マーケティングオートメーション(MA)のKPIとは?設定方法と運用のポイントを解説

マーケティングオートメーション(MA)の導入に当たり、どのようにKPIを設定すればよいのでしょうか。KPIは、最終的なゴールとなるKGIに基づいて決定する必要があります。本記事ではKPIの具体的な設定方法を解説します。目標数値の妥当性を検討するのに役立つSMARTモデルを参考に、精度の高いKPIを設定しましょう。

banner

マーケティングにおけるKPIとKGIとは

まずはマーケティング活動において重要なKPIとKGIについて確認しておきましょう。KPIとはKey Performance Indicatorsの頭文字をとった言葉で、日本語では重要経営指標や重要業績指標と訳されます。簡単に言えば「最終的な目標達成に向けた中間地点」となる目標であり、複数のKPIが設定されることもあります。

一方のKGIはKey Goal Indicatorsの頭文字で、日本語では重要目標達成指標と呼びます。KGIはKPIの上位概念に位置付けられ、「KPIを達成した先にある最終的なゴール」を指すものです。

たとえば、「ECサイトの売上を増やす」という大目標がKGIだとすると、それに向けて「今月までに受注件数を10%増やす」といった、より詳細な目標がKPIに当たります。

KGIだけを定めても、そこに至るまでの方法は一つとは限らないため、チームの足並みはそろいません。そこで、詳細なKPIを設けることでチームの方向性を統一できます。やるべきことが明確になり、より迅速かつ効率的に最終目標へ到達可能な体制が整うでしょう。

マーケティングオートメーションにKPIが欠かせない理由

マーケティングオートメーション(MA)とは、その名の通り「マーケティング活動の自動化」を目的とするツールです。そしてこのMA運用を成功させるうえで、KPIの設定が不可欠です。その理由を詳しく解説していきます。

1. 目標達成までのプロセスをわかりやすくする

KPIは、マーケティング活動におけるゴール(KGI)を「どのようなプロセスで実現していくかを明確化するために設定するもの」です。KPIを適宜定めることで、個々の従業員が日常業務として何を行動すべきかを決定できます。

2. 施策の効果検証を行える

マーケティング部門や営業部門が施策を行えば、少なからず予算もかかります。そのため、たとえば施策としてツールを導入した後には、「コストに対する効果」を検証し、売上への貢献度を示す必要があります。

KPIを具体的に定めておけば、複数の施策を同時進行していても「どの施策が成功要因として機能しているのか」が明確になり、一つひとつの施策を改善して、効果を最大化していくことができます。

KPIを定めていない状態では、KGIの達成に近づいたとしてもどの活動が売上に貢献しているのかがわからず、施策の有効性を正しく判断することができません。そのため、過去の成果を再現することが難しく、KGIの達成までに無駄な時間や労力をかけることになります。

3. チーム内・部門間での意識を共有できる

KPIを定義しておけば、KGIの達成に向けて異なるチームや部門とも目的意識を共有できます。企業としてのKGIは同じでも、各部門はそれぞれのKPIをたどりながら各役割を果たすことで、KGI実現に貢献しています。

たとえば「売上高アップ」や「組織の生産性向上」などを企業全体のKGIとして設定したとしましょう。この実現に向けて、セールス部門では「商談化数・受注率・LTV・新規顧客獲得数」などを代表的KPIとしますが、マーケティング部門では「CPA・CAC・Webサイト訪問ユーザー数・CVR・資料ダウンロード数」などをKPIとするでしょう。このように、各部門が別のKPIをたどりながら、同一のKGI実現に向けて尽力しているのです。

このように各部門で異なるKPIを明確にして全社で認識を合わせておくと、目標意識やチームの方向性を統一することができます。そのためにはマーケティングや営業(インサイドセールス・フィールドセールス)、カスタマーサクセスなど、部門を横断して顧客データのやり取りを行い、互いの活動状況を共有して運用することが大切です。

反対にKPIが明文化されていないと、各部門で「何をもって成果とみなしているか」という判断基準が明確に共有しづらくなるため、部門間で亀裂や不信感が生まれやすくなります。

マーケティングオートメーションにおけるKPIの設定方法

KGIの実現に向けて、どのような方法を用いれば適切なKPIが導き出せるでしょうか。代表的なフレームワークを基にその具体的な手順を見ていきます。

  1. KGIの設定
  2. KFSの設定
  3. KPIの設定
  4. KPIの妥当性を確認

ステップ1. KGIの設定

はじめに、KPIの先にある最終的な目標数値としてKGIを設定します。KGIは従業員に自社の戦略を示す役割があるため、「顧客満足度の向上」といった曖昧なものではなく、「半年後のECサイトの月間訪問客数を2倍にする」など定量的で明確な成果目標を設定しましょう。

また、あまり現実離れした高い目標を定めてしまうと従業員のモチベーションを低下させるため、実現できる程度にしておくことも大切です。

なおKGIを設定する際は、SMARTモデルという目標設定のための法則を活用するとよいでしょう。SMARTとは、

  • Specific(具体的である)
  • Measurable(測定可能である)
  • Achievable(達成可能である)
  • Relevant(関連性がある)
  • Time-bound(期限を定めた)

という5要素の頭文字を取った言葉です。この法則にしたがって目標とする数値を照合すると、精度の高い目標設定が可能になります。

ステップ2. KFSの設定

KFSとはKey Factor for Successの略語で、日本語では「重要成功要因」と訳されます。これは成功への鍵を握る要因を指しています。「KGI達成までの進捗度合いを測る指標」であるKPIとは、似ているようでまったく異なる概念です。

KFSは「KGIとKPIをつなぐ役割」を担っており、KGI達成に影響する要因をKFSとして導き出すことで、自然とKPIが決まってきます。

たとえば過去に「製品価格を下げたことで、市場シェアを伸ばした」という事例があるとします。この例で考えると、「今年度の市場シェアを前年比で10%伸ばす」というKGIに対して「低価格化」がKFSにあたり、それを基に決定した「価格を3%下げる」といった数値目標がKPIであると理解できます。なお通常は、一つのKGIに対して複数のKFSが設定されます。

ステップ3. KPIの設定

KPIは、KGIとKFSがしっかりと定義できた後で設定します。KGIと同様に定量的な数値にすることが重要で、一つのKFSに対して複数のKPIが設定されることもあります。

ステップ4. KPIの妥当性を確認

最後にKPIの妥当性を確認します。前述したSMARTの法則は、KPIを検討するうえでも有効であるため、従業員に目標設定を任せる際には5つの要素を書いたシートなどを活用するとよいでしょう。特に特定のKPIについて、「Relevant=関連性」があるかどうかを判断する際は、「KGIとの整合性が取れているかどうか」を確認してください。

実現可能なレベルの適切なKPIを設定することで、チームや企業全体で「これから取り組むべきこと」を明確なイメージとして共有できます。各メンバーや各部門は、確たる共通の目標を目指して、それぞれのタスクに取り組めるようになるため、自然とモチベーションやパフォーマンスが上がっていくでしょう。

マーケティングオートメーションの運用とKPI設計のポイント

  1. KPI測定とPDCAはすばやく何度も行う
  2. KPIの追跡には製品選びも重要

1. KPI測定とPDCAはすばやく何度も行う

一つめはKPI測定とPDCAの回転をできるだけ速く、そして複数回に渡って行うことです。KPIは、「早期に課題を発見して改善を繰り返すための指標」でもあります。未達成のKPIがあるなら、その達成に向けてボトルネックを発見したり改善策を立案したりしましょう。

逆にKPI自体の再設定が必要なこともあります。見込み顧客の関心や市場の情勢は常に変化していくため、導入時に定めた施策が時勢に適わないものになっている可能性もあるからです。

未達成KPI改善策の立案について、あまりにもPDCAに時間がかかる場合は、該当KPIをさらに細分化することも検討してみてください。

2. KPIの追跡には製品選びも重要

KPIを計測するにはツール選びも重要です。「自社で設定しているKPIを追跡する機能が備わっているか」「目的とするデータの可視化や共有がスムーズに行えるか」を判断基準としましょう。

KPIは期末などのタイミングで振り返る最終的な指標ではなく、中間的な指標であるため、「施策が計画通りに進んでいるのか」を定期的に確認する必要があります。そのため、指標のリアルタイム測定が可能で、かつ「着地レポートの作成機能」や「現状をビジュアル化して提示するダッシュボード機能」なども搭載された製品を選ぶことをおすすめします。

まとめ

KPIは最終的な数値目標であるKGIの達成に向けた中間目標です。MAを導入し、適切なKPIを設定することで実現したい大きなゴールに辿り着くまでの具体的なプロセスが明確になり、さらに施策の効果を検証できます。

カテゴリ: