自社の就業規則にテレワークを新たに導入するとなると、コミュニケーションやワークライフバランスの確保、セキュリティ対策の強化など、その体制構築において注意すべき点がいくつか出てきます。
こういった課題を解決する手立てとなるのが、オンラインでも出社時・対面時と同じように仕事を進められるITツールの活用です。
本記事では、テレワークの体制構築や運用における課題を明確化し、目的に沿ったITツールを役割や必要性から解説していきます。各ツールカテゴリにおけるおすすめサービスも口コミ・評価付きでご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
テレワークの体制構築で課題となるポイント
テレワーク制度をスムーズに定着させるためのITツールを準備する前に、そもそもどういった問題が起こりうるのかを簡単に押さえておきましょう。
テレワークの大きな特性は「従業員の働く場所と時間が一致しない」ことです。この特性によって次のような課題が生じやすくなります。
コミュニケーションの困難
全員が同じオフィスに出社するのとは違い、テレワークでは何らかのコミュニケーションの場や機会を意図的に提供しなければコミュニケーションが生まれません。
たとえばオフィスであれば隣の席に話しかければ済むような意見交換も、テレワークではメールや電話、チャットツールを開いて行わなければならないのです。
コミュニケーションツールの不備などがあると、会話の減少、意思決定の遅れが生じやすく、また対面で表情が見えないことによるトラブルや情報共有の齟齬が発生することも考えられます。
勤怠管理の複雑化
テレワークでは、従業員の勤怠状況や業務の進捗状況が把握しづらく、報告や確認の対応工数が以前よりも増える可能性があります。業務の完了時間や休憩時間が把握できない環境では、サボりや隠れ残業が発生することも考えられるでしょう。
セキュリティリスクの増加
テレワーク環境では、企業の監視下にない個人のデバイスやネットワークが利用されやすく、セキュリティリスクが増加することがあります。
セキュリティソフトを入れた社用デバイスを配布していても、テレワーク環境では公私の境目が曖昧になることがあり、従業員が個人的な情報や企業情報をSNSやメールなどを通じて漏洩することも考えられるでしょう。
テレワーク導入に必要なITツール
ここでは、先ほど挙げた3つの課題を解決するための代表的なITツールを、必要性の高いものの順にご紹介します。
以下を総合的に考慮して、ツールの必要性を評価しました。
- ツールの導入・運用コスト:費用対効果は妥当か
- ツールの使いやすさ:従業員にストレスなく利用してもらえるか
- ツールの汎用性:幅広い業務・企業規模で利用できるか
Web会議ツール(必要性:★★★)
Web会議ツールは、インターネット通信を利用して、パソコンやスマホでビデオ通話を行うコミュニケーションツールです。
オフィスに出社していない社員同士や遠隔地の顧客とのコミュニケーションには、メールやチャット、電話などの手段もありますが、文面のみでは細かいニュアンスが伝わりにくく、電話では身振り手振りが見えないといった側面もあります。
Web会議ツールは、複数人とのビデオ通話をはじめ、テキストチャットやファイルの送受信、画面共有などの機能を使うことで、対面時とほぼ同等のコミュニケーションを実現可能です。各自のスペースでいつでも遠隔会議環境が作れるため、会議や打合せだけでなく、商談や採用面接など幅広い用途で活用されています。
オンラインストレージ(必要性:★★★)
オンラインストレージは、クラウド上にあるデータ保存環境のことです。インターネット環境下であれば、働く場所に寄らずどのデバイスからでもストレージやファイルに直接アクセスでき、組織内でファイル共有を効率的に行えます。
Google DriveやDropboxなど、すでに従業員が個人で利用しているケースも多いですが、ファイルの編集・閲覧権限やセキュリティの観点から、法人向けのサービスを導入することを推奨します。
勤怠管理システム(必要性:★★★)
テレワークと出社が従業員ごと・日ごとに異なると、労働時間の正確な記録・管理を行うのが難しくなります。
勤怠管理システムには、在宅勤務時はパソコンのログオン・ログオフで労働時間を記録し、出社時にはICカード(社員証)で出退勤打刻を行うなど、複数の打刻方法を選べるものがあります。
また、管理者側もシステムにログインすれば、場所を選ばずに従業員の勤怠状況の把握や各種申請の承認処理が可能です。従業員の雇用形態や業種、勤務ルールによらず、一度設定してしまえば一括操作で勤怠管理に必要なアクションが取れるため、テレワーク制度にも比較的スムーズに移行することができます。
グループウェア(必要性:★★)
グループウェアは、社員同士や部署間など、企業内でのあらゆる情報を円滑に共有するためのツールです。製品によって異なりますが、以下のような機能がパッケージングされています。
- コミュニケーション:Webメール、チャット、Web会議、掲示板、Wikiなど
- プロジェクト管理・進行:ファイル共有、タスク管理、スケジュール共有、日報
- バックオフィス:施設予約、ワークフロー、経費精算、組織名簿、アドレス帳
テレワークを導入する場合は、プロジェクトのデータ共有やスケジュール管理、コミュニケーションが難しくなる傾向がありますが、グループウェアを導入することで情報共有を円滑化し、さらに業務効率化や生産性向上に繋げることができます。
チャットツール(必要性:★★)
チャットツールは、社員同士や社外パートナーとの簡単なコミュニケーションを実現するためのツールです。
社外とのやり取りや機密文書の取り扱いなどで、メールが必要な場面もありますが、それ以外の社内コミュニケーションをチャットツールに移行することで、新規メールを開いて文章を作成し、宛先を選んで送信する手間と時間を大幅にカットすることが可能です。
わざわざメールで伝えるほど重要性は高くないが、、、といった場合でも気軽にメッセージを残せるため、テレワークによるコミュニケーションの減少を抑えることもできるでしょう。
企業や部門によっては必要になるテレワークツール(必要性:★)
以上でご紹介したツールは、新たにテレワークを導入する企業であれば、規模や業務の特性によらず必須あるいは適性の高いツールであり、企業導入が進んでいる業務システムやITサービスはこの限りではありません。
テレワーク導入時に、企業や部門によっては必要性の高いツールを以下にいくつかご紹介します。
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールは、チームの生産性を高め、プロジェクトを効率的に進めるための機能を集約したツールです。プロジェクトに関連する情報やデータをツール上に集約し、プロジェクト全体の進捗、チームの目標達成率、各メンバーの稼働状況やスケジュールなどをリアルタイムで共有・確認することができます。
リモートアクセスツール
リモートアクセスツールは、自宅などからオフィスのパソコンやサーバーにアクセスし、遠隔で操作を行えるツールです。リモートアクセスツールを導入することで、自宅のパソコンのスペックやアプリケーションの違いによる「オフィスのパソコンでなければできない作業」がなくなります。
電子契約サービス
電子契約サービスは、紙の契約書を電子化してオンラインで契約締結を行うサービスです。オフィスにいなくても契約書の受け渡しができ、紙の契約書に比べて保管や管理が容易になります。
おすすめのテレワークツールをカテゴリ別に紹介
1. Web会議ツール
国内で利用者数が多く、通信品質が高く評価されているWeb会議ツールとして、下記の3サービスをご紹介します。
(1) Zoom ミーティング|個人・ビジネスともに馴染みのあるテレワークツール
Zoomミーティングは、コロナ禍によるテレワーク時代において、ビジネス・プライベートともに最もユーザー数が急上昇したWeb会議システムです。参加者を別々の部屋に分けることのできるブレイクアウトルームをはじめ、ホワイトボードや録画機能、リアクション機能などの豊富な機能が揃っています。
無料版でも有料版とほぼ同等の機能群を利用できますが、時間制限の40分に達すると強制終了され、会議を続ける場合は全員再接続する必要があります。
Zoom ミーティングを実際に利用した人の口コミ・評価
(2) LiveOn|高画質・高音質のWeb会議を少ないデータ通信量で
LiveOnは、日本国内で完全自社開発の高品質なWeb会議システムです。独自の技術でデータ量を圧縮し、フルHD画質でも少ない通信量でクリアな音声となめらかな映像でのコミュニケーションを実現できます。
1拠点あたり月額3,000円で利用できるクラウド型と、自社ネットワーク内にLiveOnサーバーを構築するオンプレミス型の2タイプがあり、クラウド型では細かい機能のON/OFFを、オンプレミス型では運用体制や要望に合わせた大規模なカスタマイズも可能です。
また、国内メーカーということもあり手厚いサポートを必要な時にすぐに受けられるのも、多くの企業で導入の決め手となっています。
LiveOnを実際に利用した人の口コミ・評価LiveOnを実際に利用した人の口コミ・評価
(3) BizMee|クリアな音質を提供する少人数向け無料サービス
BizMeeは、アプリや会員登録不要で使える無料のWeb会議サービスです。主催者が好きな会議室名(URL)を入力して先に入室し、相手が共有したURLにアクセスすれば会議が始まります。
画面共有やホワイトボードといった会議に必要な基本機能は全て揃っており、会議室にロックをかけて入室制限を行うことも可能です。クリアな音質とセキュリティの観点から2〜4人の少人数利用が推奨されています。大人数で使いたい場合は同社の有償サービス「Waaarp」を利用することで最大24拠点まで接続可能です。
BizMeeを実際に利用した人の口コミ・評価
2. オンラインストレージ(ファイル管理・共有)
オンラインストレージサービスの中でも、特に利用者数・利用口コミが多いのは以下の3つです。
(4) Googleドライブ|多くの業務アプリと合わせて使える良コスパ
Googleドライブは、グループウェア「Google Workspace(旧称 G Suite)」の一部機能として提供されるオンラインストレージです。業務アプリケーションとしてコスパが高く、GmailやGoogleカレンダー、スプレッドシートなども利用できます。
また、Google独自の検索技術も強みの一つです。ファイル名だけでなく、中身のテキストや画像まで読み取るなど、さまざまな検索方法を駆使して目的のコンテンツをすばやく見つけます。
Googleドライブを実際に利用した人の口コミ・評価
(5) DropBox Business|チームに選ばれる情報共有アプリ
Dropbox Businessは、世界で60万以上のプロジェクトチームに選ばれているオンラインストレージです。コンテンツやツールを1ヶ所に集約し、チームの生産性を高めます。
Google WorkspaceやOffice365のグループウェアのほか、SlackやZoom、Adobe、Asana、Trelloといったチームで普段使っているアプリと連携でき、チームのアクションやコミュニケーションも一元管理が可能です。リモートチームの作業をシンプルにして効率化し、あらゆるプロジェクトの進捗をスピードアップできます。
DropBox Businessを実際に利用した人の口コミ・評価
(6) Box|1,500以上の業務アプリと統合可能なコラボレーションツール
Boxは、世界で10万社を超える導入実績を持つオンラインストレージです。1,500以上の業務アプリと統合し、Office 365やGoogle Workspace、SlackなどをBox上で操作することができます。場所やデバイスを選ばず、すぐにアクセスできるセキュアなビジネスコラボレーションを実現可能です。
Boxを実際に利用した人の口コミ・評価
3. 勤怠管理システム
勤怠管理システムは、当サイトで「利用したユーザー数」「レビュー数」の多い上位3サービスをご紹介します。
小規模から中堅企業まで幅広い導入実績を持つ鉄板の勤怠管理システムでもあり、多くの企業で求められる機能やシフトパターンが標準搭載されているサービスです。
(7) スマレジ・タイムカード|全機能使える60日間の無料トライアル付き
スマレジ・タイムカードは、打刻時の写真撮影や笑顔認証などユニークな不正防止機能を備えた勤怠管理システムです。30名までであれば、一部機能が制限されますがスタンダードプランを無料で利用できます。
有料プランでは、休暇管理、給与計算、年末調整、シフト作成が可能で、こちらも10名まで2,200円/月、以降は1名ごとに330円/月とリーズナブルです。
アカウント作成から60日間すべての機能を無料で利用できるお試し期間があるため、仮導入でしっかりと検討を行いましょう。無料版(スタンダードプラン)でもメールやチャットでのサポートに対応しており、お試し期間中はサービス内容やプラン選択の電話相談をすることもできます。
スマレジ・タイムカードを実際に利用した人の口コミ・評価
(8) ジョブカン勤怠管理|テレワーク時代の先駆けとなったクラウド業務システム
ジョブカン勤怠管理は、10名以下の小規模企業から1000人超の大企業まで、あらゆる企業規模や業種でオールラウンドな業務システムとして導入されているクラウド勤怠管理システムです。給与計算やワークフロー、労務HR、採用管理などのシリーズ累計導入実績は15万社にも上ります。
ジョブカン勤怠管理を実際に利用した人の口コミ・評価
(9) KING OF TIME|20種の打刻方法と充実の機能がすべて使えてワンプライス
KING OF TIMEは、勤怠管理システム市場を牽引してきた株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供するクラウド型勤怠管理システムです。KING OF TIMEの導入企業数は4万社、利用ID数は240万IDを誇ります。
20種類もの打刻方法が準備されており、テレワークや外回り営業の管理には打刻時に位置情報を取得できるスマホGPS打刻、オフィスや店舗への出勤にはログイン不要のICカード打刻といったように、各従業員の働き方に合ったものを選択可能です。
残業や有給休暇などを独自の就業ルールに則して設定でき、飲食店やホテル、建設、医療施設などでも幅広い業種・業態で導入されています。
KING OF TIMEを実際に利用した人の口コミ・評価
4. グループウェア
以下、グループウェアの中から特に中小企業向けに設計されたもの、また中小企業での導入実績が豊富なものをピックアップしました。
(10) サイボウズ Office|中小企業の使い勝手を追求した機能がワンパッケージで
サイボウズ Officeは、約20年間で累計導入70,000社を突破したグループウェアです。在宅勤務の導入や残業時間の削減、経営スピードアップといった業務改革を低コストで行えることから多くの中小企業に支持されています。
メールやスケジュール、設備予約、ファイル管理、ワークフローなど、社内の情報共有やコミュニケーションを円滑にする機能を標準搭載しており、さらに、プレミアムプランでは業務用アプリを100種類以上のテンプレートから無制限に選んで作成することが可能です。
サイボウズ Officeは、100人以下の企業、部門・部署を中心に、少人数の組織での運用を想定して設計されています。大規模組織への対応をご希望の方は、同社の「Garoon(ガルーン)」も合わせてご覧ください。
サイボウズ Officeを実際に利用した人の口コミ
(11) Google Workspace|作業もマネジメントも1つのスペースで共有
Google Workspaceは、導入企業数4万社、利用ID数は233万IDを誇るクラウド型勤怠管理システムです。Googleドキュメントやスプレッドシートはリンクを共有するだけで、さまざまなデバイスからアクセスできます。オンラインでのリアルタイム共同編集やオフライン作業も可能です。
社内で共有しているGoogleカレンダーに会議予定を登録すれば、Meet(Web会議)のURLが自動発行され、細々した設定不要ですぐに立ち上げられるなど、組織内の情報共有やコミュニケーション、プロジェクト管理・進行がGoogle Workspace一つでまかなえます。
Google Workspaceを実際に利用した人の口コミ
(12) J-MOTTOグループウェア|月額165円/人の低価格で25機能を提供
J-MOTTOグループウェアは、日本最大級の導入実績を誇るグループウェア「desknet’s NEO」を元に、同等の機能を提供するASP・クラウドサービスです。20ユーザーまでであれば、日々の業務に使える25機能が月々3,300円(一人あたり165円)ですべて利用できます。
またJ-MOTTOは、グループウェア以外にもWeb勤怠やWeb給与明細等のオプションサービスを提供しており、すべてのサービスについて、管理者だけでなく一般ユーザーも含めて無料のサポートセンター(電話・メール・チャット)を利用可能です。
J-MOTTOグループウェアを実際に利用した人の口コミ
5. チャットツール
チャットツールからは、日本企業向けに設計されたサービスを3つご紹介します。
(13) Chatwork|機能・使いやすさ・信頼性に定評ある国産チャットツール
Chatworkは、中小企業を中心として、あらゆる業種・職種で導入されている国内利用者数No.1のビジネスチャットです。チャットのほか、ビデオ・音声通話、タスク管理、ファイル管理などのビジネス上のコミュニケーションに必要な基本機能が無駄なく揃っており、誰にでも使えるシンプルでわかりやすいUIが高く評価されています。
活用方法については、ヘルプやお役立ちコラムが豊富に準備されており、サポートもすべて日本語対応してもらえる安心感は国産サービスならでは。外部連携先に国内サービスが多いことも強みです。
Chatworkを実際に利用した人の口コミ
(14) LINE WORKS|受け入れられやすいお馴染みのデザインと機能
LINE WORKSは、業務コミュニケーション向けのビジネス版LINEアプリで、トークのほか、掲示板やタスク管理付きのカレンダー、アドレス帳なども含まれています。日常的に利用している個人向けチャットのLINEと機能や使用感を踏襲し、教育不要ですぐに運用を開始することが可能です。
また、個人向けのLINEと同様に「既読表示」がありますが、これを「既読確認ができる」と捉えるか、「不要なプレッシャーやコミュニケーション疲れを起こす」と考えるかが、導入判断の分かれ目となります。
LINE WORKSを実際に利用した人の口コミ
(15) WowTalk|誰もが使いやすい操作性と高度なセキュリティ対策
WowTalkは、ワウテック株式会社が提供する国産ビジネスチャットです。誰もが使いやすいチャットアプリ形式の直感的な操作性と、行政機関でも採用されるレベルのセキュリティ対策で導入実績は10,000社以上を誇ります。
コミュニケーションを起点とした働き方改革の推進に注力しており、基本のチャット機能や音声/ビデオ通話のほか、掲示板やタスク管理、カレンダーやオンラインストレージとの連携も行えます。
特徴的なのが、感染症や災害時に利用する「安否確認機能」です。普段から使い慣れたビジネスチャット上で使えるため、有事の時のみに起動する安否確認ツールで「操作方法がわからない」という事態を避けられます。
WowTalkを実際に利用した人の口コミ
まとめ|テレワーク導入に必要なITツールを整理しましょう
ITツールの導入検討を行う際には、そのツールが業務課題を解消できるかという視点が重要です。テレワーク導入にあたっては、組織内のコミュニケーションや情報共有の仕組みづくりがいち早く解消すべき課題となります。
本記事では、活発なコミュニケーションを維持し、あらゆる情報や勤務状況を可視化するITツールをいくつかご紹介しましたが、企業全体や部門の現状課題に応じて優先度を決めて検討するようにしましょう。