最適な人員配置とは?実現のステップとおすすめツール

自社の人材を適切なポジションに配置できていますか?人員配置がうまくできないと、スキルや能力を十分に発揮できないとして従業員が離職してしまったり、業務効率が下がってしまったりといった問題が発生します。

「適材適所」という言葉が示すように、適切な「人員配置」をし人的リソースを最大限に活かすことが重要です。企業価値や業績にも影響するため、人員配置の目的や方法をきちんと理解しておくことが重要です。

本記事では人員配置の概要や目的、具体的な方法とそれぞれのメリット・デメリットを解説します。また、人員配置を適切に行うためのツールの紹介もするので、自社で配置状況を振り返りつつ、ツールの導入も検討してみましょう。

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人員配置とは

人員配置とは、「適切なポジションに適したスキルを持つ従業員を配置すること」です。人的リソースを最大限に活かすために適性やスキルに加え、従業員本人の意向も加味して再配置していく必要があります。これらを行うのは人材管理部門や経営者であり、人員配置されるのはアルバイトを含めさまざまな雇用形態で雇われているエンプロイー側です。

従来の日本においては年功序列の考え方が根強く残っていましたが、労働人口の減少や今後の人口減を鑑みて今いる人材・人員を最大限に活用し、かつコスト削減や企業のスリム化を目指す考え方にシフトする傾向にあります。

そのため経営計画の達成に加え、人材・人員不足を補う上でも人員配置は大きな意味を持ちます。人員配置を行うために、従業員のスキルや経験などのデータを一元化し、適切な配置に役立てる手法に「タレントマネジメント」があります。

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人員配置を行う目的

人員配置の目的は、「業務効率化」と「離職防止」に大別されます。

業務効率を上げるため

人員配置によって業務効率の向上が期待できます。なぜなら、従業員それぞれが最大限のパフォーマンスを発揮できる適切な職務・業務を割り当てることで円滑に業務を進められるからです。

例えば、営業のスキルが不十分にも関わらず営業部に配属された社員が、顧客とのやり取りを負担に感じコミュニケーションの機会を意図的に減らしていたら、それは機会損失・顧客満足度の低下に直結します。

営業に対する適性が十分でないことを把握せず、叱咤激励を続けていても業務改善にはつながらないと推測されます。このような場合を含めて、個々の従業員の能力やスキルを見極めて、人員配置をしていくことが業務効率の向上につながるのです。

離職率を抑えるため

適切な人員配置は、離職率を抑える働きもあります。これは、従業員が持つスキルや経験値を活用できる仕事ができることで、モチベーションややりがいをより感じられるようになるからです。

また適材適所で仕事することでパフォーマンス力や、企業への貢献度も上がり、自ずと人事評価にも好影響を与えます。自分自身が評価されていると感じられることが、働き続けたいと思える要素となるのです。これらの働きかけは、従業員満足度や従業員エンゲージメントのアップにもつながります。

終身雇用の考え方が変化している今、自分に合った職場や仕事を求めて転職することは珍しくありません。また育児や介護などにより職場を離れざるを得ない状況になることもあります。優秀な人材・人員が離職を検討する段階で、業務内容が合っていないと感じていれば、職場を離れることへの抵抗感も少なくなると考えられます。

人員配置の方法

人員配置には、具体的に5つの方法があります。

  • 人事異動
  • 役職変更
  • 新規人材雇用
  • リストラ
  • 雇用形態の変更

それぞれの目的やメリット・デメリットを挙げます。

人事異動

人事異動(部署異動)は、今いる部署や担当業務から別の部署や業務内容へと変更することです。場合によっては勤務場所・時間も変わります。従業員と職種・業務内容の間にミスマッチが生じているといった課題を解決します。

メリット

メリットは、従業員が適性やスキルに合わせた業務ができるようになること、またいくつかの部署を経験することで会社の全体像を掴めるようになることです。

戦略的な人員配置として「ジョブローテーション」がありますが、将来的に会社を担う人材を育成する意味でも役立ちます。さらに新しいメンバーがチームに加わることで、既存のプロセス・フローにおける課題発見、改善につなげやすくなることも期待できます。

デメリット

デメリットとして、異動後、一時的に従業員やチームの生産性が落ちる可能性があることが挙げられます。また異動により従業員の負担の増大や給与の低下、出張・残業が多くなってしまった時、大幅なモチベーションの低下を招く危険性もあるためフォロー体制も考慮しなければなりません。

実施するポイント

理想的な適材適所の人員配置に近づけることももちろんですが、経営・事業計画において将来どのような人材が必要になるかを見極め、人材育成の観点から人事異動させることです。長いスパン・広い視野を持って人員配置を進めていくことが重要です。

役職変更

役職変更は、主に昇進・昇格を意味します。従業員のこれまでの業績やスキル、資格の取得などどれだけ貢献したかに応じて責任や裁量権の幅を広げることが目的です。

メリット

メリットは昇進によって従業員のモチベーションと責任感の向上が期待できることです。成果を残している従業員に役職を与えることで、新たに現場をリードする人材・人員として活用できるようになります。

デメリット

デメリットとしては、一度役職を与えその後「降格」させると人事評価やモチベーション、給与などに影響を及ぼす可能性があることです。そのため役職変更は慎重に決める必要があります。

実施するポイント

昇進・昇格させる従業員に過度な負荷がかからないようにすることや、責任に見合った待遇を用意することです。名前だけ与えてしまっては、反対にやりがいを感じなくなりパフォーマンスが落ちることも考えられます。

また、昇進した社員に、企業として期待する役割を伝え、目標を決めることも大切です。チーム分断のリスクを避けるため、周囲にも昇進の理由、期待する役割を共有しておかなければなりません。

新規人材雇用

新規人材雇用は、必要なポジションにふさわしい人材が社内にいない時、各分野のプロフェッショナル人材が欲しい場合などに募集し、採用するものです。新たな雇用は人材不足といった企業が直面する課題解決に寄与します。

メリット

メリットは、求人広告や転職エージェント、人材マッチングサービスなどに特化した会社を通して、自社に適した人材を得られることです。

デメリット

デメリットとしては、求人活動においてコストが発生することです。求人広告にかける費用、転職エージェントなどに支払う手数料に加えて、自社のコーポレートサイトに載せる求人ページの運用費、説明会を実施するための費用なども発生します。

採用活動が急務である場合、人事担当者の負荷も大きくなります。加えて、採用に至らなかった場合、内定辞退や採用後すぐに離職した場合などは、それまでの採用活動にかけた費用・時間がムダになるリスクもあります。

実施するポイント

まずどのようなスキルや経験を持っている人員・人材が必要かを明確にすることです。その上で、どのようなアプローチをすれば効果的な新規人材雇用ができるかを計画立てて進めていく必要があります。また、新規人材雇用にかぎらず、採用コストを抑えられるリファラル採用など、他の採用方法も検討し、自社に合った方法を見極めることが大切です。

リストラ

リストラは英語の「Restructuring(再構築)」がもとになった造語で、日本では雇い止め・解雇による人員削減を指します。目的は、人件費の削減や不採算事業の廃止・事業縮小による余剰人員の整理などです。

メリット

企業の現状に合った必要な人員数に整理できることです。また、人的リソースにかかっていたコストを削減し、企業のスリム化が図れます。

デメリット

スキルや能力のある人材も流出する可能性があること、「リストラを実施した企業」としてマイナスイメージを持たれてしまうことが挙げられます。

実施ポイント

終身雇用が根強い日本においてはリストラに抵抗ある従業員がほとんどであることを認識した上で進めることです。人員削減の目的や必要性を周知徹底し、社員一人ひとりに対して丁寧なケアを行うことが大切です。

雇用形態の変更

雇用形態の変更は、アルバイト勤務の従業員を正社員に、またはその逆など正規雇用・非正規雇用を切り替えることです。目的は人件費の適正化や正規雇用を増やすことによる人材・人員の定着率向上を見込むことなどが挙げられます。

メリット

正社員からアルバイトへの変更は、主に社員のライフワークバランスに配慮でき、アルバイトから正社員への変更は、会社へのエンゲージメントを高めてもらうことが期待できます。企業にとっては、繁忙期・閑散期に合わせて従業員の業務時間を調整できたり、人件費を抑えたりすることができます。

デメリット

会社都合で正社員からアルバイト勤務へと変更した場合、従業員が納得できず離職してしまう可能性があります。また企業から見ると、正規雇用を増やせば簡単には解雇できなくなり、人件費負担も上がります。

実施ポイント

なぜ雇用形態の変更が必要かを精査することです。例えば、従業員が育児・介護などで柔軟な働き方を希望している場合は正社員からアルバイトへの変更は有効な手段です。個々の事情をきちんと理解した上で、双方が納得できるかたちで進めていかなければなりません。

最適な人員配置を行うためのステップ

最適な人員配置を実施するためのステップは下記のとおりです。

  1. 社員の情報を可視化する
  2. 従業員の希望を把握
  3. 配置した時の仮説立てる
  4. 効果測定

闇雲に人員配置を進めると一部の部署や従業員だけに効果が偏り、他の従業員から不満が出るなどバランスを崩す可能性があるため計画的に進めなければなりません。

ステップ1.社員の情報を可視化する

人員配置を可視化するために、従業員のデータベースを作成します。スキルや能力、これまでの成果、評価、勤務状況に加え、本人の意向を一元管理することが、適切な人員配置のための第一歩となります。

ステップ2.従業員の希望を把握

従業員一人ひとりと面談し、希望を聞き取ります。本人が希望していても適性がない場合もありますが、まずもって従業員がどのような考えを持っているのかを把握することが非常に重要です。

ステップ3.配置した時の仮説立てる

人員配置をした場合の効果、起こり得る問題などを予め仮説立てておきます。特に、リストラや雇用形態の変更などは周りの従業員のモチベーションなどにも影響を及ぼす可能性があるため、それらのケアについても考慮しておいた方がよいです。

ステップ4.効果測定

適切な人員配置を継続するためには、効果測定することが大切です。人員配置の成功は、業務効率化が実現できたか、離職率は抑えられたかの2点から判断できます。これらをデータで見える化し、失敗している場合はどのような軌道修正が必要かを検討します。

人員配置におすすめなツール

人員配置を成功させるためには、従業員の適性を正しく把握した上で、あらゆる角度からの分析、予測立てが必要です。ここでは人員配置を行う際に有用なツールを3種類紹介します。それぞれの特徴や強みを押さえておいてください。

タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントシステムとは、従業員の個人情報・スキル・経験などの人材データを一元管理し、戦略的な人材育成や人材配置に活かすためのツールです。

スキル・実績などの分析機能やコンピテンシー情報の管理機能を活用することで、その部署に必要とされる能力を有する人材を迅速に探し出せます。

異動先のメンバーとの相性や業務の適性、異動させる人材が移動先部署へ与える影響などは人事異動シミュレーション機能を使うとよいでしょう。戦略的な人員配置をするために必要不可欠なツールです。

カオナビ

タレントマネジメントシステム「カオナビ」は、あらゆる機能で人材管理が可能で、2,000社以上で使用されてきた実績があります。具体的な機能としては顔写真付きの人材データベースを作れるほか、組織図作成や社員へのアンケート調査なども行えます。また人員配置シミュレーションができるため、「ステップ1.社員の情報を可視化する」に加え、「ステップ3.配置した時の仮説立てる」でも活用できるツールです。

HR Ring

「HR Ring(旧名:カケハシboarding)」は、社員同士のコミュニケーション創出や健康状態をチェックできるマネジメントシステムです。「心理的安全性」に着目したパルス機能で従業員の心身状態が分かります。これは離職防止などの観点から心の動きを把握するのに役立ちます。人材コンサルティングの豊富な経験から作成されたアンケートを活用することで「ステップ2.従業員の希望を把握」を円滑に進められます。

HR Brain

マネジメントシステム「HRBrain」は、人材・人員のデータベース作成から、人事評価のサポート、テレワーク時の人員把握や活性化などが行えます。ツリー構造で各社員のスキルなどを把握し適正配置や分析ができる機能も備わっています。また、人事評価の自動集計機能もあるため、人事部門の業務効率化にもつながります。「ステップ1.社員の情報を可視化する」や、人員配置後の「ステップ4.効果測定」における人事評価の実施にも役立つツールです。

人事評価システム

人事評価システムとは、目標設定や自己評価、上長からのフィードバックなど、一連の人事評価プロセスで生じるデータを管理するツールです。

従業員のスキルや実績、目標達成度の推移など、人事評価システムに蓄積された人材データは、適材適所の人員配置だけではなく人員の育成といった人事戦略にも活用できます。

適切な人員配置に必要な評価データが可視化できるため、必要とする人材の早期育成に役立てることが可能です。

HRMOS評価

HRMOS評価は、株式会社ビズリーチが提供する人事評価システムです。従業員の過去から現在に至るまでのデータはもちろん、目標の変更履歴やメンバーとのコミュニケーション履歴といった情報も一元管理できるため、スムーズに評価業務を行えます。

また、カスタマイズの柔軟性にも長けており、役割や役職に応じて評価シートを細かく設計し、MBOやコンピテンシー評価などの様々な種類の評価に対応可能です。

導入後に何かわからないことがあれば、問い合わせ窓口から運営会社に直接相談できるため、初めて人事評価システムを導入する会社にもおすすめです。

MINAGINE 人事評価システム

MINAGINE 人事評価システムは、株式会社ミナジンが提供する人事評価システムです。社員数100名以下の中小企業に特化したシステムで、オンプレミスのように自社でサーバー運用する必要がありません。

システム導入のみであれば最短3日で完了する点も魅力です。また、評価結果においては人事担当者による評価調整を行った後にクラウドにボタンをクリックするだけでデータを蓄積できます。

また、CSV出力機能も搭載しておりExcelやGoogleスプレッドシートといった外部サービスにも対応可能です。さらにPDF化にも対応しているため、面接時にプリントアウトして持参することもできます。

WiMS/SaaS人事考課システム

WiMS/SaaS人事考課システムは、株式会社ソリューション・アンド・テクノロジーが提供する人事評価システムです。クラウド上で人事評価を完結させることができます。

評価シートはクラウド上で対象者に自動配布され、進捗に関してもリアルタイムで可視化が可能です。

また、評価を行った対象者の結果から評価傾向値を確認できることから、偏った評定を防止にもつながります。評価者が入力した評定値は、係数をもとに相対評価・絶対評価といったそれぞれの集計方法に基づき自動集計されます。より正当な評価結果を取得できることで、従業員のモチベーションアップが期待できるでしょう。

採用管理システム

採用管理システムは、求人サイトごとの応募状況や応募者の個人情報、選考の進捗、採用担当者の評価など、採用活動における情報管理全般をサポートするツールです。

採用管理システムには採用活動に関する全ての情報が集約されており、利用し続けることで情報が有益なデータとして蓄積されていきます。蓄積されたデータはこれからの採用活動はもちろん、新入社員の人員配置をするための情報として活用することも可能です。

Talentio

Talentioは、株式会社タレンティオが提供する採用管理システム(ATS)です。

Talentioは履歴書のデータ取得やオファーレターの作成といった手間のかかる作業を自動化することで作業コストの削減を図ることができます。

また、Talentioでは獲得した求職者のデータをMAツールである「Marketo Engage」と連携することで、応募者との最適なコミュニケーションを行い、良好な関係性を実現します。

中途採用の活発化や求職者の減少で採用が難しくなっている昨今でも、柔軟に対応できるツールです。

バイトルマスター

バイトルマスターは、ディップ株式会社が提供する採用管理システム(ATS)です。

バイトルマスター最大の特徴は、複数の求人媒体にまたがる応募者の情報を1つのデータベースに集約し一元管理できることです。バイトルマスターのIDとPWだけですべての応募情報を管理します。

面倒な面接の日程調整においては、面接自動予約機能でタイミングを選ばずスピーディーに面接予約が可能です。採用担当者の作業コストの大幅カットが実現します。

求人に対してもデータベースに集約された情報から効果分析を行い、各求人媒体の掲載効果の把握が容易いです。課題が数値化されることから費用対効果の低い求人媒体に対しても効果的に対策を練ることができます。

HRMOS採用

HRMOS採用は、株式会社ビズリーチが提供する採用管理システム(ATS)です。求人票の作成や面接の日程調整、人材紹介会社とのやり取り、候補者の選考ステータス管理など、採用に必要な業務をツール1つで一元管理できます。

導入後は対面でのサポートはもちろん、各企業にとって最適な運用方法の提案といった協力なサポート体制が魅力です。ベンチャー企業から上場企業まで様々な業種で導入されており、それぞれのノウハウを提供・共有することで、社内の採用を強化していきます。

まとめ

人員配置は、人材・人員の適性や希望を把握したうえで、人事異動や役職変更などを行います。業務効率の向上や離職率の低下が目的ですが、ひいては従業員エンゲージメントや企業の価値向上も期待できます。

人員配置は従業員の情報を把握し、人的資源を最大限に活かすことが重要ですが、従業員の意思や希望などをきちんと取り入れることも必要不可欠です。それらを反映させなければ、人員配置そのものが失敗に終わってしまうリスクもはらんでいます。自社の人員配置は果たして適正なのかを今一度振り返り、必要に応じて人材データベースを作成するなどして適正化を目指すことをおすすめします。