MAツールとは?機能や導入メリット、運用に必要な知識まとめ

マーケティングオートメーション

MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、企業のマーケティング活動における作業や業務プロセスを自動化し、見込み顧客を商品の購買や商談に繋げる仕組みを効率化するシステムです。MAツールの活用を最適化すると、業務負荷の軽減、一人ひとりの顧客に対する最適なアプローチ、営業活動の生産性向上など、さまざまな効果が期待できます。

しかし、MAツールを単なる業務自動化ツールと捉えて、運用体制も整わないまま安易に導入しても、十分な成果を上げることはできません。まずは「マーケティングオートメーションとは何か?」、その仕組みや役割、導入手順や運用計画の方法をしっかりと学ぶことから始めましょう。

本記事では、マーケティングオートメーションの基本的な考え方から、仕組みや機能、導入の手順や運用体制まで、初心者向けに詳しく解説します。

当サイト掲載の全30サービスのMAツールの一覧やランキング、評価・利用レビューは以下の選定ガイドをご覧ください。選び方や比較基準についても解説しています。

マーケティングオートメーション(MA)とは?

マーケティングオートメーション(MA)とは、企業のマーケティング活動において、人手による煩雑な処理や業務プロセスを自動化(オートメーション化)し、獲得した見込み顧客を商談・受注に繋げる仕組みを効率化するという考え方です。

本記事では、以下の表記を使用します。

  • マーケ―ティングオートメーション=手法・考え方
  • MAツール=システム・ツール

MAツールとは

MAツールは、マーケティングオートメーションの概念を実現するソフトウェア全般のことを指します。獲得した見込み顧客を商談・受注に繋げる仕組み作り、つまり「営業案件(商談)を創出するためのツール」です。たとえば、下記のような作業をオートメーション(自動化)できます。

  • 見込み顧客の固有情報や行動履歴の収集
  • メルマガ開封率やWebサイト訪問履歴の解析
  • 個別にシナリオを組んだステップメールの配信
  • 検討度・購入意欲が高まっている見込み顧客の選別
  • 各種分析レポートの作成

MAツールによって定型業務が自動化されることで人為的エラーが削減され、また大量の顧客データがより速く正確に処理されることで、一連のマーケティング業務を効率化することができます。

CRM/SFAとの違いや関係性

MAツールと混同されやすいツールに「CRM/SFAツール」があります。CRM/SFAツールは、営業部門が顧客に接触し、提案活動を行い売上に繋げていくフェーズで活用されますが、そもそもの営業案件数を増やすのは見込み顧客を創出・育成するMAツールの役割です。

CRMツール(Customer Relationship Manegement)は、顧客との接点に関するあらゆる情報を記録し、自社と顧客の関係を管理・活用するシステムです。既存顧客との信頼関係を高めて、リピーターやロイヤルカスタマーを創出したり、新規の類似企業へのアプローチ戦略を立てることができます。

SFAツール(Sales Force Automation)は、顧客の担当者や役職、案件の進捗状況、過去の商談履歴、そのほか営業活動で得た情報を一元管理するシステムです。商談のプロセスや進捗状況が可視化されることで、案件の属人化を避け、各営業担当者や部門全体の営業活動を効率化することができます。

CRM/SFAとMAツールを連携することにより、どの属性の見込み顧客がどのような営業プロセスを通じて優良顧客となったのか、といった情報共有がマーケティング部門と営業部門の間でシームレスにできるようになり、それぞれの機能をより有効に活用することができます。

BtoCとBtoBの違い

マーケティングオートメーションを運用していく際には、「BtoC(消費者向けビジネス)」と「BtoB(企業間ビジネス)」で、目的や見るべき指標が異なる点に注意が必要です。

まず、BtoCの場合は、扱うリード数(固有情報を取得する見込み顧客数)が、BtoBよりも大幅に多いです。ECサイトへの流入や実店舗への来店促進を目的とする場合には、それらの指標計測とデータ統合ができるクロスチャネル対応の機能が重要になります。

また、BtoCビジネスを想定して開発されたマーケティングオートメーションを「CCCM(クロスチャネル・キャンペーンマネジメント)」と呼び分けることがあります。CCCMの考え方や特有の機能については、以下の記事をご参照ください。

CCCMとは?顧客起点のOne to Oneコミュニケーションを実現

一方で、BtoBの場合は、受注確度の高い商談を創出することが主要な目的となります。ターゲットが限定的で、認知から購入に至るまでの期間が長くなることが多いため、メール配信のシナリオ作成やスコアリングなど、見込み顧客の分類・育成に関する機能の充実度が求められます。

マーケティングオートメーション(MA)が必要とされる背景

マーケティング先進国のアメリカでは、2000年頃からマーケティングオートメーションの有用性が注目されはじめていましたが、日本国内に「マーケティングオートメーション」という言葉が一般にまで浸透したのはここ数年のことです。

なぜ今、MAツールがこんなにも注目されているのか。なぜ、業界やビジネスモデル、企業規模に関係なく、ここまで導入の必要性が高まっているのか。その背景をご説明します。

1. 営業スタイルがアウトバウンドからインバウンドへシフト

マーケティングオートメーションの必要性が高まったのは、顧客の変化に対応する営業スタイルのアウトバウンドからインバウンドへのシフトです。

インターネットが普及する以前、顧客が情報収集をする術は少なく、またその情報も不透明さを含むものでした。営業担当者を呼んで直接話をするにしろ、広告やTVコマーシャルを見るにしろ、顧客は企業から一方的に発信される情報しか得ることしかできなかったのです。

営業担当は、1日に何十件もの飛び込み営業や数百本のテレアポをしてリストを獲得し、そこからアプローチの強化、商談、追客(顧客育成)、アフターフォローまでを全て1人で行っていたため、企業の営業業務は属人化し、営業成果に格差が広がる一方でした。

しかし近年は、インターネット環境が整備され、さらにスマホやSNSが普及したことにより、人は膨大な量の情報をさまざまなデバイスやチャネルから入手できるようになっています。

ほとんどの消費者は購入する前に自ら製品やサービスに関する情報収集を行なっており、口コミや評価といった第三者からの情報も得られるようになったことで、企業からの情報のみを信頼することが減ってきました。

これはBtoBビジネスにおいても同様で、顧客がベンダーの営業担当とコンタクトを取る頃には、検討している製品・サービスの価格や評判の情報収集を終え、競合との比較検討に入っていることも少なくありません。

企業は、顧客が求めるコンテンツを、ホームページやWeb広告、SNSなどさまざまなチャネルを駆使して、顧客が求めるタイミングで提供することを求められるようになりました。

高まり続ける顧客からの期待に呼応するように、アウトバウンドセールスからの脱却を目指す企業が増え、マーケティング活動のプロセスを効率良く構築するツールとして、MAツールが注目され始めるようになったのです。

2. 顧客データの取得・分析技術の向上によるマーケティング機能の拡大

マーケティングオートメーションの必要性の高まりとともに、あらゆる接点での顧客の活動情報を収集・分析するマーケティングテクノロジーが次々と生み出され、実施できるマーケティング施策もどんどん拡大してきています。

また、SNSをはじめ、新しい顧客接点が今後も増えていくと考えられますが、取得すべき顧客データが多くなればなるほど、見込み顧客の獲得から商談化に至るまでのコミュニケーションのシナリオ設計は複雑化していきます。

膨大なデータの取得と整理・分析、グラフによる可視化やレポート作成、施策の検証と、これらのマーケティング作業を全て手作業で処理し、PDCAサイクルを維持続けるのには無理があるでしょう。

MAツールでは、Webサイトに訪問した見込み顧客の固有データの取得から、閲覧ページや滞在時間、サイト内の回遊順序、流入源情報、再訪問回数などの行動分析、さらには最新データを参照したリアルタイム性の高いレポート作成まで、自動で実施されます。

MAツールが解消できる課題と導入メリット

MAツールを導入し、効果的かつ長期的に運用することで、企業は以下のようなことを実現できます。

  1. マーケティング業務を効率化し、リソース不足を解消できる
  2. 見込み顧客の放置や取りこぼしを防ぐことができる
  3. 質の高い商談を創出し、受注率や売上単価を高めることができる
  4. 営業部門の生産性を底上げすることができる

マーケティング施策は、導入や変更をしてすぐに結果や効果が表れるものではなく、MAツールの導入効果についても長期目線での運用体制が前提となります。

1. マーケティング業務を効率化し、リソース不足を解消できる

マーケティング業務には、単純な業務プロセスの繰り返しや、手作業では時間やコストがかかる煩雑な処理が多く存在します。

例えば、取得データの入力・整理、メールの配信リストの作成・更新、分析レポートの作成、顧客セグメントの仕分けなど、誰が行なっても結果や成果物が同じになる業務は、MAツールで自動的に処理することが可能です。

もちろん、見込み顧客の獲得から商談化までの業務プロセスを最適化していくには、施策の立案・検証を繰り返し、定期的なシナリオの見直し・改善も必要になりますが、テンプレート化できるところは全て自動化しておくことで、思考が求められるようなコア業務により多くのリソースを割くことができます。

2. 見込み顧客の放置や取りこぼしを防ぐことができる

広告や検索結果からのWebサイト訪問にせよ、展示会やセミナーでの名刺交換にせよ、1度接触した見込み顧客が、そのまま商品・サービスを購入してくれるケースは稀です。

高額な商品や意思決定者が複数人いるBtoBビジネスであれば尚のこと、何度もWebサイトを訪問して関心の高いページを調べたり、異なるメディアから情報収集を重ねて信頼性を確かめたりした後、ようやく本格的な購入検討に入るのではないでしょうか。

メルマガ登録や名刺交換などで獲得したリストも、あと一歩のところで契約に至らなかった見込み顧客も、こちらからコンタクトを取らずに放置すれば、購入意欲が弱まるばかりか、競合他社の顧客になってしまうかもしれません。

以前は、営業担当者は毎月の売上数値を追わなければならず、「そのうち顧客」のフォローアップよりも、「今すぐ顧客」の対応の優先度が高く、せっかく集めた名刺データも使われないまま溜まっていくという状況があたりまえのようになっていました。

MAツールでは、初回のコンタクトから見込み顧客の行動履歴を追っていけるため、見込み顧客の放置による機会損失を防ぐことができます。

そして、キープした見込み顧客に対しては、むやみやたらにキャンペーンや割引の一方的な通知を送るのではなく、見込み顧客のアクション(Webサイトへの再訪スパン、特定の製品ページの閲覧、メルマガ内のURLのクリックなど)を見て、求められている情報をタイムリーに伝えていきます。

製品・サービスへの興味関心や次に必要としている情報が予測できれば、アプローチの戦略を立てやすく、良好な関係を構築しながら、購買意欲を高めていくことができるでしょう。

3. 質の高い商談を創出し、受注率や売上単価を高めることができる

MAツールの導入が企業にもたらす効果の中でも、収益アップに直結する要因となるのは、「質の高い商談を多く作り出して、営業部門に渡せること」です。

マーケティング部門は、獲得した見込み顧客に有益な情報を継続的に提供し、商品・サービスに対する興味や購買意欲の高まった、確度の高い見込み顧客のみを営業部門に受け渡していきます。

このようなリードナーチャリングを行った見込み顧客は、商品・サービスに関する知識力や企業に対する信頼性を高めた状態で商談に進むため、営業担当者は提案を行いやすく、質の高い商談ができるようになることで、成約率向上や単価アップの効果が期待されています。

4. 営業部門の生産性を底上げすることができる

MAツールの導入によって、従来よりも質の高い見込み商談が創出されることは、営業部門の業務効率を向上させることにも繋がります。

また、営業部隊はリードナーチャリングがしっかりと行なわれた見込み顧客のみにアプローチをかけることができるため、経験が浅く、営業力が弱い担当者でも受注を生み出しやすくなります。

したがって、個人的な営業スキルに左右されない「脱・属人化」の強い営業組織を構築することができるのです。

MAツールが活用される顧客フェーズ

マーケティングオートメーションの活用シーンは、「見込み顧客が、初めて自社に接触してから、自社の商品・サービスの購買に至るまで」において、以下の3つのフェーズに分類できます。

  1. 見込み顧客の獲得(リードジェネレーション・リスト獲得)
  2. 見込み顧客の育成(リードナーチャリング)
  3. 見込み顧客の分類(リードクオリフィケーション)

1. リードジェネレーション(見込み顧客の獲得・リスト獲得)

商談創出のスタートラインは、自社の製品・サービスに興味・関心を示す、もしくはそうなる可能性がある「見込み顧客の獲得(リードジェネレーション)」です。見込み顧客の固有情報はリストと呼ばれます。

リスト獲得の方法は、イベント出展やセミナー開催、テレアポ、Web広告などさまざまですが、MAツールがカバーする施策は、Webサイト経由での問い合わせや資料ダウンロード、メルマガ登録が中心となります。

具体的な機能としては、WebコンテンツやLPの作成、問合せフォームの設置、SEO分析、アクセス解析などですが、これらは製品によって性能にバラつきがあるため注意が必要です。

特に、海外製のMAツールは、既に十分なリストを保有している、あるいは自社でリード獲得の仕組みがあることを前提として、リードジェネレーション系統の機能を実装していないことが多いので注意しましょう。

そもそもリスト保有数が十分でなければ、当然のことながら商談や受注も生まれないため、MAツールの導入計画時には、自社ですでにリード獲得の仕組みができているか、またはこれからリードを獲得していく体制が整っているかを十分に検討してください。

2. リードナーチャリング(見込み顧客の育成)

リードナーチャリングは、獲得した見込み顧客に対し、メルマガやWebコンテンツを通じて有益な情報を継続的に提供することで、商品・サービスに対する興味や購買意欲を高めていくプロセスです。

MAツールでは「特定の製品ページを短期間で3回閲覧した」「メルマガのURLをクリックした」「セミナーに連続で参加した」といった特定の条件やアクションに応じて、コンテンツやステップメールを配信することができます。

性別・年齢層・業種などの属性、行動履歴や関心度から見込み顧客をグループ化し、それぞれに対応する配信シナリオを細かく構築することができるMAツールもありますが、この機能が充実すればするほど、それらをフル活用するマーケティングスキルと運用の人的リソースが必要になります。

いくら高性能なリードナーチャリング機能が揃っていても、「メールの自動配信」くらいしか使わないようでは、宝の持ち腐れです。

3. リードクオリフィケーション(見込み顧客の分類)

リードクオリフィケーションは、見込み顧客がカスタマージャーニーのどの段階にいるかを見極め、成約可能性の高い見込み顧客を選定していくプロセスです。

MAツールでは、見込み顧客の属性や興味の度合い、行動履歴などに応じて、見込み顧客をセグメントに分類することが可能です。ここから、どのセグメントの顧客に、どのタイミングで、どんなアプローチをかけるか、といった判断基準ができ、商談化や次の提案を効率的に進めていくことができます。

また、メールの開封数や特定のWebページの閲覧回数や滞在時間など、見込み顧客の行動をスコアリングして選別していくという手法もありますが、このリードスコアリングは点数を付ける条件によって精度が大きく変わるため、運用しながら精度を改善していく必要があることに注意が必要です。

そもそもWeb上における見込み顧客の行動は多岐に渡り、リードスコアリングの設計は複雑になりがちで常に変化するため、1つの目安として留めておくといいでしょう。

MAツールで押さえておくべき9つの機能

MAツールは、リード獲得から、育成、優良顧客化まで活用の幅が極めて広く、実装されている機能もツールによってまちまちです。

MAツールの有用性をイメージしやすくするため、ここでは、MAツールの代表的な機能を活用法とともに解説します。

領域・顧客フェーズMAツールの機能
リードジェネレーション
リード獲得フェーズ
・Webページ/LP作成
・フォーム作成

・Web広告/SNS連携
・SEO分析
・アクセス解析
リードナーチャリング
リード育成フェーズ
・メールマーケティング/メール配信
・シナリオ設計
・キャンペーン管理
・パーソナライゼーション
リードクオリフィケーション
リード分類・抽出フェーズ
・スコアリング設計
・セグメンテーション
・ホットリード抽出
リードマネジメント
顧客データ管理
・リード管理(リスト管理)
・CRM/SFA連携

・Webサイト行動解析
・オフライン接点管理
・セミナー管理
オートメーション
各種業務自動化
・レポーティング
・社内アラート

1. Webページ(LP)やフォームの作成支援機能

Webページ(LP)やフォームの作成支援機能とは、リード獲得の入口となるLP(ランディングページ)やフォームの設置、編集、効果測定を行える機能です。

マーケティングオートメーションの運用では、リードの行動をモニタリングし、施策の軌道修正やシナリオの再設計を行って、改善と最適化を繰り返す「PDCAサイクル」をスピーディーに回すことが求められます。

そのため、MAツールにおける当機能は、問い合わせフォームや資料ダウンロードページの作成・変更から効果検証までをワン・ストップで行えることが多いです。

複雑なコーディングやシステム変更を伴うケースを除けば、Web制作会社やエンジニアへの依頼を通すことなく、マーケター自身が対応する方が時間もコストも有効に活用できます。

2. リード管理

リード管理機能は、Webサイト上の資料ダウンロード、メルマガ登録、問い合わせメールなど、さまざまな接点からの見込み顧客(リード)の情報を一元管理できる機能です。Web上のトラッキングデータだけでなく、セミナーや展示会、また社内に散在する既存データもMAツール上に集約できます。

企業名や氏名、役職、メールアドレスなどの名刺情報、性別、職業、年齢、趣味嗜好などの顧客属性のほか、サイトの閲覧状況やセミナー参加状況、メール開封などの行動データも紐付けて可能です。

また、名刺管理ツールやCRM(顧客管理システム)と連携することで、社内データが統合・整理され、顧客情報や人脈情報の質がより精練・均一化されたものとなります。部門間のシームレスな情報共有が可能となり、同一情報の二重入力の手間やミスもなくなるため、マーケティング活動・営業活動ともにコスト削減と業務効率化の効果も期待できます。

Cookie(クッキー)を取得することで、一度、自社サイトを訪問した匿名の見込み顧客の継続的なトラッキングが可能です。Webサイトに訪問した際には匿名状態であっても、行動履歴を追うことで名刺交換やセミナー参加リストによって実名と結びつくこともあります。展示会での名刺交換より前から自社サービスに興味を持っていたことがわかるなど、本来の接触起点や興味関心の変動傾向を掴むことにも役立つでしょう。

ただし、こうした個人を識別できるデータは個人情報として取り扱われるため、データを収集される本人の同意取得が必要となります(※2021年4月施工の改正個人情報保護法により義務化)。

Cookie取得の同意や改正個人情報保護法については、こちらの「個人情報保護法の改正と日本企業への影響(2022年4月施行)」をご確認ください。法改正のポイントや企業が準備すべき対応などを解説しています。

3. シナリオ設計機能

MAツールのシナリオ設計機能とは、「どのようなリードに、いつのタイミングで、どのようなコンテンツやメッセージを届けるか」といったシナリオを設定して自動配信する機能です。

顧客属性(年齢・居住地・興味など)や、顧客ステージ(検討初期段階・中期段階・失注・解約予兆など)ごとにシナリオを設定でき、自社サイトへのアクセスや特定リンクのクリック、製品ページの閲覧数など、MAツールで検出できる行動や、属性・ステージの変化をトリガーに、適切な情報・コンテンツの配信を行えます。

また、以下のように自動配信したメールに対する顧客の反応や行動に応じて、次に続くシナリオを分岐させることも可能です。

  • メール開封後に、製品ページに訪問した場合は、シナリオを中断して電話商談に繋げる。
  • メール開封後に、自社サイトにアクセスをしたが製品ページには遷移していない場合は、製品紹介のコンテンツを配信する。
  • メール開封後に、何も行動を起こしていない場合は、最新情報や製品紹介などの定期配信を続ける。
  • メール未開封の場合は、再度同じメールを送る。

配信コンテンツやシナリオ設計そのものは自社で試行錯誤する必要がありますが、そのシナリオをMAツールにどれだけ細かく反映できるかは、ツールによって大きく差が出るところです。

4. メールマーケティング機能

メールマーケティング機能では、リードの属性情報に基づく配信リストの作成、設定したシナリオに沿ったメールの自動配信を行います。ある起点からスケジュールに沿って段階的に配信するステップメール、リードの行動に応じて配信するトリガーメール、メルマガ配信なども設定可能です。

また、メールの到達率や開封率、配信停止率などのデータを集計・分析でき、ABテストによる効果の比較検証や施策の効果測定も行えます。こうした機能を駆使してメールマーケティングの精度を高めていくことが可能です。

メールマーケティングによる顧客育成の考え方や、ステップメールの配信計画から実施後の効果検証までの具体的な手法などについては、以下の記事も合わせてご参照ください。

5. パーソナライゼーション機能

パーソナライゼーションとは、個々の見込み顧客の興味関心やニーズに応じて、適切なコンテンツや情報を出し分けることです。パーソナライズ(Personalized)の意味は、「個別の〜」「個人向けの〜」と訳されます。

ツールによって細かい機能は異なりますが、MAツールのパーソナライゼーション機能には、下記のようなものが挙げられます。

  • 顧客属性や行動に応じて、Webサイトで表示されるコンテンツを出し分ける。
  • パーソナライズされたリターゲティング広告を配信する。
  • 行動パターンの分析や機械学習によって、見込み顧客のニーズを個別に把握し、適切な商品情報を配信する。

Webサイト上やメール配信のコンテンツ、Web広告など、複数のタッチポイントを横断しながら一貫したコミュニケーションを取ることで、見込み顧客のエンゲージメントを高めます。

6. スコアリング設計機能

スコアリングとは、見込み顧客の興味関心や検討度の高さを数値で可視化することです。MAツールでは、個々の見込み顧客が起こしたアクションに対して付与するスコアを設定し、成約の確度の高いホットリードを抽出することができます。

たとえば、以下のようにスコアを設定し、累積の点数によって「Cold」「Warm」「Hot」などの検討度ステージに分類することが可能です。確度が高いと想定されるリードは営業に送客し、提案や商談のアプローチに進めるといったように活用されます。

  • 前回の訪問から5日以内の自社サイトへの訪問で+1点
  • 商品詳細ページへの遷移で+2点
  • 資料ダウンロードで+5点
  • メールの開封で+1点・メール内のURLクリックで+2点・未開封で-2点

MAツールであれば、複数のスコアリングルールを顧客のセグメント別に設定して、同時に実行できます。スコアリング結果に応じてシナリオ分岐を即時に反映・実行することも可能です。

スコアリング結果とシナリオに則ったセールスを行い、マーケティング部門にフィードバックを戻すことで、ホットリードの再定義やスコアの再調整を繰り返してスコアリングの精度を高めていくことができます。

スコアリングの具体的な手法・進め方、精度を高めていくためのポイントについては、以下の記事も合わせてご参照ください。

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7. キャンペーン管理機能

キャンペーン管理機能は、条件に当てはまった見込み顧客に対して、最適なタイミングで最適なマーケティング施策を自動的に選択し、個別に実施する機能です。

ここでのキャンペーンとは、見込み顧客が購買に至るまでのシナリオに沿って発生する一連の施策(メール配信、セミナー開催、ダウンロード資料の提供など)を指します。

MAツールでは、「30代前半・スコア40以上の見込み顧客が、自社サイトの商品Bを閲覧したら、商品の使用レビューや活用事例をメールで配信する」といったリードの属性と行動を掛け合わせ、次のアクション(施策)を指定することができます。

また、複数のキャンペーンを同時進行し、各キャンペーンが有効だったかを検証し、シナリオを調整して次回以降のキャンペーンの有効性を高めていきます。

8. CRM/SFA連携

顧客情報や自社との関係性を一元管理するCRMや、営業活動を支援するSFAとのデータ連携機能です。一部のSFA機能が簡易付帯しているMAツールもありますが、既にCRM/SFAツールを運用している企業であれば、既存ツールとの連携は必須になるでしょう。

MAツールとCRM/SFAツールのデータ連携を行うと、見込み顧客からリピート顧客まで一貫した管理を行えるとともに、マーケティング部門と営業部門の情報共有や業務連携もシームレスに行えるようになります。

ただし、MAツールによって連携できる外部ツールが異なりますので、既存ツールがある場合、もしくは導入予定の外部システム・サービスがある場合は、あらかじめそれらと連携可能なMAツールを選ぶ必要があります。CRMとMAの連携メリットについては以下の記事にて詳細をご紹介しています。

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9. レポーティング

レポーティング機能は、MAツール上で実施・管理しているマーケティング施策の進捗や結果をレポートとしてまとめる機能です。

レポーティングは、マーケティングオートメーションのPDCAサイクルを回す上で欠かすことができません。レポーティングの指標や可視化のデザイン・出力フォーマットのカスタマイズ性は、MAツールによって異なりますが、たとえば以下のような指標を集計・分析することが可能です。

例:データ集計・レポーティング
  • メールの開封率、クリック率
  • 特定ページのコンバージョン率
  • 施策ごとの獲得リード数の比較
  • 商談化への貢献分析
  • 顧客ステージの遷移

これらのレポートをニーズに合わせて細かくカスタマイズを行い、さまざまな切り口で施策を分析することで、ボトルネックの発見や仮説検証に活用することができます。

当サイト掲載の全30サービスのMAツールの一覧やランキング、評価・利用レビューは以下の選定ガイドをご覧ください。選び方や比較基準についても解説しています。

MAツールの導入計画から運用の流れ

MAツールを導入すると、社内のマーケティング部門・営業部門、その他の各関連部門の業務体制が大きく変わります。導入してから、実際に運用していく過程でも業務調整を段階的に行うことになるため、定着するまで1年以上かかることもあるでしょう。

以下、MAツールの一般的な導入から運用の流れを紹介します。

  1. マーケティング戦略立案
  2. 導入ツールの選定
  3. 業務フロー設計・社内システムとの統合計画
  4. コンテンツマーケティング企画とコンテンツ制作
  5. 配信シナリオの設計・実施
  6. 実行後の効果測定と分析・PDCAサイクルの運営

ステップ1. マーケティング戦略立案

まず、自社のマーケティング活動における現実的な「KGI(最終ゴール)」を定め、それをどのようなプロセスを踏んで実現していくか、というKGIを達成するための小要素「KPI」を設定します。

KGIは、過去の実績や自社の現状課題を洗い出し、下記のように達成までの期間とともに定量的に設定しましょう。

  • 半年間のうちに見込み顧客の商談化案件を月間30件から月間50件にする。
  • 1年後に商談の成約率を30%向上させる。

KGIの達成度合いを評価するための中間地点となる目標が、KPIです。売上や成約数のKGIに対し、KPIにはサイトアクセス数やメルマガ登録者数などの具体的な施策の目標値が置かれ、複数設定される場合も多々あります。

もし、新規事業を立ち上げたばかりで、まだ過去の実績がないというケースについても、理想のゴール値を設定しておき、運用開始後の適切なタイミングで目標の見直しを行いましょう。

ステップ2. 導入ツールの選定

自社のマーケティング活動における現状課題を解決できるツール、あるいはマーケティング戦略やKGIを達成していく上で必要になるツールは何かを検討します。

この段階では導入ツールが必ずしもMAツールになるとは限りません。MAツールよりも先駆けて導入すべきは名刺管理ソフトやCRM/SFAツール、フォーム作成ツールであったり、また現状課題に対してはマーケティングオートメーションは不要になったりすることもあります。

もし、マーケティングオートメーションを導入することが決まれば、次は導入するMAツールの比較検討に移ります。選び方や製品比較のポイントは次章で解説しています。

重要なことは、自社のマーケティング課題に合った機能や仕様で、現実的に運用可能なMAツールを選定することです。多機能・高性能のMAツールは細やかな施策を設計できる一方で、Webマーケティングの幅広い知見や経験が求められます。自社のマーケティングレベルや運用体制に見合わないMAツールを導入しても、十分な効果を得ることができません。

ステップ3. 業務フロー設計・社内システムとの統合計画

MAツールは、マーケティング部門だけでなく、営業部門やカスタマーサクセス、コールセンターなど複数部門で業務連携を行う場合もあります。導入前には、どの部門がどのプロセスに関わるか、誰が何をいつまでに行うか、部門間の情報共有はどのように行うか、といった運用ルールを決定・共有しておきましょう。

MAツールは、通常CRMと連携させて活用することが多く、見込み顧客の行動履歴やメール開封の有無などの情報をCRMに反映させることで、顧客情報がより濃くなり、商談や顧客とのコミュニケーションを円滑にすることが可能です。

またCRMとのデータ統合によって、精練された顧客情報がマーケティング部門にフィードバックされることで、クオリフィケーションの精度を高める施策を新たに打つこともできます。

【注意】個人データの取り扱いについて

2022年4月施行の改正個人情報保護法により、個人データ取り扱いに関する本人同意の取得義務が厳格化します。企業は、個人データの格納場所や利用状況を一元的に管理し、個人データに関する開示請求を受けた際には即座に対応できる状態でなければなりません。
個人情報保護法の改正と日本企業への影響|同意管理プラットフォーム

その他にも業務システムやクラウドツールを利用している場合は、この機に社内全体のツール・システム構造の最適化を図るといいでしょう。

ステップ4. コンテンツマーケティング企画とコンテンツ制作

次に、見込み顧客を育成するために、誰に対してどのような情報をどのチャネルを使って届けるか、というコンテンツマーケティングのシナリオを企画し、どのようにコンテンツ制作を進めていくかを計画します。

自社にとって最も重要な顧客セグメントは誰かを明確にし、そのターゲット層を軸に必要となるコンテンツ(オウンドメディアの記事、メール配信用、SNS投稿用、ダウンロード資料など)を洗い出し、投資対効果の高いものから取り組んでいきましょう。

それでも自社内製でコンテンツ制作を行うことが難しい場合は、部分的に制作会社やWebマーケティング企業に外注する方法も視野に入れなくてはなりません。ただし、その場合もコンテンツの内容やクォリティコントロールは、自社でしっかりと管理する必要があります。

ステップ5. 配信シナリオの設計・実施

見込み顧客のセグメントごと、もしくは特定のアクションを取ったリードごとに、コンテンツ(情報)の配信シナリオを設定し、企画した戦略をMAツールに組み込んで実行します。

マーケティングオートメーションに活用するシナリオ設計では、主に以下4つの要素を明確に定めます。

  1. 誰に:ターゲット
  2. いつ:配信のタイミング・スケジュール
  3. 何を:コンテンツ内容
  4. どのように:チャネル

たとえば、「同じ商品ページを2回閲覧している匿名リードには、次回サイト訪問時に割引のポップアップを表示する」といったことです。この一例のほかにもさまざまな4要素の組み合わせが生まれ、十分に検討を重ねて策定していく必要があります。

コンテンツごと、顧客ステージごとなど、どこから手をつけるべきか困惑することもあるでしょう。以下の基本的なシナリオ設計の手順を参考にしてみてください。

  1. 見込み顧客のタッチポイントや属性別にペルソナを作成
  2. カスタマージャーニーマップで、ペルソナがどういうプロセスを経て自社の商品・サービスを購入するのかを整理
  3. 見込み顧客がカスタマージャーニーのどの段階にいるかを見極め、段階ごとに配信シナリオを組む。

※カスタマージャーニーマップとは、見込み顧客が最終的に購買するまでの行動や心理の流れを旅に見立てて表現したものです。

シナリオは一度作って終わりではありません。ここからのマーケティングオートメーションの運用は、この「シナリオ設計・実施」と「効果測定」を繰り返すことで、マーケティング施策を最適化していきます。

ステップ6. 実行後の効果測定と分析・PDCAサイクルの運営

施策の実行後は、メール開封率、メール内URLのクリック率、新規リード獲得数などを指標として効果を測定・分析し、改善すべきポイントを次のシナリオ設計にフィードバックします。

なぜその施策が成果に繋がったのか、特にどの指標に影響したか、どの施策がより高い成果を生み出せたかを分析し、PDCAサイクルを回して運用改善していきましょう。

MAツールの導入・運用を成功させるポイント

MAツールは、ただ導入すればすぐに効果が得られるものでもなければ、自動化による業務効率の改善が見込めるものでもありません。以下の注意点を押さえて導入計画を進めましょう。

1. 自社の課題やマーケティング成熟度に合ったMAツールを選ぶ

MAツールの導入を検討しているのであれば、まず自社のマーケティング成熟度、リソース、構築しうる体制を考慮した上で、現実的に運用可能なツールを選ぶことが大切です。

国内外で提供されている数あまたのMAツールは、機能が充実すればするほど、細かい施策を設計・実行することができ、マーケティング活動において実現できることが多くなりますが、その分、導入時の初期設定が複雑になり、運用にもマーケティングやMAツールに関する高いリテラシーが必要になります。

導入時には、自社の課題やシステム化の目的に適したMAツール群から、マーケティング部門や営業部門全体のリテラシーやITスキルで使いこなせるものを選びましょう。

もともとマーケティング先進国アメリカで開発されたMAツールは、マーケティングの知識や経験が豊富な営業組織向けに設計されており、リードナーチャリング機能に重点を置いたツールが多く、リードジェネレーション機能(集客機能)が簡易に済まされていることがあるため、その点にも注意が必要です。

WebマーケティングのノウハウやITツールのスキルを持つ人材が社内に少ない場合は、サポート体制やコンサルティングサービスの有無も確認し、運用しながら担当者のスキルを育て、全体のマーケティング成熟度を底上げしていくことも検討しましょう。

当サイト掲載の全30サービスのMAツールの一覧やランキング、評価・利用レビューは以下の選定ガイドをご覧ください。選び方や比較基準についても解説しています。

2. Webマーケティングのノウハウを持つ人材の確保・教育が必要

MAツールは、一連のマーケティング活動を効率化するための道具にすぎず、マーケティング戦略を考案してくれるわけではありません。「このステージの見込み顧客層が、ある特定のアクションを取ったら、このコンテンツをメールで配信する」といったような、決まったルールを自動処理してくれるだけで、そのテンプレートを設計するのは担当者です。

Webマーケティングの知識を補填する機能はないため、コンテンツマーケティング、SEO、SNSマーケティング、メールマーケティングなどのノウハウや経験が全く無い担当者には、使いこなせない場合があります。

多機能・高性能になればなるほど、Webマーケティングの広い知識が必要になるため、マーケティングオートメーションの運用開始時点で、まだ自社のマーケティングレベルが低い場合は、メール配信機能やシナリオ作成機能をできるだけ簡単に実行でき、かつ自社のマーケティングの成熟度に合わせて拡張性のあるツールを選定しましょう。

学習・教育の時間を確保できれば、実際にツールを使いながらWebマーケティングを習熟していくことは可能です。また、自社にマーケティングのノウハウが蓄積するまでは、アドバイザーやコンサルタントを依頼するという方法もあります。

MAツールのベンダーによっては、導入した顧客向けにマーケティングセミナーを提供してくれる場合もあるので、現状、自社の担当者だけでは対応が難しい場合は、こちらもツールの選定基準の1つとして検討してみてください。

3. 費用対効果が出るまでに一定期間の試行錯誤が必要

MAツールで実行した施策の効果が現れるのは、早くても半年、長い場合には1年以上を要し、またそれが期待通りの効果ではないこともあります。

マーケティング施策の検証と改善を何度も繰り返すことで、見込み顧客の育成や商談案件化のシナリオが最適化されていくため、マーケティングオートメーションの導入は、持続的に成果を出せる営業組織を新しく構築していくための先行投資とも言えるでしょう。

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