できないか模索している」とそめひこ氏。MOLTSに最適な法人カードと社員還元を最大化する方法を、クレジットカードの専門家に伺った。

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グループ子会社それぞれが法人カードを個別契約。加入審査の早さだけで選んだため、あらためて見直したい

長谷川:MOLTSでは、法人カードとして「アメリカン・エキスプレス・ビジネス・ゴールド・カード(以下、AMEXゴールドカード)」をご利用中とのことですが、あらためて、現在の主な決済用途を教えてください。

そめひこ:MOLTSで保有しているAMEXゴールドカードでは、主にSaaS系ツールの利用料の支払いや、備品購入などの経費支払いに使用しています。決済額は月に100〜120万円ほどです。

また弊社には子会社が3社あり、3社とも「AMEXゴールドカード」(以下、AMEXゴールドカード)を使用していますが、追加カードではなく、それぞれ個別で契約したものです。

そのうち1社は広告事業を展開しており、広告運用に伴う広告費の立替払いでかなりの額を決済することもあります。広告費の立替払いをしなければ、グループ4社全体では月平均200~250万円超を決済している状況です。

MOLTSと子会社3社の組織体制

長谷川:全社でAMEXゴールドカードをご利用中なんですね。AMEXゴールドカードを選ばれた理由はなにかありますか?

そめひこ:2016年にMOLTSを設立したのですが、法人カードの加入審査には時間がかかると聞いていたため、設立したばかりの会社でもすぐにカードが発行されるカードものはないかと探していました

そんな中、知人から「AMEXゴールドカードはすぐにカード発行できた」といった話を聞き、特にカード会社にこだわりもなかったため、AMEXゴールドカードに加入を決めたという形です。

長谷川:現状の法人カード利用に伴う課題は、どういったことがありますか?

そめひこ:特に不満点や大きな課題というのはないですね。ただ、「すぐにカード発行されるから」という理由だけでAMEXゴールドカードを選んだため、今のグループ全体のカード利用状況などを鑑みて、なにか別の良い法人カードがないか、見直したいと思っていました。

AMEXのポイントは旅行や出張利用にメリットあり。ギフト券への交換は別カードの保有も選択肢の1つ

長谷川:各社のカードの限度額に関しては、特にお困りのことはないですか?

そめひこ:広告事業を行う子会社のカードは、限度額を上げたいなとは考えていました。というのも、キャッシュフローの都合上、いまは大手代理店に間に入ってもらい、広告費の立替払いを代理店にお願いすることもあるんですね。

ただ、かなりの額が動く案件は代理店依頼でもいいのですが、細かい案件は自社でさっと展開したくて。例えば、月1,000万円程度までは自社で立替払いができるようにしておくなど。そこで、カードの限度額を上げていきたいのですが、実際にどう限度額を上げていくのか、どのカードを選ぶべきかというところで止まっています。

長谷川:なるほど、1枚のカードの限度額を1,000万円まで上げるというのは、どのカードであっても相当実績を積まないと厳しいんですね。

そのため、多くの企業ではデポジット、つまり事前入金することによって1,000万円分の利用枠を用意して支払う、といった使い方をされています。現在お使いのAMEXであれば事前入金が可能なため、まずは事前入金で対応しながら決済実績を積み重ねていくのがよいかもしれません。

長谷川:ちなみに、貯まったポイントはどのようにお使いでしょうか。

そめひこ:貯まったポイントをどう使うかとか、どう貯めるかといったことをあまり考えたことがなくて、これまではギフト券に換えて、忘年会での余興の景品にしていました

ただ、貯まったポイントをマイルに換えて社員旅行をしている会社もあると聞いたため、何かギフト券以外にも社員に還元できる方法があれば、自社でもやってみたいとは思っていたところです。

MOLTSが抱える法人カード課題

AMEXゴールドカードをグループ4社で個別に契約中

  1. 広告費の立替支払いができるようカードの利用限度額を上げたい。
  2. 貯まったポイントを社員に還元する形で有効活用したい。

長谷川:JAL・ANAのマイルは、マイレージ会員本人と二親等以内の方にしかマイルを充当できないため、貯まったポイントで社員旅行をするためには、二親等以外の方の航空券にマイル充当が可能な海外エアラインのマイルに換える必要があります

AMEXのカードのポイントは、国内外17社のエアラインマイルに移行ができるのですが、中でもオススメなのが、JALの航空券も予約できる「ブリティッシュ・エアウェイズ」のマイルへ移行(還元率0.8%)することです。

そうすることで、本人やご家族以外に対して、国内外どちらの航空券も予約することが可能になります。

なお、MOLTSは現在社員15名ということですが、15人分の特典航空券を予約するのは、特典航空券の空席在庫などの理由から、なかなか難しかったりもします。そのため、現実的には「賞与として数人に特典航空券をプレゼントする」といった使い方が良いかもしれません。

長谷川:もしくは、出張経費の支払いをポイントで充当するといった使い道もあります。AMEXのポイントは航空券の支払いに対しては1ポイント1円、ホテル・新幹線は1ポイント0.8円でポイントを充当できるんですね。特に事前に何かをする必要はなく、決済後にカードの管理画面から該当項目に対して、「ポイントで支払う」と選ぶことで、自動的に項目別の還元率でポイントが充当されます。

たとえば、社員の方が出張でどこかに行かれて宿泊されるという場合に、お持ちのAMEXゴールドカードで新幹線代やホテル代を決済し、あとから、経費支払いをポイントでまかなうことができるのが利点です。

そめひこ:あまり出張の機会がなかったり、特典航空券以外の社員還元を考えるなら、ポイントはギフト券に換えるのが一番いいんですかね?

長谷川:そうですね、ただAMEXは各種ギフト券の交換レートがあまり高くなく、たとえばAmazonギフト券への還元率は0.3~0.4%で。そこでもし追加でカードを持つのであれば、「セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード」(以下、セゾンプラチナ法人カード)がオススメです。

社員還元を目的としたポイント交換先

セゾンプラチナ法人カードは、「SAISON MILE CLUB」へ無料登録しておくと、Amazonギフト券への還元率が最大1.25%になります。月100万円、年間1,200万円を決済されている場合は15万円分のAmazonギフト券と交換可能です。

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コスパ最強のセゾンプラチナ・ビジネス・アメックス!知らないと損をするポイント制度とマイル活用術

「AMEXゴールドカード」で実績を積み上げつつ、「セゾンプラチナ法人カード」の併用で社員還元を最大化

長谷川:すでに決済実績のあるAMEXゴールドカードから別のカードに切り替えてしまうのはもったいないので、AMEXゴールドカードと併用で、社員還元を最大化できるカードを利用するというのがMOLTSの場合は良さそうです。

そこで、先ほどお伝えしたセゾンプラチナ法人カードを併用し、Amazonギフト券への交換はセゾンプラチナ法人カード、社員への特典航空券のプレゼントや出張経費のポイント充当支払いでAMEXゴールドカードを利用するという方法が最適な組み合わせとなります。

コンサルティングのポイント

Point1. AMEXの事前入金を利用して、利用限度額を超えた決済が可能

・利用限度額をすぐに1,000万円にまで上げるのは厳しい
・しかし、事前入金により限度額を超えた1,000万円分の決済が可能
・事前入金での決済により利用実績を積み重ねていけば、限度額の枠も上がっていく

Point2. 特典航空券のプレゼント、出張経費や旅行代金にポイント充当には「AMEX

・ポイントを海外エアラインのマイルに交換すると特典航空券を社員にプレゼントできる
・ブリティッシュ・エアウェイズのマイルは国内線(JAL便)の予約が可能
・航空券・ホテル・新幹線などの支払いを、後からポイント充当払いができる

Point3. ギフト券とのポイント交換には「セゾンプラチナ法人カード」
・Amazonギフト券へのポイント交換は最大1.25%の高還元率
※AMEXはAmazonや各種ギフト券への還元率が0.3〜0.4%と低レート

どちらもポイントの有効期限がないため(※)、忙しくて気づいたらポイントが消失していたといったことがないのも利点でしょう。

※AMEXゴールドカードの初期ポイント有効期限は3年。「メンバーシップ・リワード・プラス(3,300円/年)」への加入で無期限化、もしくは発行後に1回でもポイント交換すると、以降に獲得したポイントも無期限化。
※セゾンプラチナ法人カードの永久不滅ポイントは無条件でポイント有効期限なし。

なお、セゾンプラチナ法人カードは、AMEXのように事前入金はできません。限度額に一律の制限がなく、比較的上限を引き上げやすいカードと言われていますが、新規加入時の限度額は100万円程度です。

しかし、今後事業展開をしていく上では、必ず限度額の問題は発生してくるでしょうから、複数カードを利用して実績を積み上げていくという使い方が理想的です。

そして、AMEXゴールドカードでは、事前入金して支払うことを続けていき、利用実績とともに限度額の枠を上げていくことができます。

子会社含め、トータルでの決済可能額を確保する意味では、MOLTSが保有するカードに対して追加カードを子会社用に発行するのではなく、子会社それぞれが個別でAMEXゴールドカードとセゾンプラチナ法人カードを契約するのがMOLTSグループの場合は良いでしょう

法人税の支払いも法人カードがオススメ。セゾンプラチナ法人カードは限度額の2倍まで支払いが可能

そめひこ:法人カードをお得に使う方法って、他にも何かありますか?

長谷川:ポイント還元という観点でいえば、法人税の支払いも法人カードを利用すべきでしょう。

ただ注意すべきは、法人税の支払いにおけるポイント制度が各社異なり、カードによってはポイント付与の対象にならなかったり、還元率が半減したりする場合があることです。支払う法人税の額にもよりますが、AMEXは一定以上の金額を越えると、法人税支払いの手数料がポイント還元を上回るケースがあります。

一方で、セゾンプラチナ法人カードは、ポイント還元が手数料を下回ることがなく、さらに法人税の支払い時のみ、限度額を一時的に2倍にすることができるため、法人税支払いにオススメのカードでもあります。

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そめひこ:なるほど! 普段あまり法人カードでどうやってポイントを貯めるか、どうやって貯まったポイントを使うべきかということを考えていなかったのですが、こう見ると使わないともったいですね。

今後もっと事業が成長していき、決済額が増えていけばポイント還元も増えてくるのだなと思うと、上手に法人カードを使っていきたいなと思いました。本日はありがとうございました。

長谷川奏
株式会社M’SJ 代表取締役 / クレジットカード・コンサルタント

クレジットカード会社アメリカンエキスプレスインターナショナルにて、6年間連続で最優秀年間受賞を獲得する営業成績をおさめたのち、クレジットカード・コンサルタントとして独立。2018年には、コスト削減・業務効率化の支援、ビジネス向けツールのリースを事業とする株式会社M’SJを立ち上げ、代表取締役に就任。

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