
労働基準法の改正や働き方改革関連法の施行など、昨今は企業が従業員の労働時間や勤怠状況を正しく把握・管理することが求められています。
その中で出退勤時刻の管理にはいくつか課題があり、打刻忘れやICカードの紛失といった人為ミス、また遅刻や欠勤、長時間労働を隠すための代理打刻・不正行為を完全に防ぐことは難しいとされてきました。
そこで近年注目されているのが、本人確認と打刻を同時に行える顔認証打刻です。採用している勤怠管理システムはまだ少ないながらも徐々に企業導入が拡大しています。
本記事では、顔認証とはどういった技術でどのように勤怠管理に活かせるのかを解説するとともに、顔認証打刻に対応するおすすめ勤怠管理システムをご紹介します。各サービスの特徴や強み、過去の導入実績、利用レビューなどをまとめていますので、ぜひ比較検討にご活用ください。
顔認証打刻とは?勤怠管理に採用する4つのメリット
顔認証とは、人の顔を識別する技術です。カメラから取得した顔写真を事前登録したデータベースと比較して本人確認を行うことができ、デジタルデバイスのログイン認証やオフィスの入退室ロック、空港でのパスポートチェックなど身近なところでも幅広く活用されています。
近年、本人確認とともに出退勤の打刻を行う顔認証打刻を搭載した勤怠管理システムも増えてきました。顔認証以外にもさまざまな打刻方法が生み出されてきた勤怠管理システムですが、その中でも顔認証にはどのような特徴があるのか、他の打刻方法と比較しながら導入メリットをご紹介します。
1. ICカードの不携帯・紛失リスクをなくせる
ICカード(社員証)認証は、PC上でのログインや画面上での操作が不要で、ただ端末にかざすだけで誰でも簡単に出退勤登録ができる打刻方法です。初回の登録や配布を済ませてしまえば、特に教育の手間もありません。
ただし、交通系ICカードもIC社員証も持ち歩く「モノ」であるため、紛失のリスクが伴います。また、自宅に忘れてきたなどの不携帯の場合にも、出退勤時刻の代理入力や承認の対応が必要です。
顔認証をはじめとする生体認証は、携帯する「モノ」が不要なため、紛失のリスクもなければ、その都度発生するであろう対応工数もなくせます。
2. 代理打刻を防止できる
他人への貸し借りができてしまうICカードでは、なりすまし(代理打刻)や不正打刻が起こる可能性があります。顔認証の場合、必ず本人がその場にいなければ打刻できません。長時間労働を隠すためにWeb打刻の退勤時刻を意図的に操作するといったこともできないのです’。
3. 生体認証の中でも精度・認証率が高い
これまで生体認証と言えば、指紋認証や静脈認証が先に利用されてきました。各生体認証の精度や認証率は、使用する場所や目的によって異なりますが、勤怠管理システムでの活用においては、顔認証の方が認証率が高いとされています。
たとえば、指紋認証は指紋の特徴点を識別しますが、傷や乾燥による些細な変化によって特徴点を読み取れないことがあります。また静脈認証は、指や体の冷えによって血管が収縮し、登録時の静脈パターンと大きく変わって認証されないことがあるようです。
一方で、顔認証の場合、体温や湿度によって大きく形状が変わることはありません。光や陰影が精度に影響しますが、出退勤打刻という用途においては暗闇で顔認証をするシチュエーションはまずないでしょう。
顔の特徴点の位置や凹凸、顔領域の大きさなどを細かく照合するため、多少の化粧では認証に影響はなく、精度の良いものであればマスクや眼鏡を着用しても認証されます。
4. 非接触で利便性が高く、衛生的
顔認証打刻は、顔をカメラに向けるだけの非接触での打刻方法です。鞄からICカードを出してかざしたり、手でパスワードを入力したりする必要はなく、荷物で手がふさがっていても、数秒立ち止まる程度で通過できます。また、非接触のため衛生的で新型コロナウイルスなどの感染症対策にも繋がります。
※撮影ボタンをタップするなど、一部に完全非接触でないサービスもあります。
顔認証打刻の導入デメリット
他の打刻方法と比較した際の顔認証のデメリットは、主に「費用」と「勤怠管理システムの選択肢が少ないこと」です。
顔認証システムは、高性能であるがゆえに導入コストが高くなる傾向にありますが、iPadなどに顔認証アプリをインストールするタイプのものは、専用機器タイプよりも安価に提供されています。ただし、認証精度が悪ければ元も子もないため、料金だけでなく精度と実用性を優先的に検証しましょう。
また、顔認証打刻に対応している勤怠管理システムがまだ少ないため、他の条件(機能・料金・サポートなど)で絞り込みをかけた際に、「選択肢が少ない」または「あてはまるサービスがない」といった事態が起こる可能性があります。
顔認証対応の勤怠管理システムの選び方
以下、顔認証対応の勤怠管理システムを選定する際に押さえておくべき3つのポイントです。
- 勤怠管理の基本機能
- 顔認証端末の推奨形態
- 顔認証以外の打刻方法
1. 勤怠管理の基本機能
まず、自社に必要な「勤怠管理の機能」を明確にしておきましょう。顔認証打刻はあくまで正確な労働時間を把握するための打刻方法の一つです。勤怠管理システムの導入背景には「勤怠管理を適正に・効率的に行う」という目的があります。
- 打刻データ管理(出退勤時刻、休憩時間、残業時間、深夜労働時間など)
- 勤務形態設定(通常勤務、シフト勤務、フレックスタイム、みなし労働時間制など)
- アラート通知(残業時間超過、年休取得日数、打刻漏れなど)
- 各種申請・承認(残業、休暇、休日出勤、打刻修正など)
- 外部システム連携(給与計算、労務管理、健康管理、人事評価など)
多機能になるほどコストも上昇しますが、最初に予算で絞り込んで必要な機能を妥協してしまうと、部分的にアナログ業務が残ったままであったり、かえって工数が増えたりと、業務効率の観点では最適とは言えません。
また、顔認証打刻を搭載する勤怠管理システムはさほど多くないため、欲しい機能に優先順位を付けることも重要です。最初に必要最小限の機能を決定し、以降は費用対効果を想定しながら自社に必要な機能をしっかりと精査しましょう。
2. 顔認証の端末形態
顔認証打刻は、専用端末を設置するタイプと、iPadやカメラ付きノートパソコンなどにアプリケーションをインストールして利用するタイプに分かれます。
専用端末は、初期コストがかかるものの「明暗に左右されない認証精度」「高速の認証スピード」「検温感知もできる」など高度な機能を備えていることが強みです。
一方で、インストールタイプは端末設置の必要がなく、タブレットやノートPCを準備すればすぐに導入できます。ただし利用する端末が正確に動作するか、推奨環境(iPadの世代、OSのバージョン、CPUやメモリのスペック)を事前に確認しましょう。
3. 出社しない人向けの打刻方法
在宅勤務やリモートワークを行う従業員がいる場合や、出張などで直行直帰をすることもある場合は、労働時間を記録できる他の打刻方法を用意する必要があります。
スマホアプリから顔を撮影するものやWeb打刻のほか、PCログイン監視やGPSなど、勤怠状況を把握しやすくする機能もありますので、自社の働き方や就業ルールに合わせて適切な運用方法を検討しましょう。
顔認証対応のおすすめ勤怠管理システム5選
製品・サービス | 対象 |
---|---|
ジョブカン勤怠管理 | 専用機器 |
勤革時 | iPad |
KING OF TIME | iPad |
ICタイムレコーダー | 専用機器 |
Taskal Time-Card | iPad/iOS/Windows PC |
※クリックすると記事下部のサービス詳細にジャンプします。
1. ジョブカン勤怠管理|顔認証・検温・打刻・マスク検知を同時に実施

- 料金:月額200〜500円/人
- 主な機能:出勤管理、残業アラート、自動集計、シフト管理、休暇・承認申請、工数管理
- 顔認証以外の打刻方法:Web打刻(パソコン・スマホ・タブレット)、ICカード、指静脈認証、GPS打刻、LINE/Slack打刻
- 初年度料金:204,000円
- 2年目以降:66,000円(保守年間費用18,000円+クラウド年間使用料48,000円)
ジョブカン勤怠管理は、テレワーク時代の先駆けともなったクラウド勤怠管理システムです。給与計算や労務管理、経費精算などバックオフィス全般をシリーズ展開しており、数名から1000人超の大企業まで、あらゆる規模や業種で導入されています。
専用機器を利用する顔認証打刻は、「本人確認(顔認証)・打刻・検温」を同時に実行可能です。顔認証打刻専用のクラウドサービス(SenseLink Cloud)とジョブカン勤怠管理で情報を連携し、勤怠管理を行います。
ただし、月額最低利用料金が2,000円となっているため、9名以下の小規模企業は、人数に合わせてプランをアップグレードするのがお得です。
ジョブカン勤怠管理を実際に利用した人の口コミ・評価
2. 勤革時|世界No.1の認証精度を有するNECの顔認証AIエンジン

- 料金:月額300円/ID
- 主な機能:自動集計、申請承認、人件費管理、シフト管理、残業管理、休暇管理、警告機能、海外対応
- 他の打刻方法:PCログイン、Web打刻(パソコン・スマホ・タブレット)、ICカード
勤革時は、利用企業数42,000社、利用ID246万人以上の実績を持つNEC(日本電気株式会社)のクラウド型勤怠管理システムです。低料金ながら勤怠管理に必要な機能を網羅し、シフト管理やスケジュール管理、変形労働時間への対応など複雑な就業規則にも対応できます。
顔認証打刻は、米国国立機関による動画顔認証の性能評価で第1位を獲得したNECの顔認証AIエンジン「NeoFace」を搭載するiPad専用アプリケーションです。iPadのみで勤怠データをクラウド上に保存・管理できるため、設置場所を選ばず省スペースでのシステム導入を実現します。
KING OF TIMEを実際に利用した人の口コミ・評価
3. KING OF TIME|多彩な打刻方法で出社しない従業員の勤怠状況も正確に把握

- 料金:月額300円/人(当月の打刻人数のみの課金)
- 顔認証:40,000円/ライセンス
- 主な機能:自動集計、申請承認、シフト管理、残業アラート、休暇管理、データ分析、人事労務
- 他の打刻方法:PCログオン、Web打刻(パソコン・スマホ・タブレット)、ICカード、GPS打刻、生体認証(指紋・指静脈)、LINE WORKSなど
KING OF TIMEは、勤怠管理システム市場を牽引してきた株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供するクラウド型勤怠管理システムです。
顔認証打刻には、勤革時と同じくNECの顔認証AIエンジン「NeoFace」を搭載するiPad専用アプリケーションを採用。高い認証精度と認証速度を誇ります。
他にもログイン不要のICカード打刻、打刻時に位置情報を取得できるスマホGPS打刻など、20種類もの打刻方法が準備されており、個々の従業員の働き方や勤務形態に合ったものを選択できます。
KING OF TIMEを実際に利用した人の口コミ・評価
4. ICタイムリコーダー|虹彩・顔認証でマスクやゴーグル着用のまま出退勤

- 基本料金:200円~/人
- 顔認証:メーカー見積もり
- 主な機能:勤怠レポート、残業・休日申請、シフト管理、有給管理、日報作成、Web給与明細、源泉徴収票、年末調整
- 他の打刻方法:Web打刻(パソコン・スマホ・タブレット)、虹彩認証、ICカード、Amazon Alexa対応スマートスピーカーの音声認証
ICタイムリコーダーは、中小企業を中心に導入社数を増やし続ける勤怠・シフト管理システムです。虹彩認証や音声認証などユニークな打刻方法を選択可能なほか、勤怠管理に必要な機能はすべて揃っており、有休管理や残業・休暇申請といったワークフローもオプション費用無しで利用できます。
3次元顔認証システム「THQREE(スクリー)」は、顔の凹凸を含めて判断する高性能3D認証で双子でも正しく認証します。写真などを使った不正打刻はもちろん不可能です。また、赤外線カメラ認証のため明るさに認証精度を左右されることがありません。
さらに2021年には、最先端AIによる虹彩・顔認証システム「IRIAS(イリアス)」( クリテックジャパン株式会社)との連携・販売を開始しました。2歳から変わらないと言われる目の虹彩を利用した本人認証により、マスクをしたまま出退勤打刻が行えるようになります。ヘルメットやゴーグル、防塵服等を着用して出入りする施設でも出退勤が可能です。
ICタイムリコーダーを実際に利用した人の口コミ・評価
5. Taskal Time-Card|iPhone/iPad、Windowsアプリ対応の顔認証打刻

- 料金:月額250円/人
- 主な機能:マイページ(勤怠、申請、通知確認)年休管理、申請承認、シフト管理、アラート、出退勤編集
- 他の打刻方法:Web打刻(Windows版・ブラウザ版)
Taskal Time-Card(タスカルタイムカード)は、iPhone/iPad、Windowsアプリ、ブラウザから顔認証打刻が使えるアプリケーションタイプの勤怠管理システムです。専用の機器を必要とせず、iPadがあればApp Storeからアプリを無料でダウンロードしてすぐに使えます。
勤怠管理の機能も一通り揃っていますが、顔認証を含めた打刻と集計のみのプランもあり、こちらは月額100円/人で利用可能です。
まとめ
顔認証打刻に対応のおすすめ勤怠管理システムをご紹介しました。勤怠管理における顔認証は、ミスや不正の発生を限りなくゼロにできる打刻方法です。
iPadや専用機器などの端末を設置した場所に出社しない従業員への対応を考慮するなど、自社の就業規則や労務課題に沿って適切な勤怠管理システムをご検討ください。
そのほか、当サイト掲載の勤怠管理システム全35サービスの特徴や機能、価格、利用レビューについては、ぜひ以下もご参照ください。目的別・企業規模別のおすすめや選び方も解説しています。
顔認証による勤怠管理に関するよくある質問
顔認証打刻に対応の勤怠管理システムを教えてください。
顔認証打刻を選択できる勤怠管理システム
- ジョブカン勤怠管理:専用機器
- KING OF TIME:iPad
- 勤革時:iPad
- ICタイムレコーダー:専用機器
- Taskal Time-Card:iPad/iOS/Windows PC
専用端末を設置するタイプと、iPadやカメラ付きノートパソコンなどにアプリケーションをインストールして利用するタイプに分かれます。
詳しくは、「顔認証対応のおすすめ勤怠管理システム5選」をご覧ください。
顔認証の勤怠管理システムにデメリットはありますか?
他の打刻方法と比較した際、考えられるデメリットとして下記の2点が挙げられます。
- 高性能であるがゆえに導入コストが高くなる傾向にある
- 顔認証打刻に対応している勤怠管理システムがまだ少ない
安価に提供されているものもありますが、認証精度が悪ければ元も子もないため、料金だけでなく精度と実用性を優先的に検証しましょう。