CRMツールは、企業の顧客管理や営業活動を効率化し、売上や顧客満足度の向上に貢献するツールです。適切なCRMツールを選ぶことで、業務の効率化やデータ分析による戦略的な意思決定が可能になります。本記事では、2024年に注目すべきおすすめのCRMツールを厳選。企業規模やニーズに応じた最適なCRMツールの選び方を解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
CRMツールの比較で押さえておくべき5つの機能
まずは、CRMツールを比較する際に欠かせないポイントを「機能」の観点からチェックしましょう。
「CRMツール」はその機能を一言で定義するのが難しく、搭載機能のカバー範囲や注力分野もベンダーによってまちまちです。
CRMツールを選定する際の参考になるよう、ここでは、CRMツールに搭載される代表的な機能を活用法とともに解説します。
- 顧客データ管理
- 顧客データ分析
- メール配信機能
- 問い合わせ管理機能
- 営業支援機能(SFA)
1. 顧客データ管理
CRMツールにおける基本機能である顧客管理は、顧客に関する情報をツール上に集約して一元的に管理する機能です。
項目をカスタマイズして、以下のようなさまざまなデータを顧客IDに紐付けて登録することができます。項目ごとのソートや検索も容易にでき、顧客データに属性を付与してグループ分けをすることも可能です。
- 名刺情報(企業名、部署、役職、氏名、連絡先など)
- 購買情報(購入商品・購入日・金額など)
- 接触履歴(日時、営業担当者、提案・商談内容など)
- 自社サイト上の行動データ(訪問回数、閲覧ページ、滞在時間)
- 社内・業界内の人脈情報
当然ながら、顧客情報は蓄積するだけでなく、いかに活用するかが重要です。社内に散在する顧客情報をまとめたいのか、顧客のニーズや受注に至るまでの行動傾向などを把握して成約率を高めたいのか、顧客満足度を高めて良好な関係を長く継続するのかなど、一口に顧客管理と言っても、その目的によって、どういった項目を収集し、管理・分析を行うのかが異なってきます。
2. 顧客データ分析
顧客分析とは、収集した顧客データをもとに、顧客ごとの購買傾向や行動傾向などを分析する機能です。代表的な分析手法として下記が挙げられます。
- セグメンテーション分析:年齢や性別・居住地・行動パターンなどの属性で、顧客をグルーピングする手法。購入確度の高い層を抽出し、ターゲティング戦略を最適化する。
- RFM分析:「直近購入日」「頻度」「購入金額」をそれぞれ3段階に分け、顧客を27にランク付けする手法。ランクに応じたアプローチを選んで注力し、売上の拡大と費用対効果の向上を図る。
- デシル分析:購買データから顧客を購入金額の高い順に10等分して、グループ分けを行う手法です。各グループの購買傾向を把握し、購入意欲の高い顧客への優先的アプローチといった費用対効果の高い施策を策定する。
- CTB分析:「カテゴリ」「テイスト」「ブランド」の観点で顧客をグループ分けして、次回の購買行動を予測する手法。細分化された顧客の趣味・嗜好を把握し、それぞれの顧客に合ったアプローチを行う。
CRMツールでは、分析データがグラフやチャートでわかりやすく可視化され、ホットリードの抽出やリスト作成、レポーティングなどが自動で行えます。経営者やマネージャー層は、勘や経験だけに頼らない、リアルタイムの分析データに基づく意思決定を下すことが可能です。
この顧客分析が正確であるほど、優良顧客の育成に最適な施策を打てるようになり、効果の高い営業・マーケティング活動にリソースを投下することができます。
3. メール配信
メール配信機能は、顧客ごとに、または属性やステータスなどに応じてセグメントごとに、あらかじめ設定したメールを自動配信できる機能です。メルマガやキャンペーン情報の一斉通知、購買履歴を元にしたフォローアップなども自動化できます。
スケジュールに沿って段階的に配信するステップメール、顧客の行動に応じて配信するトリガーメールなども設定可能です。また、メールの到達率や開封率、配信停止率などのデータを集計し、施策の効果検証も行えます。
配信スケジュールやセグメントの設定、取得できるデータなどはツールによって異なりますが、こうした機能を駆使してメールマーケティングの精度を高めていくことが可能です。
4. 問い合わせ管理
カスタマーサポートにフォーカスしたCRMツールでは、成約した顧客からの質問やクレームに対応するための機能がパッケージングされています。
問い合わせ管理もそのうちの一つであり、顧客から届いた問い合わせを記録・管理する機能です。顧客情報のほか、顧客とのやり取りに関する履歴データを蓄積でき、部門内でデータを共有できます。
顧客がどのような話をしていたか、オペレーターがどう対応したかなど、過去の対応履歴が共有されるため、サービスレベルの向上につながります。また、オペレーターの業務処理状況を確認する機能なども備わっています。
5. 営業支援機能(SFA)
営業活動の効率化に重きを置くCRMツールには、営業支援(SFA)の機能が多くパッケージングされています。
- 商談管理:現在、誰がどの案件の商談を行っているかを一目で把握できる。担当者、商品、訪問日、接触回数、商談内容などが記録される。
- 案件管理:案件ごとに、営業担当者、客先担当者、商品、代理店、見積金額など、必要な情報を紐づけて管理・閲覧することができる。
- 売上管理:顧客別や売上担当者別、訪問回数別など、さまざまな切り口で売上推移を管理することができる。
- 請求書作成・見積書作成ツール連携:請求書・見積書作成ツールと連携し、案件情報から必要情報が自動反映され見積書・請求書が即時に発行できる。
CRMとSFAは別物と捉えられることもあり、必ずしもCRMツールにSFAの関連機能が搭載されているとは限りません。しかし、SFA(営業支援)は、顧客データ管理に基づいて顧客との関係構築をするCRMの概念を実現する手段であると考えると、SFA機能がCRMツールと親和性が高いことも納得できます。
営業活動の効率化やマネジメント強化を目的とした特化型SFAツールの同機能に比べると、劣る部分もありますが、「営業活動のサポートもできるCRMツール」と捉えれば大きな強みと言えるでしょう。
CRMツールのおすすめは?企業規模別にピックアップ!
導入する企業の規模によって、必要とするCRMの機能は異なります。たとえば、小規模企業はシンプルで使いやすいツールを求める一方、大企業は複雑な機能や高いカスタマイズ性を必要とすることがあります。
以下では、企業規模ごとにおすすめのCRMツールをピックアップしてご紹介します。
小規模企業向け
Zoho CRM
Zoho CRMは、ゾーホージャパン株式会社が提供する低コストで使いやすいCRMツールです。特に小規模企業に適しており、直感的なインターフェースが特徴。無料プランでも基本的なCRM機能が利用可能で、顧客情報の管理、営業活動の追跡、リードの育成などに対応しています。また、商談履歴や提案書、契約書などの関連情報を一元管理することで、営業プロセスの効率化に寄与します。
サスケLead
サスケLeadは株式会社インターパークが提供するリードナーチャリング専用のCRMツールで、1,000社以上の導入実績があります。オンラインおよびオフラインのデータをすべて一元管理し、顧客情報の統合が可能です。
また、WebトラッキングデータやWeb入力フォームからのデータを自動的に取り込み、効率的なリード管理を実現します。リードの育成に特化しているため、小規模企業にとって効果的な顧客関係管理が可能です。
中規模企業向け
楽テル
楽テルは、株式会社ラクスが提供する中規模企業向けのCRMツールです。問い合わせ対応やアウトバウンド営業活動に対応したテンプレートが標準で搭載されており、迅速な導入が可能です。また、システムは利用しながらのカスタマイズが可能で、シンプルで使いやすい管理画面により、初めてのユーザーでも簡単に操作できます。これにより、問い合わせ対応の効率化や営業活動の最適化が実現します。
大規模企業向け
CRMate
CRMateは、富士通株式会社が提供する大規模企業向けのCRMツールです。キーワードや日付などで詳細な絞り込みが可能な検索機能を備えており、大量のデータから必要な情報を迅速に見つけ出せます。商談の計画と報告を共有し、顧客に対して組織的なフォローを行うことができるため、営業活動の効率化にも寄与。
セルフサポート機能やCTI(コンピュータと電話の統合)との連携により、利便性の高い顧客対応が可能です。
Visionary
Visionaryは、株式会社フュートレックが提供する大規模企業向けのCRMツールです。必要な機能のみを選定し、独自のカスタマイズが可能で、大規模企業の複雑なニーズに対応します。顧客情報や購買情報、施策結果を一元管理し、正確なデータ分析が可能です。
また、クーポンの発行やポイント管理機能を活用し、顧客サービスを効率的に行うことができます。大規模企業における顧客関係管理の最適化を実現するツールです。
CRMツールの選び方・比較のポイント
CRMツールの導入検討を行う際には、まず自社の現状課題を整理し、CRMツールの導入によって何をどのように解決したいのかをあらかじめ明確にしておく必要があります。
選定軸として大切なのは「自社課題の解消や導入目的を実現できる製品であるかどうか」です。具体的には、以下の4つのポイントを押さえて比較検討を進めていきましょう。
- 自社の目的に合った機能が搭載されているか
- 取得できる顧客情報・データは適切か
- 操作性に優れているか・現場がストレスなく利用できるか
- 価格に妥当性はあるか
- 導入サポートやトラブル対応をしてもらえるか
1. 自社の目的に合った機能が搭載されているか
まずは自社が達成したい目的や解決したい課題を洗い出し、それに合ったCRMツールを選びましょう。
たとえば、「顧客管理が各個人に任せきり、かつ使用ツールも紙やExcelであり、テレアポの進捗が見えず、拠点ごとに成果にばらつきが発生してしまう」という課題の解決が目的であれば、「案件管理」や「売上管理」などのSFA機能を搭載したCRMツールが最適です。アウトバウンドに注力しているのであれば、テレアポに特化したCTI機能を搭載したCRMツールを選ぶことをおすすめします。
使わない機能が搭載されていたり、使いこなせなかったりすると、その分のコストが無駄になってしまいます。あらかじめ目的を明確にし、それに合った機能を搭載したものを選びましょう。
2. 取得できる顧客情報・データは適切か
冒頭でも紹介したとおり、CRMツールで取得できる顧客情報やデータ項目は製品によってさまざまです。
- 顧客の個人情報(企業名、部署、役職、氏名、連絡先など)
- 社内・業界内の人脈情報
- Webサイトの価格ページを閲覧した商品
- セミナー・イベントへの出席回数
- 顧客満足度・アンケート結果
- 問合せやクレームの内容
取得すべき情報は、顧客の基本情報や商談履歴の管理・共有ができればいいのか、データをBIツールやERPなどに抽出して分析を行いたいのか、CRMツールの導入目的によって異なります。
あれもこれもと収集するデータを闇雲に増やしていきがちですが、本当に必要なデータを取捨選択しないと、無駄な入力作業が発生し管理も煩雑になります。その反対に、取得データの欠損によって、本来実施したい分析ができなかった、精度が落ちてしまったなどの問題は避けたいものです。
3. 操作性に優れているか・現場がストレスなく利用できるか
CRMツールは、顧客情報と接点を持つ現場の営業が毎日利用するものです。特に、見やすさ・使いやすさといった操作性は入念にチェックし、運用責任者や部門マネージャーの視点だけで製品選定を行わないよう注意しましょう。
せっかく優れた機能を持つCRMツールを導入しても、適切に使えなければ真価を発揮できず、業務効率化にも繋がりません。デモ版やトライアル期間が設けられていることが多いため、積極的に活用して実際の使い勝手を確かめておくことをおすすめします。
また、営業活動支援ツールとして積極的に活用したいのであれば、スマホアプリの使用感も忘れずチェックしておきましょう。PC版とアプリ版で使用できる機能が異なる場合もあるので注意です。
4. 価格に妥当性はあるか
CRMツールの運用はすぐに効果が表れないのが特長です。そのため、検討の段階で価格に見合う効果を発揮するツールなのかをある程度把握しなければなりません。
CRMツールの料金体系は「月額料金」「ユーザー一人当たりの従量課金」「機能追加課金」「初期費用」のかけ合わせ、またはそれらがパッケージ化したものが一般的です。
予想外の費用が発生しないよう、利用人数上限は何人なのか、自社に必要な機能を利用するにはいくらかかるのか、どのタイミングで追加料金が発生するのかなどを担当者に詳しく聞いておきましょう。
5. 導入サポートやトラブル対応をしてもらえるか
CRMツールの導入時には、他の業務システムとの連携やユーザーの権限設定、そのほか初期設定が必要になります。また運用し始めると「機能の使い方がわからない」「ログインできなくなった」などのトラブルが発生することもあるでしょう。
そういった時のために、導入時に初期設定や使い方のレクチャーはしてもらえるか、それらは無償か有償かなど、製品のサポート体制を比較しておくことが重要です。万が一、運用開始後に何らかの不具合・トラブルが発生した際の、問い合わせ方法やサポートの対応可能範囲についても、導入前に明確にしておきましょう。
CRM導入前に押さえたい!よくある疑問と回答
CRM導入前に抱える疑問についてQ&A形式で回答します。以下は、よくある質問とその回答です。
Q1: CRMとSFAの違いは何ですか?
A1: CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係を管理し、顧客満足度を向上させるためのツールです。一方、SFA(Sales Force Automation)は、営業活動の自動化に焦点を当てたツールです。CRMは広範囲にわたる顧客データを管理し、SFAは営業プロセスの効率化を目的としています。
Q2: クラウド型とオンプレミス型の違いは何ですか?
A2: クラウド型CRMは、インターネット経由で利用するため、初期費用が低く、導入が簡単です。一方、オンプレミス型CRMは、企業内のサーバーにインストールするため、カスタマイズ性が高く、セキュリティも自社で管理できます。選択肢は、企業のニーズや予算に応じて決定されます。
Q3: 無料CRMと有料CRMの違いは何ですか?
A3: 無料CRMは基本的な機能を提供しますが、高度な機能やサポートは制限されていることが多いです。有料CRMは、より多くの機能やカスタマイズ、専用サポートを提供するため、ビジネスの成長に合わせて柔軟に対応できます。
Q4: CRMの導入にかかる時間はどれくらいですか?
A4: 導入にかかる時間は、ツールの選択、データ移行、社員教育などの要因により異なります。一般的には、数週間から数ヶ月かかることが多いです。スムーズに進めるためには、事前の計画と準備が重要です。
Q5: 小規模企業でもCRMは必要ですか?
A5: はい、CRMは小規模企業にとっても非常に有益です。顧客管理を効率化し、営業活動をサポートすることで、競争力を高めることができます。また、コスパの良いCRMツールも多く提供されているため、導入コストを抑えながら効果を得ることができます。
自社に最適なCRMを見つけましょう!
企業規模やニーズに応じた最適なCRMツールの選び方、よくある疑問への回答をご紹介しました。自社に最適なCRMツールを選ぶためのチェックリストを活用して、ビジネスの成長を実現しましょう!
CRMツール選びのチェックリスト
- 自社の業務プロセスを把握した
- 必要な機能を明確にした
- 実際の使用者目線で使いやすさを確認した
- 他システムとの連携が可能か確認した
- 導入費用と運用コストを比較した
- サポート体制を確認した
- 柔軟にカスタマイズできるか確認した
- セキュリティ要件を満たしているか確認した
- 社員の教育プログラムを計画した
- 段階的な導入スケジュールを立てた
- データ移行の準備を整えた
- 参考に、ユーザーレビューや導入事例を確認した
- 試用期間がないか確認した
- 導入後のサポート体制について確認した