あらゆる情報がデータとして収集され、データに基づく迅速な意思決定が求められる昨今において、データアナリストをはじめとした専門家だけでなく、現場部門の誰もがデータ分析活動に取り組むことができるBIツールが注目を集めています。
BIツール(ビジネス・インテリジェンス)は、組織の中で日々蓄積されていくさまざまなデータを収集・分析・可視化する一連のデータ分析活動を支援するツールです。
収集した膨大なデータに対しては以下のような処理を行うことができます。
- さまざまなグラフやチャートによるデータの可視化
- 日次・月次レポートの自動出力
- クロス分析、相関分析、回帰分析などの統計処理
- 予算計画や経営計画のシミュレーション
その需要の高まりから、国内外で数多くのBIツールがリリースされていますが、それぞれ機能構成や分析レベル、出力レポート形式などが異なります。月額無料から5万円超まで価格帯も幅広いため、各製品の特徴や強みを理解した上で、導入目的や運用体制に適したBIツールを選定したいところです。
当ページでは、BIツールの役割や機能、導入メリット、運用の注意点などをわかりやすく解説しています。また、国内外のBIツールについて、それぞれの特徴や機能、料金プランなどを紹介していますので、ぜひBIツールの比較・検討にお役立てください。
BIツールとは
BIツールとは、経営戦略のためのデータに基づく意志決定を目的として、組織の中で日々蓄積されていくさまざまなデータを収集・分析・可視化する一連のデータ分析活動を支援するツールです。
企業内に蓄積されていくデータには、セミナー参加者リストはマーケティング部門が管理するエクセルファイル、顧客情報は名刺管理ソフトやCRMツール、商談情報や営業活動はSFAツールといったように、データの種類や保管場所が分散しているケースが多々あります。
こういった複数の業務システムから必要なデータを抽出して情報を繋ぎ合わせ、さまざまな切り口でデータ分析を行うことにより、個人の経験則や直感に頼らないデータ的な根拠に基づく判断が可能になります。
ビジネスインテリジェンス(BI)とは
BI(Business Intelligence:ビジネスインテリジェンス)とは、企業活動で得られるあらゆるデータを集積し、「包括的なデータ分析に基づいて、経営上の意思決定やパフォーマンスの最適化を行う手法・プロセス」を指します。
- 企業内の各種システムや各部門に分散したデータを収集。
- 予測モデルやアルゴリズムを構築し、さまざまな切り口でデータ分析を行う。
- データ分析結果と考察のレポートを作成。
- レポートをもとに経営者が意思決定を行う。
上記プロセスにおける「データの収集・分析・レポート作成」を1つのシステム上で行えるように開発されたのがBIツールです。
BIツールが注目される背景
もともとBIツールは、BIアナリスト(データアナリスト)が経営層の意思決定を支援するためのデータ分析活動を効率化することを目的として活用されていました。
しかし、情報管理のシステム化が進み、大量かつ細分化されたデータを容易に収集できるようになった現代においては、経営・財務だけでなく、営業、販売、人事・採用、マーケティングなど、あらゆる部門・領域で「データに基づく意思決定」が必要とされます。
誰もが何らかのデータに向き合い、日常的にデータ整理やレポート作成に追われている現場社員も少なくありません。
こういった企業のデータ活用の変化に伴って、専門知識や高度な技術を持つデータアナリストだけでなく、各部門の現場社員もデータ分析活動に取り組めるよう、さまざまな目的や幅広いユーザー層に対応したBIツールが次々とリリースされています。
特に、コーディングやプログラミングを必要とせずに、現場のエンドユーザーが自ら分析やレポートの作成ができるBIツールは、「セルフサービスBI」と呼び分けられることがあります。
BIツールの導入メリット
BIツールは、企業のデータ分析活動をサポートする役割を持っています。具体的には、導入企業や現場担当者は次のようなメリットを享受することができます。
- 社内に散在するデータを集めて分析できる
- 課題の早期発見や意思決定のスピードアップ
- レポートや資料作成の負担が軽減される
1. 社内に散在するデータを統合して分析できる
これまでは、複数のデータを包括的・多角的に分析する重要性をわかっていながらも、データを収集し、統合すること自体にかなりの工数を要し、分析が滞っていました。
BIツールは、複数の業務システムやITツールから必要なデータを抽出し、さまざまな切り口で分析を行うことができます。
例えば、「勤怠管理システム X 人事評価システム X タスク管理ツール」のデータをBIツール上に集約して、分析・レポーティングを行うことで、残業時間の原因を解明したり、人材配置の最適化を策定したりするといったことです。
部門やプロジェクトを横断したデータ分析やレポート共有ができるようになることで、以前は知り得なかった情報やデータの相関性を発見できることもあります。
2. 課題の早期発見や意思決定のスピードアップ
BIツール導入の最大のメリットは、「最新データを用いて、分析をしたい時にすぐに分析ができる」ことではないでしょうか。
月次の集計結果を待たずして、指標の変動や現時点までのレポートをリアルタイムで把握でき、異常があればその場で深堀分析や要因解析を実施することができます。
高度なデータ分析技術や専門的な知識がなくても、誰でも直感的に操作できる仕様となっているため、経営者自身が意思決定に必要なデータやレポートをいつでも出力・閲覧でき、会議中にリアルタイムのデータを参照にしながら即時に経営判断を下すことも可能です。
3. レポートや資料作成の負担が軽減される
BIツールが担う大きな役割は「データの集計と分析」ですが、単純にレポーティングや資料作成の負担軽減も見込めます。
企画書や報告書、クライアントへの営業資料など、日々の業務の中で何かとレポートが必要とされる場面は多々ありますが、その度に必要なデータを収集・整理・グラフ化していると、時間がいくらあってもレポート作成そのものから抜け出せません。
BIツールを活用すると、「何のデータを用いて、どのような分析を行い、どうアウトプットするのか」を簡単な操作で手早く行うことが可能です。資料作成の時間が大幅にカットされる分、本来のコア業務やデータ分析結果の考察といった、生産的な活動に時間を割くことができるようになります。
BIツールが解決できる企業課題
社内の業務システムやITツールの中には、企業活動の財産となるさまざまなデータが蓄積されています。しかし、それらの有益なデータを事業や業務に有効活用できている企業は少ないのではないでしょうか。
BIツールの導入は、組織内データの分析や活用における下記のような課題を解消することができます。
- 複数の業務システムから必要なデータのみを抽出し、統合するまでが大変。
- 集計期間を過ぎるまでは、現時点までの集積データやレポートを確認できない。
- 経営者が、現場に売上データの集計や分析を依頼してから、情報が上がってくるまでに時間がかかり、迅速な意思決定が行えない。
- データ集計や資料作成に時間を奪われ、コア業務にかけるリソースを圧迫している。
- 担当者によってレポート形式や使用するグラフに統一感がない。
- 集計漏れや入力ミスの可能性から、エクセルではデータの信頼性に欠ける。
情報管理のシステム化にともなって取得できる情報が増えていくほど、ウォッチすべきデータ指標やその組合せも多様化し、迅速なデータ処理や包括的な分析を行うことが難しくなります。
それらの情報をすばやく収集・整理・分析できるBIツールは、事業の成長とともに重要性を増していくでしょう。
BIツールの機能
BIツールの役割は、「データの収集・分析・レポート作成」を自動化・効率化し、企業のデータ分析活動や経営上の意思決定をサポートすることです。
この役割をBIツールの機能に落とし込むと、以下5つに分類されます。
- ダッシュボード機能
- 自動レポーティング機能
- 多次元分析(OLAP)機能
- データマイニング機能
- シミュレーション・プランニング機能
※製品によって、重点的にカバーしているプロセスや搭載機能は異なります。
1. ダッシュボード機能
ダッシュボード機能は、社内のさまざまなデータを一箇所にまとめて、グラフやチャートでわかりやすく可視化し、社内で閲覧共有できる機能です。指標の変化や割合、データ同士の相関関係などを直感的に把握することができます。
ユーザーの要求に応じて必要なデータを入れ替えて表示できますが、特に経営判断を行うために作られたダッシュボード(たとえば経営者向けに仕入情報や生産管理情報、売上金額の推移、顧客情報などを伝えるためのダッシュボード)は、「経営ダッシュボード」と呼ばれます。
あらゆるデータをひとまとめに表示できるため比較を行いやすく、また最新データが自動的に取得・更新されるため、あらかじめ必要なデータと表示形式を指定しておけば、経営目標を達成するためのKPIをリアルタイムに追跡可能です。
経営ダッシュボードの作成手順や効果的な活用方法、注意点などについては、以下の記事をご参照ください。
2. 自動レポーティング機能
自動レポーティング機能は、企業活動でのあらゆるデータを収集・分析し、日々のレポ―ティング作業を自動化する機能です。各種業務システムと連携することで、使用するデータは常に最新の状態に更新され、現時点までに集積・分析したリアルタイムのレポートをすぐに閲覧・出力することができます。
継続的にウォッチしたい指標のパフォーマンスを常時計測し、何らかの異常が認められた場合は即座に状況の評価や問題の要因検証を行うなど、小さな変化を見逃さず、手遅れになる前に対処を施すといったことが可能です。
また、報告資料や会議資料、意思決定のための資料、クライアントへの営業資料なども、時間や手間を要さずに作成でき、必要な時に最新の状況を共有することができます。
3. 多次元分析(OLAP)機能
複数の異なるデータの関係性を多角的に分析する機能です。問題の要因検証などに用いられるほか、これまでと異なる切り口でデータを分析することで、新しい経営拡大の糸口を発見できることもあります。
たとえば、自社の売れ筋商品に対して、「販売チャネル × 顧客属性 × 季節」といった複数の要素から売上分析を実施し、「何の商品を、いつ、どの顧客層に対してどのようなプロモーションするべきか」といったヒントを得ることが可能です。
営業部門であれば、担当者別・支店別・商品別の売上目標に対する進捗把握や、成績不振の原因究明、トップセールスのパフォーマンス分析などが行えます。
4. データマイニング機能
データマイニング機能は、膨大なデータにクロス分析、相関分析、回帰分析などの統計処理を行い、未知の相関関係や法則性を探し出してくれる機能です。
将来起こりうるイベントの発生確率を予測することもでき、どの変数がどのくらい増加または減少すれば経営数値が回復するのか、といったような課題解決やパフォーマンスの向上のためのヒントを得られます。
データマイニングの分析手法や具体的な活用事例については、以下の記事をご参照ください。統計的手法や機械学習などを駆使した分析技術の革新により、幅広い領域で活用されています。
5. シミュレーション・プランニング機能
集積したデータの分析から将来の数値を予測する機能です。シミュレーションを通して予算計画や経営計画の根拠・確実性を得ることができ、経営者の意思決定をサポートします。
BIツールの選び方・比較のポイント
企業の中でデータ分析の活用シーンは幅広く、実現したい目的や用途によって、取り扱うデータの種類や適切な分析手法が異なり、それによってBIツールの選定基準も変わってきます。
いくら専門知識なしに運用できるとは言っても、現場の担当者が「どのデータをどんな分析手法で何のために活用するのか」がわかっていなければ、最もシンプルなレポーティング機能ですら有効的に活用できません。
BIツールの導入目的や運用計画を明確にした上で、以下のポイントを押さえて自社環境に合ったBIツールを選定しましょう。
- 業務システム・ITツールとの連携
- 機能構成(業界・業種特化のパッケージタイプもあり)
- 操作性と分析レベルのバランス
- サポート体制
1. 業務システム・ITツールとの連携
BIツールで分析するデータの収集源は、主に社内の業務システムやITツールで管理・蓄積されたものです。BIツールの本領域は分析であるとはいえ、元となるデータの収集や統合がうまくできなければ、BIツールを有効活用することは難しいでしょう。
複数の業務システムから手動でデータ抽出を行うには、相当な作業工数を要します。また収集したデータの形式統合も必要です。同じ指標でも日付や金額の形式が少しでも違うだけで、それらを統合できなければ集計すらできません。
社内のデータを統合するには、BIツールと各種システムを連携させるか、BIツールと連携できるDWH(データウェアハウス)が必要になります。BIツール上に必要なデータを収集・統合できればどちらの方法でも問題ありませんが、最初に、対象となる業務システムとの連携性を確保することが必要であることを理解しておきましょう。
2. 機能構成(業界・業種特化のパッケージもあり)
データ収集の機能が確認出来たら、次に、自社のデータ分析活動に必要となる機能に着目してきましょう。ひと口に「データ分析」とは言っても、部門や業界特性によって、取り扱うデータや適切な分析手法は異なります。
重要なのは「データ分析活動の目的を明確にする」ことです。何のためにデータ分析を行うのか、どのデータを活用してどんなアウトプットが欲しいのか、BIツールの導入によって実現したことを軸に必要な機能構成を洗い出しましょう。
機能が多すぎて、どう絞り込めばいいのかわからないという場合は、「ダッシュボード機能」「分析処理機能」「レポーティング機能」に分類して、どこを重視して選ぶのか、それぞれの機能性に何を求めるのかを1つずつ確認してみるといいかもしれません。
そのほか、「製造業向け」「金融業向け」など業種・業界に特化したBIツールや、「予算管理」「販売管理」「生産管理」など特定業務に強い機能群をパッケージ化しているBIツールもあります。
3. 操作性と分析レベルのバランス
BIツールは、データ分析の高度な専門知識がない現場担当者でも、業種・分野別の分析テンプレートやサンプルレポートを活用することで、簡単な操作でデータ分析やレポート作成を行うことができます。
ただし、テンプレートのカスタマイズ性によっては、分析処理の範囲を狭めてしまうことになるので注意しましょう。いくら操作がシンプルでも、自社が求めるレベルの分析ができなければ本末転倒です。
自社でデータアナリストやデータ分析の知見のある人材を確保できる場合は、データ分析や管理をすばやく効果的に行えるように、カスタマイズ性の高いハイエンドツールも視野に入れておくといいでしょう。
チュートリアルやデモンストレーション、初心者トレーニングを準備しているサービスもあります。誰が分析処理を設定し、誰がレポート出力やダッシュボードの閲覧を行うのかを踏まえて、操作性と分析レベルのバランスの取れた製品を選定しましょう。
4. サポート体制
BIツールを導入すると、一時的ではありますが情報管理体制の面で企業に大きな変化が伴います。特に導入直後は、初期設定や連携設定、操作方法など、多くの場面でサポートを必要とするツールです。
トラブル発生時の対応や問合せ方法、サポートの適用範囲などは、事前にしっかりと確認しておきましょう。
BIツールを利用するユーザーのデータ分析知識やツール知識が乏しい場合は、初心者レクチャーや定期セミナー、コンサルティングサポートを行ってくれるサービスを選ぶことをお勧めします。
BIツールの導入・運用における注意点
BIツールは、一度運用しはじめるとレポートやダッシュボードのデータがどんどん蓄積していくため、ツールの乗り換えようとすると、想定外の工数やコストがかかることがあります。
また、選定したBIツールが自社環境と合っておらず、かえって生産性が下がったり、定着せずにそのまま使わなくなってしまったという失敗は避けたいものです。
以下の注意点も踏まえて、導入計画を進めていきましょう。
ITリテラシーとデータ分析のスキルは全くの別物
BIツールの中には、統計学やデータベースの専門的な知識を要するデータアナリスト向けのハイエンドモデルもあります。
ここで、自社のデータ分析のレベルを見誤って高度なBIツールを選んでしまうと、導入してから誰も使いこなすことができないという事態になります。
ITツールをサクサクと使いこなすITリテラシーと、データ分析に必要とされる知識は全くの別物であることを理解しておきましょう。
データの可視化・レポート作成を行うだけならBIツールは不要
データの可視化やレポート作成はBIツールの得意分野です。しかし、BIツールを活用する本来の目的は、データ分析活動を効率化し、データに基づく意思決定を加速させることにあります。
データの可視化やレポート作成は、その迅速な意思決定や次のアクションを起こすための準備であり、最終目的ではないことを理解しておきましょう。
BIツールを導入すると、確かにレポート作成の効率化や自動化は進みますが、そこからデータ活用に発展しなければ、ただの高額な資料作成ツールになってしまいます。
逆説的に言えば、データの可視化とレポート作成のみが目的であればBIツールは不要で、他の安価な資料作成ツールやエクセルで代替しても問題ないということです。
まとめ
社内システムや各部門に蓄積されている膨大な情報は、企業の財産であり、また企業競争に打ち勝つための武器となります。データ分析活動をサポートするBIツールの有効活用は、データに基づく意思決定サイクルを加速させ、さらに経営戦略の可能性を広げてくれることでしょう。
BIツールの導入を成功させるために重要なことは、自社のデータ分析活動の目的に応え、かつ現実的に運用可能なBIツールを選定することです。また、具体的に「誰が何のためにBIツールを使うのか」を明示し、あらかじめBIツールの導入意義を現場社員にしっかりと理解してもらうことも定着のポイントとなるでしょう。
本記事でご紹介した比較ポイントを参考にしながら、自社に最適なBIツールをご検討ください。


