効果的なヒューマンエラー対策|エラーの種類とその対策方法

会社で起きるトラブルのひとつに「ヒューマンエラー」があります。ヒューマンエラーは人間が行うミスのことで、どうしても避けられないエラーといわれていますが、それでも最小限に抑えるに越したことはないので、未然に対策をとる必要があります。

 ヒューマンエラー対策を行う前に、エラーの種類やエラーが起こる原因を認知しておかなければ、原因に合った適切な対策を取ることができません。

本記事ではヒューマンエラーが発生する原因や防止するために有効なツールの活用法などを解説します。

エラーの種類を理解し、自社でヒューマンエラーが発生する原因を見つけ、業務改善への対策を始めましょう。

ヒューマンエラーとは

ヒューマンエラーとは、人為的なミスのことを意味します。機械の誤作動やパソコンのエラーといった原因ではなく、電話番号のかけ間違いや書類の書き間違いなど、人の手による過失で生じたトラブルがヒューマンエラーです。

人間は、外部情報と記憶情報との間に差があり、小さな思い違いが発生したときにミスを起こしやすいとの研究結果も出ています。どんな事柄でも間違った認識などから人間はミスをする可能性があるため、ヒューマンエラーの発生は当然であり、いかにそれを減らしていくかという考えが大切です。

ヒューマンエラーの発生を避けるためには、業務を可視化するマニュアルを作成したり、ヒューマンエラーを起こしにくい、またはエラーが起きてもすぐフォローできる環境を作ったりするといった対応をする必要があります。

ヒューマンエラーの種類

ヒューマンエラーには、単純なミスで起きてしまう「うっかり型」と手を抜いたりルールを守らなかったりしたために起きる「あえて型」の2種類があります。

人間は、目で見たり耳で聞いたりしたことを記憶に関連させ、判断して実行に移します。人間の記憶、認知、判断、行動といった機能は全てが関係してつながっているので、どこか一箇所にでも問題が起きてしまうとヒューマンエラーが発生するため、注意が必要です。

うっかり型

うっかり型のヒューマンエラーはさらに下記4つに分類されます。

  • 記憶エラー
  • 認知エラー
  • 判断エラー
  • 行動エラー

記憶エラー

記憶エラーは、業務を覚えられない、思い出せない、記憶できていないなど、記憶関係の問題が原因で発生するヒューマンエラーです。

作業が終わっていない書類を終わったものと間違って提出したり、上司の許可が必要な業務を無許可で行ったりなど、知識不足や経験不足などのためにエラーが発生します。業務への理解が足りないため、大きなトラブルになることもあります。

認知エラー

認知エラーには、業務内容の説明を見逃したり聞き逃したりしてしまうケースや、見間違えや聞き間違いといった認識違いのケースなどがあります。取引先への訪問時間を勘違いしていた、連絡内容を誤って記憶していたといったものが、認知エラーに当てはまります。

判断エラー

現在の状況から次にどのような行動をとるか決定する際のミスは、判断エラーに分類されます。複数人での連携が必要な業務では、連携不足や連絡ミスなどにより「コミュニケーションエラー」が生じます。

未成年のお客様からアルコールの注文を受けてしまった、アレルギー対応の注文だったにもかかわらず伝達ミスで注文とは異なる料理を出してしまったなどのトラブルが判断エラーです。

行動エラー

作業の指示が適切で、本人も正しく認識できているにもかかわらず、業務に取りかかる際に手順を間違えてしまったり、作業の方法を取り違えたりするケースが行動エラーです。

受けた電話を違う人に取り次いでしまった、内容を間違えて入力してしまったといった単純なミスや、他のトラブルでパニック状態になってミスを犯してしまうといったことが挙げられます。

あえて型

あえて型は、決められたルールを守らずに作業を行った場合や、横着して手抜きをしたためにエラーが生じたケースです。慣れた作業に慢心してしまい、ある程度手順を変えても問題ないと判断して作業を意図的に変更した場合や、業務を早く終わらせるため作業を省略して行った場合などに発生します。

ヒューマンエラーの原因

ヒューマンエラーは、主に下記の5つが原因で発生します。

  • 見落とし
  • 先入観
  • 習慣
  • 注意力の低下
  • 手抜き

業務の確認時に見つけられなかったポイントがあったり、作業の流れを勘違いしていたりするとヒューマンエラーにつながります。

見落とし

初めて行う業務や慣れない業務で起きやすいのが、見落としによるエラーです。間違えて注文を受けてしまったり、作業工程を把握できていなかったりしたために発生したヒューマンエラーは、見落としが原因と考えられます。

先入観

通常時に担当しているものとは異なる作業を行うときや、複雑な作業を行っているときなどに起きやすいのが、先入観によるエラーです。作業の詳細をよく確認せずに、思い込みで業務を実行した場合に先入観のエラーが発生する確率が高まります。書類の提出期限を勘違いしていた場合など、勘違いによるミスの発生もあるため、確認作業の徹底が欠かせません。

習慣

業務に慣れた頃やベテランの社員でも、ヒューマンエラーは発生しやすいので注意が必要です。普段から慣れている業務を行うときには緊張感がなくなりやすいため、思いがけず普段しないようなミスをしてしまうことがあります。

注意力の低下

単調な作業を長時間行っているとき、疲労が蓄積しているときなどには、注意力が低下してエラーが発生しやすくなります。単純な定型作業を続けていると注意が散漫になりやすいため、作業ミスが増加します。

また、疲労などにより体調が万全でない場合には、体が思うように動かなくなり作業にも集中できなくなってしまうため、ミスが発生しないよう注意が必要です。

手抜き

手抜きは、「あえて型」のヒューマンエラーです。業務を楽に行いたい、面倒だから省略して早く仕事を終わらせたいといった理由から、社員が意図的に指定されている作業手順を抜かしたときなどにヒューマンエラーが発生します。

また、業務が属人化している場合や正しい作業手順が現場で守られていない場合にも、手抜きによるミスが発生する確率が高まります。作業に関するルールや規定等を設定して、組織的に対策することが大切です。

ヒューマンエラーの対策

ヒューマンエラーは、以下4つの対策でリスクを低減できます。

  • マニュアル作成
  • チェック体制強化
  • 研修実施
  • ツールの活用

複雑な作業や単調な作業の連続などが原因で発生するエラーは、ツールを活用し業務を効率化することで、エラーの原因となる作業自体を減らすことが可能です。

また、作業に対する認知のズレをなくすためのマニュアル作成も、ヒューマンエラー対策に活用できます。改めて研修を取り入れることでヒューマンエラーに対する注意喚起を行うこともおすすめです。

マニュアル作成

ヒューマンエラーを防ぐ対策として、まず挙げられるのはマニュアルの作成です。マニュアルを作成して、注意が必要な作業や対策を社員に周知することにより、問題の発生を防ぐことが可能です。チェックリストを作成すれば、作業手順の漏れも防げます。

マニュアルを作成する際は、まず過去に発生したヒューマンエラーを調べてその原因を分析します。そして、エラーの発生する状況や傾向を把握してから具体的に対策を検討し、具体的な事例やその対策などが明記された作業マニュアルを作成します。

マニュアル作成に手間がかかり過ぎて業務負担を増やさないようにするためには、効率よくマニュアルを作成できるツールの使用がおすすめです。自社の作業手順を確認して構成案を作り、担当者ごとにタスク分けしていくと完成します。

チェック体制強化

業務のやり残しや作業の漏れなどのヒューマンエラーを防ぐためには、チェック作業の見直しが効果的です。チェック項目の内容を改善するなど、チェック作業のワークフローを整備することでやり残しをなくしましょう。本人以外の目でも確認するダブルチェック体制を設けると、より確実に防止できます。

研修実施

社員のヒューマンエラー防止には、外部研修などの対策も役立ちます。研修によって社員一人ひとりがヒューマンエラーの生じるメカニズムや原因、対策方法を理解することができます。研修では詳しい知識を身につけられるため、社員のヒューマンエラーに対する意識改革も可能です。

ツールの活用

ツールを活用すると、エラーの起きやすい作業を削減したり、チェック漏れしやすい作業を自動で確認してくれたりと、さまざまなエラー対策が行えます。パソコンを使用した単純な作業が多い企業や社内で情報共有システムの導入を検討している企業には、ツールの活用がおすすめです。

RPAツールやワークフローシステム、プロジェクト管理ツールなどを導入すれば、ヒューマンエラー対策とともに業務の効率化にもつながり、両方のメリットが得られます。

RPA

RPAは、「仮想知的労働者(デジタルレイバー)」とも呼ばれ、単調な作業をロボットが自動化し実行してくれるツールです。RPAの導入により、毎日行っている定型的な入力業務や大量データのコピー&ペースト、一斉メールの送信など単調な作業をロボットに任せられます。

これまで人が手作業で行ってきた業務をロボットによって自動化することで、ヒューマンエラーの削減につながります。ロボットは24時間働いても疲れることがなく、注意力の低下や手抜きによるエラーが発生しません。そして、ロボットの費用は中長期的に見れば人件費よりも安く抑えられるので、コスト削減にもつながります。

ワークフローシステム

ワークフローシステムは、業務の手順を一連の流れにまとめた「ワークフロー」をサポートするツールです。稟議書の決裁機能が利用できるツールでは、承認や決裁に関する作業を簡略化でき、複雑な作業を行うときに生じやすいヒューマンエラーが起きにくくなります。

従来では、人事・総務関連の交通費精算や有給申請などで紙の書類を使用するケースがほとんどでしたが、ワークフローシステムを活用すると、書類があちこちへ提出されるときに紛失したり、必要な期日までに決裁できなかったりなどのトラブルを防止できます。

パソコンやモバイル端末などから決裁が可能になり、スピーディに申請業務を完了できるなど、さまざまな面でヒューマンエラーの削減に役立ちます。

プロジェクト管理ツール

プロジェクト管理ツールは、プロジェクトの進捗管理、タスク管理などの処理を行うツールです。

プロジェクトチームメンバーのスケジュール管理や情報ファイルの共有などにも利用されます。メンバーとのコミュニケーションを円滑に行えるチャットツールなども備わっている場合が多いので、コミュニケーション不足による情報共有の不備や判断ミスなどのヒューマンエラーを防止できます。

また、プロジェクト管理ツールによって、メンバーそれぞれのタスクが「見える化」できるため、作業状態をお互いに確認・フォローし合える体制も実現できます。チェック不足でヒューマンエラーが起きているといったケースでは、他者からのチェックが受けられるプロジェクト管理ツールを導入することによって改善が可能です。

まとめ

ヒューマンエラーとは、パソコンや機械などが原因のエラーではなく、人のミスによって発生するエラーのことです。ヒューマンエラーは、人の記憶や認知、判断、行動などに問題が起きたときに発生します。

社員に業務経験がないときや思い違いをしたまま作業をしているとき、反対に業務に慣れて油断しているときなど、ヒューマンエラーはいつでも起きる可能性があるので、適切な対策を講じる必要があります。RPAツールやワークフローシステムといったツールを活用すると、ヒューマンエラーの削減だけでなく、業務の大幅な効率化にもつながります。

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