還元率と移行レートの最適化で損失回避|決済先との相性から選ぶ法人カードと有効活用法

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企業にも経営者にも必須のビジネスアイテムである法人クレジットカード。しかしながら、「自社の経営に最適なカードを選べている」と、自信を持って言える経営者の方は多くない。

本連載【経営者 × クレジットカードコンサルティング】では、クレジットカード・コンサルタント 長谷川奏氏のご協力のもと、経営者の方々にカードコンサルティングを受けて頂き、最適なカードの選定や法人カードの有効活用法などを紐解いていく。

第3回は、株式会社HARES 代表取締役であり、複業研究家/カタリストとしてご活躍する西村創一朗氏。現在ご利用中のAMEXカードが決済で使えないケースもあり、特に比較検討せずにお申し込みされたというところから、他により良い法人カードの選択肢がないか検討中であるという。

「ポイントや特典の使い方もよくわかっておらず、自社に最適な法人カードを活用法と合わせて知りたい」と西村氏。決済先によるカードの使い分けや損失を回避するポイント交換先など、法人カードの費用対効果を最大化する方法を、クレジットカードの専門家に伺った。

SaaS系ツールの支払いにAMEXが使えないことも。カード特典も活用しきれていないため、見直したい

長谷川:現在は法人カードとして「アメリカン・エキスプレス・ビジネス・プラチナ・カード」(以下、AMEXプラチナカード)をご利用中とのことですが、あらためて、現在の主な決済用途を教えてください。

西村:SaaS系ツールの利用料の支払いやECサイトでの備品購入、あとは会食での支払いや交通費など、基本的にクレジットカードで支払いできる経費すべてに使用しています。

長谷川:AMEXプラチナカードを選ばれた理由はなんだったのでしょうか?

西村:2015年にHARESを設立したのですが、当時はどういった法人カードがあるのかわかっておらず、そもそも比較検討をしていませんでした。また、ネットで調べてもアフィリエイトサイトばかりがでてきて、どの情報を信頼すべきかわからず。

結局、AMEX以外よくわからなかったので、AMEXを契約したという感じです。また、最初はゴールドカードからスタートしたのですが、プラチナカードの案内が届いたのを機に、現在はAMEXプラチナカードを使用しています。

株式会社 HARES 代表取締役 西村氏

長谷川:現状の法人カード利用に伴う課題は、どういったことがありますか?

西村:一番課題に感じているのは、決済時にAMEX非対応のケースが多いことです。僕の場合はいろいろなSaaS系ツールを活用し、業務効率の改善に取り組んでいるのですが、そういったSaaS系ツールがAMEXに対応していないことも多く、結局個人で持っているVISAカードで決済しているんですね。

そのため、AMEX以外のブランドに乗り換えたいのですが、どういった基準で法人カードを選べばいいのかわかっておらず、今回ご相談できればと思っていました。

また、現在14万円の年会費を支払っているのですが、特になにか特典を利用しているというわけでもないため、よりいい法人カードの活用法があれば知りたいなと思っています。

AMEXはカード利用代金に対してのポイント充当は向いていない。旅行するのであればマイル移行のほうがオトク

長谷川:AMEXプラチナカードで貯めたポイントはどのようにお使いですか?

西村:実は、ポイントの活用方法もあまり理解していなくて、ほぼ貯めっぱなしです。使うとしても、たまにカード利用代金をポイント充当で支払うといった形です。

長谷川:なるほど、実はAMEXはあまりポイント充当に向いているカードではないんですね。いまお使いのAMEXプラチナカードの場合ですと、旅行以外の支払い充当は1ポイント=0.5円換算のため、年間で10万ポイント貯めたとしても、5万円分の価値しかありません

一方で、ポイントをマイルに移行する場合、メンバーシップ・リワード・プラス(年会費3,300円、※プラチナカード会員は無料)に加入していれば、ANAマイルへは1ポイント=1マイルで移行できます。

そして、マイルを特典航空券に交換する場合、予約するフライトや座席グレードにもよりますが、1マイルの価値はエコノミーでおよそ2〜4円、さらにビジネスであれば1マイル10円、ファーストなら20円とも言われています。

仮に、年間10万ポイント獲得しているとすれば、少なくとも10万マイルに移行可能で、それはニューヨークへの旅行2往復分もの価値があります。金額換算すれば40万円近い価値ですから、5万円分のポイント充当支払いに使うよりも、マイルに移行するほうがお得です。

ちなみにAMEXプラチナカードであれば、対象レストランで2名予約すると1名無料になったり、対象ホテルでお部屋の無料アップグレードやレイトチェックアウトといった特典もありますが、これらもご利用されていないですかね?

西村:利用していないです。むしろ、そういった特典があるというのはカード申し込み時に見た記憶があるのですが、いま言われるまで覚えていませんでした。しかも出張や旅行をする機会もほぼないため、それで14万円の年会費を払っているのがもったいなく感じてきました…。

長谷川:ちなみに個人でご使用されているVISAカードは何ですか?

西村:楽天ゴールドカードを使っています。ただ、現在は楽天ブランドにこだわりがあるわけではなく、むしろ利用するECもAmazonが9割以上になってきているため、個人カードも別のものに変えてもいいなと思っていたところでした。

長谷川:なるほど。法人税や消費税の支払いは、法人カードで支払われていますか?

西村:いえ、普通にコンビニで払ってました。

長谷川:税金の支払いもクレジットカードで決済できます。ポイントも獲得できるため、現金よりもカードで支払うほうがお得です。ただ、AMEXだと税金の決済では、カードの利用限度額に関係なく上限なしで支払うことはできますが(※)、ポイント還元率が0.5%に半減してしまうことに注意が必要です。

※税金の支払いのみ、デポジット制度(事前入金サービス)によって、利用限度額を超えた決済が可能。

西村氏が抱える法人カード課題
  • SaaS系ツールの利用料決済で、AMEXが使えないケースが多い
  • 年会費に見合うカード特典を活用しきれていない
  • 貯まったポイントを有効活用できていない

マスターカードブラックを使い、今よりも高還元率の支払い充当に活用。AMEXでのSuicaチャージはNG

クレジットカードコンサルタント 長谷川氏

長谷川:現在AMEXプラチナカードをお使いとのことで、カードのステータスもケアするのであれば、おすすめはマスターカードのラグジュアリーカード「Mastercard Black Card」(以下、マスターカードブラック)を契約し、AMEXプラチナカードは年会費1.2万円の「AMEXビジネスグリーンカード」へダウングレードすることです。

マスターカードブラックは年会費10万円で、ポイント還元率は1.25%さらに支払い充当も1.25%です。現在のAMEXプラチナカードが年会費14万円で、支払い充当が0.5%であるのに比べると、同じ使い方をしてもマスターカードブラックの方がお得になります。

また、ECサイトは主にAmazonをご利用とのことですが、マスターカードブラックはAmazonギフト券への交換レートも1.25%のため、仮に年間1,000万円をご利用になった場合、12.5万円分のAmazonギフト券に交換可能です。

ただし、Amazonで決済する際はAMEXビジネスグリーンカードをお使いください。AMEXのメンバーシップ・リワード・プラス(年会費3,300円)に加入いただくことで、Amazonやヤフーでの決済時にポイントが3倍になります。年間500万円までの決済に限られますが、それでも最大15万ポイントになります。

そしてマスターカードブラックの利用上限がはじめは100万円になる可能性があるため、AMEXビジネスグリーンカードと併用しながら、マスターカードブラックを育てていく、というイメージです。

マスターカードブラックも事前入金サービスによって限度額を超えた支払いができ、税金決済でもポイント還元率は1.25%のままですから、税金はマスターカードブラックでお支払いいただき、効率よくポイントを貯めていってください。

コンサルティングのポイント

Point1. 還元率1.25%のマスターカードブラックでポイントを貯めて、支払い充当やAmazonギフト券へ交換する

  • これまで使っていたAMEXプラチナカードは支払い充当レートが0.5%。支払い充当だけでもメリットがある
  • Amazonギフト券へも1.25%で交換できるため、日頃Amazonを使われているのであればお得に。

Point2. Amazonの決済およびマスターカードブラックの上限を超えた分は、AMEXビジネスグリーンカードで支払い

  • AMEXのメンバーシップ・リワード・プラス(年会費3,300円)に加入することで、Amazonでの決済はポイント3倍。
  • マスターカードブラックの上限額を超える支払いにAMEXビジネスグリーンカードを併用

長谷川:ちなみに、普段Suicaは使われていますか?

西村:Suicaは使ってます。

長谷川:クレジットカードでSuicaにチャージする場合、AMEXカードでSuicaにチャージというのが一番やってはいけないことです。なぜなら、AMEXカードはSuicaへのチャージがポイント還元の対象外なんですね。つまり、いくらSuicaにチャージしても、ポイントは貯まりません。

また個人カードも乗り換えをご検討中とのことでしたので、Suicaを使われるのであれば「ANA VISA Suicaカード」がオススメです。Suicaへのチャージでポイントが貯まることはもちろん、貯まったポイントをEdyやTポイント、また楽天ポイントにも1%の還元率で交換可能です。

ANAのマイル移行も可能なため、将来的に旅行する機会があった場合にマイルを特典航空券に交換するといった使い方も可能です。

そして、マスターカードブラックは0.7%の還元率で、AMEXビジネスグリーンカードは1%の還元率(年間4万ポイントまで)で、ANA VISA Suicaカードにポイント移行できます。

各カードの使わないポイントはすべてANA VISA Suicaカードに移行させてEdyなどで活用し、それでもポイントの有効期限である3年以内に使いきれないポイントがある場合は、最終的に楽天ポイントに交換するなど、有効活用の視点ではポイントの交換先を複数持っておくことが重要です。

現在ご使用中のAMEXプラチナカードの次の年会費支払い月を確認していただいて、年会費が重複しないタイミングでマスターカードブラックをご契約いただくのが良いでしょう。

マスターカードブラックはレストランへの送迎サービスが付けられるダイニングシーンにもオススメ

長谷川:また、マスターカードブラックですとレストラン優待の特典があり、一部のレストランでは会員専用のお席のご用意があったり、コースのアップグレード、また2名予約で1名無料といった特典があります。さらにレストランへの片道送迎サービスもあります。

なお、マスターカードのゴールドカードは年会費が20万円になりますが、ポイント還元率は1.5%になり、さらにレストランへの送迎サービスも、ブラックカードは行きのみの送迎に対し、ゴールドカードは行き帰りどちらか好きな方で送迎サービスを付けられます。

西村:ゴールドカードだと、どこまでもハイヤー使えるんですか? 自宅が都心から離れているため、会食などの帰りがいつも面倒で…。

長谷川:西村さんのご自宅の方面であれば、新百合ヶ丘までは無料で、そこからは追加料金となってしまいますが、それでも普通にタクシーを使って帰られるよりかは断然お得になります。

そしてゴールドカードであれば、ラグジュアリー会員向けのアプリで広告配信が無料で行えるため、富裕層をターゲットとしたビジネスをされている方には、そういった特典もメリットになります。

西村:法人カードにもいろいろあるんですね。今回お話を伺い、改めて自分が法人カードに関していかに無知で、損していたかを感じました。ちょっと調べればわかることかもしれないのですが、やはり日々向き合っているのは本業ですから、そういった法人カードの調査って後回しになりがちで…。

自身の使い方に合わせた最適なカードの方向性がわかり、とても勉強になりました。本日はありがとうございました!

長谷川奏
株式会社M’SJ 代表取締役 / クレジットカード・コンサルタント

クレジットカード会社アメリカンエキスプレスインターナショナルにて、6年間連続で最優秀年間受賞を獲得する営業成績をおさめたのち、クレジットカード・コンサルタントとして独立。2018年には、コスト削減・業務効率化の支援、ビジネス向けツールのリースを事業とする株式会社M’SJを立ち上げ、代表取締役に就任。

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