業務フローをどう見直すべきか、対策に悩む企業も少なくありません。新規プロジェクトの計画やワークフローの改善には、業務の全体像を分かりやすく可視化する「フローチャート」が有用です。
フローチャートとは、コンピューターアルゴリズムや業務プロセスなどを図形や記号を使用して表したものです。フローチャートを活用することで視覚的に業務フローを把握することができ、プロジェクト計画書やワークフローなどあらゆるものに応用可能です。
本記事では、フローチャートの作成法、役立つツールを紹介します。自社の目的に合うサービスを選定して、業務プロセス改善の取り組みを始めてください。
フローチャートとは
フローチャートとはコンピューターアルゴリズム、業務プロセス図式化したものです。フローチャートを活用すれば、複雑になりがちな業務プロセスの流れを誰もが明確に把握できるようになります。
シンプルな記号や図形を用いたフローチャートは、記述方法のルールが適用されています。そのため、ルールを知っている人であれば、図式を見ただけで直感的に業務の流れを理解できるのです。
フローチャートを作成するには、条件分岐の洗い出しが必要です。複雑化した業務の内容であっても、可視化を行えば必要な処理が明確化されます。条件分岐を用いて正確なフロー図を作成することにより、考慮漏れを予防できるというメリットもあります。
フローチャートの活用例
フローチャートの活用を検討しているのであれば、具体的な使用例を参考にするのがおすすめです。可視化の対象やどのように用いると効率化が望めるか、意識するべき点は複数存在します。自社の課題やニーズに合わせながら、具体的な活用シーンをイメージしてみてください。
新規プロジェクトの計画
フローチャートを利用して明確な視点を示すことにより、チーム全体がプロジェクトに集中して取り組める環境をつくり上げます。プロジェクトを効率的に進められるのはもちろん、細部まで可視化して提示すれば、異なる部門であっても作業プロセスの振り返りが実施できるようになります。
プロセスの文書化
業務の流れをパターン別に洗い出すワークフローの可視化は、無駄なプロセスを的確に把握し、プロセスのつながりを分かりやすくするのに適しています。各部門ごとの責任範囲が明確に示されるようになり、パターンによって変わる作業や手続きなどのルールを統一しておくことで、業務改善に取り組みやすい環境を生み出します。
意思決定
意思決定が必要になるポイントはどこなのか、誰が意思決定するのかが明示されていれば、複雑な承認フローもスムーズに把握できるようになり、迅速な意思決定が可能になります。
フローチャートの作成方法
引用:業務マニュアル作成のコツ:いきなり業務フロー図を描かない
フローチャートを適正に活用するには、定められたルールを守る必要があります。図式の書き方、使う記号の意味を正しく理解できていなければ、誰もが分かりやすいフローチャートは完成できません。
基本的なルールを覚えて、フローチャートを共有する誰もが活用しやすい図式を作成してください。
基本ルール
フローチャートは基本的なルールに則って作られています。守るべきルールは主に4つです。
- フローの開始と終了を決める
- プロセスの流れは必ず上から下へ、右から左へ配置する
- 複数の担当者が関係する業務は、担当者ごとに列を設ける
- 各プロセスに適した記号を使う
共通の決まりが存在することで、ルールを認識する全ての人が理解できる仕組みになっているのが特徴です。最低限のルールを正しく理解して、シンプルで分かりやすいフローチャート作りを目指してください。
フローの開始と終了を決める
どの業務からが開始となり、どういった状態になればゴールなのかを明確に提示します。フローチャートは、開始から終了までの間に必要な要素を組み込んで構築されていくものです。
プロセスの流れは必ず上から下へ、右から左へ配置する
フローチャートを共有する誰もが直感的に業務の流れを理解するために必要なルールです。業務の流れに沿って導線を記述することにより、プロセスの振り返りも容易に行えるようになります。
複数の担当者が関係する業務は、担当者ごとに列を設ける
複数の担当者が存在する場合でも、誰が何を担当しているのかが一目で理解できなくてはなりません。業務の流れを正しく追えるように、線が交差しない図を作成するのもルールのひとつです。
各プロセスに適した記号を使う
フローチャートで使用する記号は、日本工業規格(JIS)で定められたものです。記号によって違う意味を持つため、プロセスの内容を視覚的に素早く捉えることができます。
参照元:「JISマーク表示制度」|JISC 日本産業標準調査会
使用頻度の高い記号
引用:業務フローの書き方】業務フローを書く為に必要な図形(記号)とは?
簡単な業務であれば、使う記号の種類が少なくてもフローチャートの作成が可能です。可視化に有効な記号はルールに基づいて用いられるため、意味を理解して適切に使い分けなければなりません。フローチャートでは、設置した記号の内部にプロセスの内容をテキストで入力します。
使用頻度の高い記号は以下の通りです。
- 最初と最後
- 処理
- 判断
最初と最後
プロセスの「最初」と「最後」は長い楕円形で表し、フローチャートでは「端子」と呼ばれています。業務の開始するきっかけとゴールに到達した状態を分かりやすく記述してください。
処理
「処理」を意味する長方形は、フローチャートの作成に最もよく使われる記号です。作業や手続きといった処理を表す際に用います。
判断
YesまたはNoの「判断」が必要なポイントに適用されるのがひし形の記号です。判断の選択肢が3つ以上となるときには、複数の判断図形を使って詳細化します。
作成手順
フローチャートの作成手順は以下の通りです。
- フローチャートを作成する目的と範囲を決める
- 必要なプロセスをリストアップする
- リストアップしたプロセスを正しい順番に並び替える
- 記号と矢印を使いフローチャートを作る
- フローチャートの共有と運用開始
- フローチャートの改善
1.フローチャートを作成する目的と範囲を決める
フローチャートを作成する目的が曖昧だと、途中で内容がぶれてしまう可能性があります。業務を効率よく進めるためにも、フローチャートの完成後に追加や漏れが生じないよう入念にチェックしてください。あらかじめ集約する範囲設定についても明確にしておく必要があります。
2.必要なプロセスをリストアップする
処理の順序に関係なく、必要なプロセスを洗い出します。フローチャートに記述するプロセスに見落としがないよう、ヒアリングを行いながら慎重にリストアップを進めてください。
3.リストアップしたプロセスを正しい順番に並び替える
全てのプロセスをリストアップしたら、正しい順序に並べ替えます。担当者が複数存在するのであれば、見やすさに配慮して担当者ごとで列を分けるようにしてください。
4.記号と矢印を使いフローチャートを作る
並び替えが完了したら、記号や矢印を使ってフローチャート作成します。業務の開始として「端子」記号を描き、業務フローの内容に沿って必要な記号を追加していきます。
5.フローチャートの共有と運用開始
業務に携わるメンバーにファイルやPDFで完成したフローチャートを共有してください。フロー図を共有したメンバーは、自分が何をすればよいのかが明示されているかどうかを確認します。
6.フローチャートの改善
閲覧したメンバーからフィードバックをもらい、必要に応じて修正を加えます。適切な改善・更新を繰り返せば、フロー図のブラッシュアップが実現できるはずです。なお、プロセスや担当者に変更があった場合は、フローチャートの内容も速やかに修正してください。
フローチャート作成時に押さえるポイント
フローチャートを作成する際に押さえておくべきポイントは以下の3つです。
- テキストを少なくする
- 図形のサイズを均一にする
- 記号を増やしすぎない
意識すべきポイントをおさえて、見やすく精度の高いフローチャート作成すると、業務プロセスの生産性向上に結びつきます。業務ステップの整理と確認、俯瞰に役立つ可視化のメリットを得るためには、シンプルで分かりやすいデザインの採用も重要な要素です。
テキストを少なくする
一目で業務の流れを理解するには、テキストで入力する内容を簡略化する必要があります。詳細を理解してもらおうとテキストを詰め込んでしまえば、全体像の把握に時間を要してしまうため注意が必要です。
図形のサイズを均一にする
フローチャートで使う図形・記号のサイズを均一に揃えると見やすさが向上します。図形のサイズがバラバラだとビジュアルが悪いだけでなく、必要な情報が把握しづらくなります。
記号を増やしすぎない
可能な限り簡単な図式で表すと効果的です。利用する記号の種類や数を抑え、シンプルに集約したフローチャートほど業務の全体像や流れが理解しやすくなります。
フローチャートの作成に役立つツール
フローチャートの作成をサポートするツールには、さまざまな種類があります。ツールを選定する際は、それぞれの特徴に着目しながら自社のニーズを満たすサービスであるかどうかを見極めなくてはなりません。口コミや活用事例を参考に、目的に合うサービスを見つけください。
ワークフローシステム
申請書や契約書を電子化するだけではなく、ワークフローシステムを導入することでより業務の流れがスムーズになります。紙のコストや管理コストについても大幅に削減することが可能です。
Questetra BPM Suite
「Questetra BPM Suite」は、株式会社クラステトラが提供するサービスです。専用の工程アイコンをドラッグ&ドロップするだけで、素早く図式を作成できます。ワークフローの進捗状況・滞留状況も、グラフィカル表示で簡単に確認できます。
AgileWorks
株式会社エイトレッドの「AgileWorks」は、多くの組織を抱える大手企業の課題解決に役立つよう設計されているのが特徴です。複雑で高度な業務にも対応しており、専用アイコンを使った分かりやすいフロー図が作れます。シンプルなフロー図はもちろん、1つの申請に複数の担当者が関わる複雑なフロー図の作成に特化した機能も搭載されています。
ジョブカンワークフロー
「ジョブカンワークフロー」は、株式会社Donutsから提供されているツールです。申請・承認にかかる手間を大幅に削減するのに有用で、スマートフォンからの操作も可能です。クリック操作で簡単にフロー図が作成でき、さまざまな承認経路に柔軟に対応しています。承認経路の分岐が必要となる図でも複雑な操作は必要ありません。
jinjerワークフロー
株式会社ネオキャリアの提供する「jinjerワークフロー」は、簡単なUI設計を重視したツールです。誰でも手軽に使えることで業務の属人化が発生しないワークフロー管理を実現します。申請の種別に応じて柔軟な承認ルートの設定が可能で、企業の意思決定促進に貢献します。
ナレッジマネジメントツール
知識や経験による仕事のノウハウを可視化するナレッジマネジメントツールは、企業の活性化を図るのに有用なツールです。ナレッジマネジメントツールの中にも、フローチャートを自動化できる機能を備えたサービスがあります。
Confluence
アトラシアン株式会社から提供されている「Confluence」を活用すれば、豊富なテンプレートを利用して効率的に文書を管理できます。高機能作図ツールの「draw.io」をアドオンで利用してConfluenceにフロー図を埋め込むことも可能です。
DocBase
「DocBase」は、株式会社クレイが提供するサービスです。デジタル文書を作るためのマークダウンに対応しており、読みやすく見やすい記事を作成できます。マークダウンに慣れていない人でも、入力補助機能により簡単に利用できます。mermaidに対応しており、テキストやシーケンス図からフローチャートが生成できるのも特徴です。
Kibela
Excelやスプレッドシートからコピー&ペーストするだけの簡単な操作で表が作成できるツールです。株式会社ビットジャーニーが提供する「Kibela」は、共同編集が可能でシングルサインオンや多要素認証により強固なセキュリティを実現します。情報漏えいのリスクを回避します。幅広い業界・業種で利用できる便利なサービスです。
電子契約サービス
電子契約サービスは契約書や申請書などを電子化し、企業間の契約締結をWeb上で完結させるサービスのことをいいます。
フローチャート内で発生する契約や申請をより効率化するために電子契約サービスは欠かせません。
クラウドサイン
クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子契約サービスです。本サービスは弁護士監修の元、日本の法律に則って作られたサービスのため法的な面に関しても安心してサービスを使うことができます。
また、APIを使ってSalesforceやサイボウズなどの基幹システムと連携させ、社内稟議のワークフロー化や契約締結業務の自動連携が可能です。
誤送信や誤記入の防止、稟議手続きと契約締結からその後の書類管理までの業務を自動化させたい場合はクラウドサインとクラウドサインWeb APIの併用がおすすめです。
GMOサイン
GMOサインは、GMOクラウド株式会社が提供する電子契約サービスです。GMOサインは、実印と契約印に相当する2つの電子契約(電子署名・電子サイン)を採用しています。
紙の契約書と同じような法的効力を担保しながら電子契約を結ぶことが可能です。自社の運用に合わせて電子契約の種類を選べるサービスのため、システムのコスト最適化はもちろん、紙の契約書を使用する場合に発生していたコストの削減、契約にかかる時間の短縮ができます。
また、GMOサインは国内でも有数の電子認証局GMOグローバルサインと直接契約をしており、政府機関や大手企業でも利用されている安全性の高いツールです。さらにセイコーソリューションズ社の認定タイムスタンプを標準付与しており、電子帳簿保存法など各種法令にも対応できます。
ドキュサイン
ドキュサインは、ドキュサイン・ジャパン株式会社が提供する電子契約サービスです。MicrosoftやSalesforce、Googleを始めとする350以上のシステムと連携できます。
他のシステムと連携することで、スマホアプリからの文書確認や営業活動における業務の効率化を手助けします。署名の種類も豊富で、ローマ字や手書き、画像などに対応可能です。
また、ドキュサインは世界180ヵ国、50万社以上で利用されている信頼性の高いサービスです。99.99%の可用性を一貫して実現しており、メンテナンスによるダウンタイムがほぼないため、安心して使うことができます。
まとめ
フローチャートは業務プロセス・コンピュータープログラムの処理の流れを、直観的に理解できる図式にまとめる手法です。基本的なルールとコツさえおさえておけば、誰にでも分かりやすいフローチャートを作成できます。
Excelを活用してフローチャートを作成することもできますが、便利な機能を備えたワークフローシステム、ナレッジマネジメントツールを活用すると効率よく作業できます。自社の課題や目的を明確化して、適切なサービスを選択してください。