ひと昔前は、一度作ったものの、数か月・数年と更新が滞っているままの企業サイトも少なくありませんでしたが、今では、誰でも簡単にWebサイトの更新・運用ができるCMSが普及したことにより、頻繁にコンテンツが追加・更新される活発な企業Webサイトの運営が可能になりました。
近年では、ユーザー動向の分析やステップメールの配信などのマーケティング支援機能を標準搭載したものも多数出てきており、今やCMSは、企業のマーケティング施策に欠かせない存在となってきています。
CMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)は、Webサイトの構築・管理・運用を容易に行えるシステムの総称です。文字入力とマウス操作だけで、簡単にコンテンツの作成・編集・公開ができるため、制作コストや運用にかかる人件費を削減できます。
また、統一性のあるデザインとスピーディーな情報発信により、Webサイトの価値と顧客満足度を高めることが可能です。
その需要の高まりから、現在、800を超えるCMSが国内外で開発・提供されていますが、それぞれのデザイン・機能・システムは千差万別です。企業のWebサイトはマーケティング施策の要ともなる大事な資産であり、企業はその運用効率を最大化するためにも、Webサイトの規模や運用目的に応じたCMSを慎重に選ばなければなりません。
高度な専門知識を必要とせず、感覚的に使用できることがCMSの強みではあるものの、CMSの比較検討を行うにあたっては、CMSの種類と特徴、基本機能といった最低限の知識は身に付けておくことが望ましいです。
以下、国内外のCMSについて、それぞれの特徴や機能、導入費用を紹介します。CMSの選び方や比較のポイントについても解説していますので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
CMS(コンテンツ管理システム)とは
CMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)は、企業のWebサイトを簡単に構築・管理・運用を行えるシステムの総称です。
従来のWebサイトでは、HTML/CSSのマークアップ言語が扱えなければ、手元に発信したい情報があっても、コンテンツとして配信することが容易ではありませんでした。こういったWeb制作に関する専門知識がなくても、ブラウザ上の文字入力とドラッグ&ドロップの直感的な操作で、誰でも簡単にコンテンツの作成・配信ができるようにしたものがCMSです。
誰でも更新作業ができるため担当者を確保しやすく、Webサイトの更新にかかる時間とコストを大幅に削減できることから、オウンドメディア、ECサイト、ホテルやレストランの予約サイト、会員制サイトなど、業種業界・ビジネススタイルを問わず、あらゆる企業サイトでCMSが活用されています。
CMSの種類と特徴
CMSは、大きく分けて「オープンソース系CMS」と「独自開発系CMS」の2タイプに分類されます。
オープンソース系CMS
オープンソース系CMSとは、Webサイトを構成する ”ソースコード” が公開されており、誰でも自由に利用・改変・再配布できるようにしたCMSのことです。
多くの場合、ソースコード自体が無償で提供されており、世界中のエンジニアがカスタマイズを加えて、システムが進化していくのが特徴で、さまざまなテンプレートや拡張機能が存在し、自由度の高いカスタマイズが可能です。
ただし、第三者が安全性を保証してくれるわけではなく、CMSの導入から構築、保守、トラブル対応、セキュリティ対策は自社で管理することが前提となります。
専門知識を持つ人材を自社で確保できない場合、また社内で対応しきれない部分がある場合は外部に委託する必要があるため、ライセンス費用がかからず、初期費用を抑えられたとしても、中長期的には運用コストが膨らむ可能性があることに注意が必要です。
独自開発系CMS
独自開発系CMSとは、システム会社やWeb制作会社などが独自開発したCMSで、その多くは企業での運用を想定して開発・設計されているため、Webサイトの運用目的やビジネスモデルに合わせて、必要な機能がパッケージング搭載されていることが特徴です。
例えば、ECサイト向けのCMSであれば、商品管理機能や検索機能、決済サービスなどがデフォルトで実装されていることが多いです。
無償で提供されているオープンソース系CMSとは異なり、初期導入費やライセンス利用料などのコストがかかりますが、ベンダーからのサポートが手厚く、専門知識がなくてもCMSの導入からWebサイトの運用を安全に行うことができ、トラブル発生時もスムーズな対応を受けることができます。
CMSの開発や初期制作を依頼する際の注意点
制作・管理が比較的容易なCMSでも、新規でWebサイトの構築から運用までを自社で行うことができる企業を除いては、導入時にデジタルマーケティング会社やWeb制作会社に初期制作を依頼することが考えられます。
自社の課題解消に向き合って最適解を提案をしてくれる制作会社であれば問題ありませんが、制作会社によっては、自社の得意とするCMSを前面に押し出してくることも少なくなく、判断基準に注意が必要です。
CMSの導入メリット
企業がWebサイトの制作・運営にCMSを導入することには、主に下記3つのメリットがあります。
- Webサイトの更新を効率化することができる
- 統一感のある質の高いWebサイトを制作できる
- Webサイトの制作・運用コストを削減できる
1. Webサイトの更新を効率化することができる
CMSの最大の強みは、Web制作やコードの知識がなくても、誰でも簡単にコンテンツの追加・編集が行えることです。
手元にある情報をすぐにコンテンツとして配信できるため、Web関連の専門知識を持つ人材がいない、または少ないことによる更新の停滞を回避することができ、常に最新の情報を公開しておくことができます。
また、コンテンツの作成・更新を複数人で分担することにより、それぞれの得意分野や専門性を活かしながら効率的にWebサイトを管理することができ、Webサイトの更新頻度を高めることも可能です。
2. 統一感のある質の高いWebサイトを制作できる
CMSでは、独自のデザインテンプレートを作成でき、それをベースにコンテンツを投入していくだけで、自動的にそのレイアウトに従ったページが作成されます。
そのため、デザインやコンテンツ作成などの担当者を複数人で分業しても、Webサイト全体の一貫性を保つことができ、ユーザビリティの高いWebサイトを作り上げることができます。
また、CMSが自動で生成するHTMLコードは、検索エンジンが高く評価を与える無駄のない構造になっており、更新しやすく統一感のあるWebサイトを構築できるとともに、SEO対策にも繋がります。
3. Webサイトの制作・運用コストを大幅に削減できる
Webサイト制作の専門知識を持つ人材がいない企業では、Webサイトの構築から運用まで制作業者に委託することが多く、CMSを導入しない場合は、コンテンツの追加・修正のたびに外注コストがかかってしまいます。
CMSを導入した場合は、初期の制作を外注したとしても、コンテンツの更新・追加は自社で内製化できるため、特に更新頻度が高いWebサイトを運営する場合は、大幅なコスト削減が見込めるでしょう。
CMSの選び方・比較ポイント
数多くのCMSから自社に最適なサービスを比較検討する際には、「自社がどんなWebサイトを作ろうとしていて、どのように運営していくか」をあらかじめ整理しておくことが重要です。
CMSは、追加し続ければキリがないというほど機能の種類が豊富なため、機能から比較すると「どちらのCMSが機能として優れているか」という判断基準に陥りやすく、本来のWebサイトの目的や運用体制から大きく外れてしまうことがあります。
必ず自社サイトの目的や運用計画から機能要件を洗い出すようにし、複数のCMSを比較検討する際には、以下のポイントを押さえておくと良いでしょう。
- 使いやすさ
- サポート体制とセキュリティ対策
- ベンダー事業の継続性
- マーケティングツールとの連携
1. 使いやすさ
直感的な操作でWebサイトの更新作業を行えることが、CMSを導入する目的の1つでもあるため、更新の難易度が高いものを選んでしまっては本末転倒です。
Web担当者となる人、コンテンツの作成・編集を行う人が、ストレスなく扱えるものを選ぶことが重要です。必ず一度は、実際にデモ画面で操作性や使用感を確認しておくことを強くおすすめします。
2. サポート体制とセキュリティ対策
比較検討の際には導入・運用コストと合わせて、サポート内容や保守適用範囲も確認しましょう。
オープンソース系CMSの導入において、最も注意したいのがセキュリティ問題です。ソースコードが公開されていることを利用したサイバー攻撃を受けやすく、拡張機能についても自由度が高いことと引き換えにセキュリティ脆弱性を含んだものが存在しています。
その点、独自開発系CMSではセキュリティレベルが高く、手厚いサポートを受けられることが強みですが、サポートの水準はベンダーによってバラつきがあるということに注意が必要です。
3. ベンダー事業の継続性
意外と見落としがちですが、ベンダーの信頼性を測る基準として、提供されるCMSのパフォーマンスやサポート体制以外に、そのベンダーの事業の将来的な継続性も見ておくべきです。
企業のWebサイトは長期的に運営していきます。将来的にリニューアルをするとしても、一度制作したものは少なくとも数年は使うでしょう。
もし仮にベンダーが急に事業をストップするようなことがあれば、サポートやバージョンアップなどの対応も全てなくなってしまいます。
4. マーケティングツールとの連携
現代は、企業が自社サイトやオウンドメディアを持つことが当たり前になってきたことにより、マーケティング機能を搭載したCMSも需要が高まっています。
ただし、現在のCMSのマーケティング機能は、Webサイト全体の管理や不特定多数を対象としたアクセス分析などを得意としており、MAツールのように、見込み顧客に絞った行動分析や追客にはまだ適していません。
企業全体のマーケティング活動を最適化していくのであれば、MAツールとCMSの併用・連携も視野に入れておいた方がいいでしょう。
CMSの機能
以下、CMSの主要機能、および企業向けWebサイトで必要とされることの多い機能を紹介します。※機能名称や内容は製品によって異なることがあります。
Webサイトの制作・構築に必要な基本機能
- コンテンツ管理:テキスト、画像・動画、その他掲載したいコンテンツファイルをアップロードして管理できる。CMSによって対応できるファイル形式やバージョンの幅が異なる。
- テンプレート作成:ページごとのレイアウトをテンプレート化して保存・使用ができる。テンプレートの活用により、サイト全体のデザインを踏襲したまま新しいコンテンツを追加することが可能。
- 公開予約機能:作成したコンテンツの公開日時を事前に設定できる。
- デバイス最適化(レスポンシブ対応):PC向けページを作成した際に、自動的にスマホやタブレット向けのページが作成・表示される。
- 独自ドメイン利用:CMSサービスから付与されるドメインではなく独自ドメインを利用
- プラグイン・アドオン追加:差し替え可能な機能アプリケーション(プラグイン・アドオン)を追加できる。CMSベンダーが開発提供しているものもある。
Webサイトの運用目的に沿った追加機能
- 会員ページ化機能:会員のみ閲覧できるページの設定、会員登録・ログインなどのシステムを設置できる。
- SEO関連機能:title, description, keywordsなどのSEO上で重要なタグを編集画面上で簡単に設定できる。
- フォーム連携:会員登録や問合せのフォーム・システムを作成・設置できる。
- SNS連携:シェアボタンの設置、コンテンツ更新時のSNS上への自動投稿、SNS上の投稿内容の埋め込みなどができる。
- 決済連携:Webサイトから商品の販売、取引を行うための決済代行・オンライン決済サービスと連携できる。
- API連携:APIを持つ外部サービスの機能・システム・データベースと連携ができる。
ユーザー管理・セキュリティ強化
- ユーザー管理:CMSを利用するユーザーの登録・削除、権限設定。
- ログ管理:いつ、誰が、どんな操作を行ったかが記録・管理できる。
- 承認ワークフロー:ページの制作者、編集者、承認者などのワークフローを作成し、コンテンツの修正依頼や公開の承認を行うことができる。
- デバイス制限:会社が許可した(管理下にある)デバイスのみ、ログインできる。
- SSL・AES暗号化:ネットワーク上の通信データを暗号化し、悪意ある第三者による盗聴や情報の改ざんを防止する。
- IPアドレス制限:ユーザーをIPアドレスで管理する。指定外のIPアドレスからのログインをブロックできる。
- パスワード設定:各ユーザーのログインIDとパスワードを付与できる。
- ニ段階認証:ログイン時にID・パスワードだけでなく、登録した電話番号へ送信した確認コード入力などの本人確認要素を設定し、なりすましを防ぐ。
まとめ|長期的な運用を見据えた導入計画と比較検討を
企業のWebサイトは、制作を完了させることがゴールではなく、その後の運用が本番です。その目的を果たす最適なCMSを選定するために、自社サイトをどのくらいの規模で構築し、どのように更新・運用していくかを明確にすることが極めて重要となります。
人気のオープンソース系CMSは、保守管理やセキュリティ対策は自社で行なっていかなければならず、IT人材が不足している企業からは、サポート体制の充実したCMSが求められる傾向にあります。また、近年のインターネットセキュリティの意識の高まりに加えて、日本企業のビジネスモデルに合わせて開発された国産CMSを選択する企業も増えてきています。
自社にあったCMSを選定するには、それぞれの特徴・機能だけを比較検討するのでなく、制作会社やベンダーとの信頼関係も必要になってくるでしょう。



